パソコンは何年で買い替えられているのだろうか
少しずつ延びていくパソコンの買い替え年数
様々な計算処理をこなしインターネットへの窓口としても大いに役立つパソコンだが、最近ではスマートフォンにそのお株を奪われつつある。現状ではパソコンは平均で何年ほどで買い替えがなされているのか。内閣府が2017年4月に発表した消費動向調査の2017年3月実施分の公開データをもとに確認する。
まずは長期時系列データが用意されている「二人以上世帯」におけるパソコンの買い替えについての推移をグラフ化し、その現状を確認する。なお今件におけるパソコンは、デスクトップパソコン・ノートパソコン双方合わせたものが対象となる。かつては同一視されることもあったタブレット型端末は対象外。
多少のぶれはあるものの、全般的には赤い破線による補助線の動向からも分かるように、パソコンの買い替え年数は伸びる傾向を示している。もっとも古いデータの2002年から始まる3年間では平均4.2年、最新の2017年に終わる3年間では平均6.2年。2年伸びた計算になる。パソコンそのものの高性能化で買い替えの必要性が薄れたこと、OSのサポート期間延長などで「OSの組み換えが面倒なので新機種へ買換え」といった買い替え動機が減退したようだ。
2014年に限ると、2014年4月からの消費税率改定に伴う駆け込み需要、さらにはWindows XPのサポート終了に伴うOS差し換えの必要性から生じるパソコンそのものの買い替えと、大きな買い替え要因が2つもほぼ同時に発生している。これらの要因で、従来ならもう数年維持できるパソコンを前倒しで買い替えてしまおうとする機運が生じ、買い替え年数が短くなることも予想された。しかし少なくとも年数の上ではそのような事態は生じていない。また2017年ではWindows Vistaのサポート終了が同年4月11日になされたが、それに合わせる形での前倒し買換えによる年数短縮も見受けられない。
これを「単身世帯」の動向と合わせて、世帯種類別の動向を比較しやすいようにしたのが次のグラフ。
全般的に「単身世帯」の方が買い替え期間が短い。1年前後の差が生じている。これは「単身世帯」の方が使用しているパソコンのライフサイクルが短い事実を表している。
他方2013年から2014年にかけて、両世帯間の差は確実に縮まる、厳密には「単身世帯」の買い替え年数が伸びている動きが見られ、2016年ではついに肩を並べるまでとなった。直近の2017年でも差異は0.2年に留まっていることから、両種類世帯間の差異は事実上なくなったと見てもよいのかもしれない。
駆け込み需要の実情を買い替え理由から
次に示すのは買い替え理由に関する結果。
両世帯種類とも年々「上位品目」が減り「故障」が増えている。これはパソコンが故障しやすくなったからでは無く、「上位品目」の回答数が減ったため、相対的に回答率が上がったのがその理由。パソコンの高性能化やOSのサポート期間延長などから、上位機種への買い替えの必要性が低下したことによるもの。Windows3.1から95にシフトした時のような、「パソコンそのものを買い替えて実装しないと時代に乗り遅れる」的な雰囲気は今や無い。
それでもなお「二人以上世帯」では減少がゆるやかで、かつ何度かリバウンドも見せているが、「単身世帯」では2010年以降ほぼ一貫して、「上位品目」の比率が落ちている。配偶者によるサポートの有る無しに関係なく、パソコンそのものの買い替え必要性が薄れている(と判断されている)可能性が高い。「新OSが出たので必要性が高いとは言い切れないが、良い機会だから新しいパソコンを買って環境を整備しよう」との事例が少なくなっているのだろう。
2014年に限れば消費税率改定と2014年4月9日付でサポートを終了したWindows XPに関する駆け込み需要的特需の影響が、「その他」の急増が生じている。これらはひとえに「消費税率引き上げ分を余計に払わされる前に、せっかくだから前倒しで買い替え」「XPがサポート切れになるし、OS入れ替えるのも面倒だし、古めのパソコンなので良い機会だから買い替え」的な回答と考えられる。
2015年も大よそ2014年の状況を継続しているが、再び「上位品目」の比率は低下。そして直近の2017年でも「その他」は減り、「故障」回答率は増えている。全世帯に対するパソコンの買い替え世帯比率そのものが減少しており(「単身世帯」はやや増えているが)、その減少の中で「故障」事由によるケースの減り方が他の項目よりも緩やかなため、結果として買い替え全体に占める比率が増加したまでの話。今後もこの傾向は継続することだろう。
最初のグラフで記されている通り、パソコン界隈では高性能化や買い替え必然性の高い新技術・OSが登場しなくなり、買い替えサイクルは少しずつ伸びる傾向にある。WindowsのOSにおいて新バージョンが登場するたびに、東京秋葉原などで大規模イベントが開かれ、テレビ各局が特集を組むような騒ぎが起きることは、今後は考えにくい。
2014年分はそのXPと消費税絡みで、一部値に特異な動きが確認できたが、今後しばらくは似たような変移をもたらしうる事象は無い。そしてスマートフォンやタブレット型端末のさらなる普及に伴い、パソコンのウェイトが下がり、ますます買い替え年数の伸びが加速化するかもしれない。少なくとも「上位品目が登場したので買い替える必要性を覚える」事例はさらに減るに違いない。
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