瀬戸際のGAFAデジタル課税
新聞報道によると、これまで日本国民を相手にビジネスをしながらほとんど納税をしてこなかったアマゾンやグーグルが、そのビジネスモデルを変えて、わが国で納税をし始めたという。
これまでGAFAに代表される米国IT企業(以下、便宜上GAFA)の租税回避について問題点を指摘してきた筆者としては、やっとここまで来たか、というのが正直な感想だ。背景として、欧州を中心とした個人情報保護、競争法(独占禁止法)、税制によるGAFA包囲網が功を奏しはじめたということが考えられる。
フェイスブックに端を発した個人情報の流出はEUの厳格な情報管理を求める一般データ保護規則(GDPR)につながった。ユーザーの情報を無料で入手し、広告やデータ売買により巨額の利益をあげるビジネスモデルは、EU競争法(独占禁止法)に触れるのではという疑念を振りまくこととなった。米国でも反トラスト法違反の疑いからの調査が進んでいるし、わが国でも、優越的地位を乱用した独占禁止法違反の行為が問題となっている。
税については、払うべき租税を低税率国に回避させ負担していないこと、その結果きちんと納税をしている企業との競争条件の問題や各国の税収不足を引き起こしていることがG20で問題視され、OECDで検討中の対応策が本年中にまとまる予定だ。
しかしここに来てトランプ政権が態度を豹変、OECDの議論に変化球が投げられた。OECDの合意するデジタル課税は、企業の選択制にすべきだという主張である。背景に、GAFAのロビー活動があるのではないかと疑われている。
一方欧州各国は、OECDの議論がまとまらなければ自国でデジタルサービス課税(デジタル広告やマーケットプレースの売り上げなどへの課税)を行う。これに対しトランプ政権は個別に制裁関税発動などのプレシャーをかけ、フランスはOECD議論がまとまるまでの凍結を余儀なくされた。
このようにトランプ政権の焦点の定まらない対応に翻弄され始めたデジタル課税の議論だが、OECDでまとまらなければ各国の独自課税の導入により、GAFAのビジネス、ひいてはデジタル経済を混乱に貶める可能性がある。米国はこのことを自覚する必要がある。
G20は6月にサウジアラビアで会合を開くが、そこまでにこの問題がどう収束していくのか、今後の注目点である。