アベノミクスのセンターは日本国債
AKB48の総選挙では1位に指原莉乃さんが選出され、最新シングル曲でセンターを務めるそうである。AKB48も総選挙もそれほど個人的に関心があったわけではないが、国民的アイドルだけに大きなニュースとなっていた。これだけ盛り上がっているのは、秋元康という敏腕プロデューサーに依るところが大きいと思われる。
それではアベノミクスでは誰がセンターなのか。それはもちろん総合プロデューサーの安倍晋三首相であり、麻生太郎大臣、甘利明大臣とともに、浜田宏一内閣官房参与、本田悦朗内閣官房参与、そして黒田東彦日銀総裁と最近、姿を見かけない岩田規久男日銀副総裁あたりが、いわゆる「神7」ということになるのであろうか。
それではアベノミクスで誰がというより、何がセンターにあるのかを考えて見たい。安倍総裁は金融政策、財政政策、成長戦略の三本の矢を挙げているが、昨年11月14日にスタートしたアベノミクスと呼ばれる現象は、大胆な金融政策がその支柱になっていた。それにより円安を加速させて、株価の上昇を計るという、今考えれば安倍晋三自民党総裁は、秋元康プロデューサーに負けないくらいのイベント・プロデューサーであったと思われる。
それではその大胆で異次元の金融緩和策の中心となったのは何であったのか。2%の物価目標というのは、あくまで目標に掲げたものであり、それを達成するために駆り出されたものが、日銀による大胆な国債購入であった。これは安倍プロデューサーが衆院解散が決まったあとの街頭演説等で、「建設国債をできれば日銀に全部買ってもらう」と発言したことからもあきらかである。実際には建設国債だけを日銀が購入するのは技術的に無理なので、新規に発行する国債の全部ではないが7割程度を購入することになった。
4月4日の異次元緩和と呼ばれる量的・質的金融緩和策は、コアCPIの2%という物価目標に対して、2年程度の期間を念頭に置いて早期に実現するため、マネタリーベースおよび長期国債・ETFの保有額を2年間で2倍程度とし、長期国債の平均残存年数を現行の2倍以上にするというものであった。
それではなぜ日本国債が異次元緩和の中心にあったのか。それは日銀がマネタリーベースを倍に増やすために買い入れるほどの金融資産が国債以外にはなかった事がある。さらに安倍総裁の輪転機発言もあったことで、財政ファイナンスに近いことをすればインフレ圧力が強まると考えた節もあったように思われる。
日銀が大胆に国債を買い入れることで、期待が広がりそれが急速な円安・株高を招くことになり、AKB48が社会現象化したように、アベノミクスも社会現象化した。ただし、そのセンターにいるのが日本国債であることはあまり知られてはいないようである。
とにかく人気が出て、期待が広がればそれで景気も良くなり、物価も上がるのかもしれない。ところがその実力のほどはいったいどうなのか。ここにきて少し長期金利がニュースなどでも取り上げられているが、それに対する関心は薄い。長期金利が10年物日本国債の利回りであることを、どれだけの人が知っているであろうか。まして長期金利が上がると国債の価格が下がることをどれだけの人が知っているであろうか。
異次元緩和で物価を上昇させるには、何故、国債を買わねばならないのか。そもそも国債を日銀が買えば物価は本当に上がるのか。その国債の利回りが異次元緩和直後から上昇していることは何を意味しているのか。そんなことはよく分からんという人も多いかもしれないが、ここには大きな矛盾も存在しているのである。この矛盾点がいずれアベノミクスのリスクをさらけ出すことも考えられる。アベノミクスの今後を占う意味においても、アベノミクスのセンターにあるのは日本国債であることをしっかりと認識しておく必要がある。