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嶋大輔、出馬騒動から4年…どん底から再起を!

中西正男芸能記者
再スタートを切った嶋大輔

 70万枚を売り上げた『男の勲章』で知られる歌手・俳優の嶋大輔さん(53)。2013年に政治家を目指すため芸能界引退会見を開くも、ほどなく出馬を断念し世間をにぎわせました。さらに、2015年に芸能界復帰し、ここ数年はまさに激動の年月となりましたが「人生で一番しんどい時間」と振り返ります。今年8月からは新しい事務所で再スタート。TBS系「名医のTHE太鼓判!」(10月9日スタート、後7時)の出演も決まり、新たな一歩を踏み出していますが「人生にムダなことはないと思って生きています」と言葉を噛みしめました。

すごく勇気づけられた

 春から準備をして8月に新しい事務所を立ち上げ、今に至ります。いいも悪いも、まだ、嶋大輔という名前が世にあるうちになんとかもう一回頑張りたい。そう思っての再スタートでした。

 そこでまた、すごく勇気づけられることがありまして。夏の甲子園でした。僕の知り合いが「大輔の曲、使ってたよ!広島の広陵が応援歌として」と連絡をくれたんです。35年くらい前の歌を、今の高校生たちが歌ってくれている。この曲のポテンシャルを痛感しました。もう一回、こういう作品に出合いたい。胸いっぱいになって、体が震えました。

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気持ちの持っていきようがなかった

 ただ、ここまでの道のりは決してすんなりしたものではありませんでした。やっぱり一つの大きな節目になったのは2013年の出馬騒動。

政治の世界に進むために芸能界引退会見をして、10日ほど経った頃、ある人から電話がありまして。待ち合わせ場所の議員会館に行ったら「今回はご縁がなかったということで」と。その前から、引退会見をやった後に「ちょっと雲行きがおかしい」という話は聞いていたんですけど、でも、引退しちゃってますし。まさかと思っていたら、本当に、そのまさかがやってきた。言われて、そこから家までどう帰ったか、本当に覚えてないんです。嫁にどう言おうか。子どもをどうやって育てていったらいいのか。そればっかり考えて。

 いろいろなご批判もいただきました。「公認をもらわなくても一人で出ればいいじゃないか」とか「なにが『男の勲章』だよ」とか言われましたけど、政治の実績のない僕が、なんの後ろ盾もないまま出馬することは考えられませんでした。志を持って「よし、やろう!」となったところからいきなりそうなっちゃったんで、気持ちの持っていきようがなかったというのが一番正しいかもしれません。

 嫁に伝えたのは、言われてから1週間後くらいだったと思います。毎日毎日、朝からいろいろな人に会いに行っていたのに、いきなり行かなくなった。取り繕うように家を出ることはあっても、心ここにあらずなので、カバンとかも全部置いて出ちゃったりもしていたみたいで。そうなると、嫁もおかしいと思って「どうしたの?」と。そこで話したんですけど、一切、こちらを責めるようなことは言わず「そうなっちゃったんだから、仕方ないじゃないの。ここから先のことはまた考えましょう」と。この言葉には感謝しかありませんでした。

本当にしんどい時期だった

 ただ、それで切り替えられるのかというと、そう簡単にはいかない。何から始めて、何をどうしたらいいのか、それも頭が回らない。そこから人間不信からの対人恐怖症みたいになってしまいまして。気づいたら、部屋のゴミ箱がマスクでいっぱいになってるんです。そんな意識もなかったんですけど、要は、どこに行くにもマスクをして出かけてるんです。それまではマスクなんてしてなかったのに、意識過剰なんでしょうけど、周りがこちらを見ている気がして…。とにかく人の目が気になる。気づいたら、円形脱毛症にもなってました。今でも、あの当時を思い出したら、鳥肌が立ちます。かつて、レコードが全然売れなくなって、ミカン箱に乗って歌うという時期もありましたけど、そんな時なんかと比べものにならないくらい、しんどい時期でした。あんまり、自分で大変だったっていうのもナニな話なんですけど、ただただ、本当にしんどかったです。

 3ヵ月くらい、何もしないで家にいたら、今度は嫁の目が痛く感じるんですね。何か仕事を探さなきゃと。子どももいるんだし。でも、何をしたらいいのか分からない。家の近くにコンビニがあるんで、そこでアルバイトをしようかとか、トラックのドライバーだったら、ほとんど人に会うことなくできるんじゃないかとか、いろんなことを考える。結果、太陽光の会社で営業マンをやることになりました。

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「拾ってくれ」と言った

 たまたまその時期、ゲームの「龍が如く」の最新作が出たんです。本当に、人生、何がどうなるか分かりませんけど、ここでもまさかの展開がありまして…。僕、ゲームは「龍が如く」しかやらなかったんですけど、この新しいソフトに、30年来の友人、中野英雄が出てたんです。そこで、ものすごくうらやましくなったんです。純粋に「いいなぁ…」と。そこで電話したんです。「お前、いいなぁ~」と。じゃ、中野が「お前、一回お茶飲もうよ」と。

 会って僕の顔を見て分かったんじゃないですかね、言ってくれました。「人が何を言おうといいんだよ。みんな、何かしらある。人を批判できる人間なんていないんだよ」と。やっぱり、自分の中で落ち着く世界はここしかないんだなと。そこで、僕も「拾ってくれ」と言ったんです。中野に背中を押してもらって芸能活動をもう一回始めて、さらに今回新しい事務所。なんとか、ここまでやってきました。

手の温もりが分かる…

 あらゆることを経験しましたけど、ムダなことなんてない。そう思って生きていきたいと思っています。こう見えても、30年ほど前、スーパー戦隊シリーズ「超獣戦隊ライブマン」(テレビ朝日系)でヒーローをやっておりまして…。しかも、レッドを(笑)。昨年、初めてヒーローの歌を歌うイベントにお仕事で参加させてもらいまして。すごく盛り上がるんです。僕がやっていた時に見てくれていた人がちょうどお父さん世代になって、子どもを連れてくる。みんな、大盛り上がり。「もともと不良だった嶋大輔がヒーローをやるなんて…」と当時は言われていたし、僕も思っていた部分もありましたけど、ヒーローやっててよかったなと(笑)。

 この4~5年は自分の人生の中でも激動の時間でした。自分でもついていけない。厳しい言葉もいただいた。ただ、それ以上に守ってくれる人がいた。そんな状態だからこそ、差し出された手の温かみが分かりましたしね…。あれ、急に、カッコつけた表現になっちゃいましたね。なんだか、スミマセン(笑)。

■嶋大輔(しま・だいすけ)

1964年5月22日生まれ。兵庫県生まれ、神奈川県横浜市育ち。本名・森島裕文。81年、TBS系ドラマ「茜さんのお弁当」で俳優デビュー。翌年『男の勲章』が70万枚のヒットを記録する。2013年、政治家転身のため芸能界引退会見を開くも、出馬を断念し話題となる。2015年、芸能界に復帰し、今年8月には新事務所「ギャッツビーエンターテインメント」で再スタートした。TBS系「名医のTHE太鼓判!」(10月9日スタート、月曜午後7時、初回は2時間スペシャル)にも出演する。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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