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NY金15日:ネガティブ材料目立つも、根強い利上げ先送り観測

小菅努マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト
(写真:アフロ)

COMEX金12月限 前日比7.70ドル高

始値 1,184.00ドル

高値 1,191.70ドル

安値 1,173.90ドル

終値 1,187.50ドル

引き続き米国の早期利上げ観測後退を受けての買い圧力が強く、続伸した。材料としてはネガティブ材料が目立ったが、ニューヨークタイムに一時売られるものの、押し目での物色意欲の強さが確認されている。

前日引け後に一段と上昇した流れを引き継ぎ、アジア・欧州タイムは1,185ドル水準を中心に底固く推移する展開になった。その後は米雇用とインフレ指標が必ずしも利上げ先送りを支持しなかったことで1,173.90ドルまで急落する場面もみられたが、引けにかけては押し目を買い拾われ、続伸して引けている。

米新規失業保険申請件数は前週比-7,000件の25万5,000件となり、市場予測27万件を大きく下回った。これは1973年11月以来の最低水準であり、少なくとも米国において雇用喪失の動きは広がっていないことが確認されている。雇用統計では雇用者数の伸び鈍化が8~9月にかけて確認されているが、必ずしも雇用環境は悪化していない可能性が高い。また、9月消費者物価指数ではコアが前年同月比+1.9%となり、エネルギー価格(特にガソリン価格)急落の影響を除くと、インフレ環境も安定していることが確認されている。これら二つの指標は必ずしも利上げを先送りする必要性が乏しいことを示しており、金価格に対してはネガティブ材料になる。実際に、この指標を受けての金相場は一時的ながらも急落している。

ニューヨーク連銀のダドリー総裁も、景気減速の可能性を示しながらも、引き続き年内利上げを見込んでいることを明らかにしている。10月9日にも同様の発言を行っているが、景気動向は十分に利上げ着手を容認できるとの見方を再確認した形になっている。引け後にはクリーブランド連銀のメスター総裁も、利上げ着手の先送りに懸念を表明している。米金融当局者の意見は割れているものの、なお地区連銀総裁を中心に利上げ支持の声が根強いことが再確認できる。ただ、こうした発言も利上げ着手に対する信認を高めるには至っていない。一時的に売られても、なお押し目買い優勢の展開が維持されている。

今週に入ってからは金上場投資信託(ETF)の投資残高も増加傾向に転じており、米金融政策環境の不確実性を受けて、金市場に資金退避を進める動きが活発化していることが確認できる。

ネガティブ材料に対する反応は依然として鈍く、米雇用統計ショックの余波が吸収し切れていないことが窺える。基調としては金価格が改めて本格的な上昇トレンドを形成する必要性は乏しい。金融当局者の大半はなお年内利上げを支持する発言を行うなど、あくまでも利上げ着手の方向に変化は生じていないためだ。ただ、金価格の戻り歩調がピークアウトするには当局者発言や経済統計などから利上げへの信認を高めていくことが要求されており、まだそうした信認は十分に得られない状況になっている。

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マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト

1976年千葉県生まれ。筑波大学社会学類卒。商品先物会社の営業本部、ニューヨーク事務所駐在、調査部門責任者を経て、2016年にマーケットエッジ株式会社を設立、代表に就任。金融機関、商社、事業法人、メディア向けのレポート配信、講演、執筆などを行う。商品アナリスト。コモディティレポートの配信、寄稿、講演等のお問合せは、下記Official Siteより。

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