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290人のシニアに聞いてみた、高齢者にとっての「生きがい」とは何か?

斉藤徹超高齢未来観測所 所長
高齢期になっても生きがいを感じていたい(写真:アフロ)

高齢者にとって「生きがい」とはいったい何でしょうか。

一般に「生きがい」とは、「生きることの喜び・張り合い」「生きる価値」のことを指し、「生きがい」を持つことで、「生活の質(QOL)」が向上し、認知機能や健康状態が改善するとも言われています。

若い頃であれば、仕事や趣味など、さまざまな事象に対して好奇心が生じ、積極的に「生きがい」を見出せる機会も生まれてくるでしょう。一方で仕事をリタイアし、社会的繋がりを次第に失っていく高齢者は、どのような時に「生きがい」を感じているのでしょうか?

そこで、「今、あなたの「生きがい」は何ですか?何をしている時、誰と会っている時、どのような時にあなたは、「生きがい」を感じているでしょうか?」という設問を投げかけてみたところ、290人の60歳以上の方々から回答をいただきました。以下、回答をランキング形式で順番に説明していきたいと思います。

第10位●食事のとき

第10位「食事の時」
第10位「食事の時」写真:アフロ

美味しいものを家族や孫と一緒に食べるときに、生きているという実感やありがたさを感じることはあるでしょう。こうした際の食事は、単なる食ではなく、生きるための恵みをともに分かち合うという気持ちなのではないでしょうか。

・「特別なことはなくとも、たまに美味しいお寿司やケーキを連れ合いと頂くだけで満足です」(64歳・女性・大分県)

・「妻とゆっくり食事をしているときです」(66歳・男性・神奈川県)

・「美味しい食事とお酒を飲んでいるとき」(71歳・男性・愛知県)

・「自然の恵みで食事した時」(74歳・男性・千葉県)

第9位●日々、穏やかな生活をおくること

第9位「日々、穏やかな生活を送ること」
第9位「日々、穏やかな生活を送ること」写真:アフロ

何か特別な生きがいを特に求めるのではなく、日々穏やかな生活が送れれば、それで良い、という意見も一定数ありました。

・「毎日が穏やかに生活できればそれでいい」(70歳・男性・福岡県)

・「「生きがい」「夢」「希望」などのたぐいはありません。でも毎日「楽しく」生きたいとは考えています」(70歳・女性・兵庫県)

・「昨日までできていたことを今日も続けられていること 趣味の類いです 後は断捨離」(71歳・女性・北海道)

・「毎日を淡々と送ること。緩やかだがまだ上り坂です。ゆっくり歩いて行きたい」(82歳・男性・愛知県)

第8位●旅行

第8位「旅行」
第8位「旅行」写真:アフロ

シニアにとって旅行の存在は、日々の生活に彩りを与えてくれるもの。それだけに、年に数回の旅行を楽しみにしている人も多いでしょう。コロナが収まりつつある現在、旅行にいけることを楽しみにしているシニアも多いことでしょう。

・「一人気ままに国内旅行が気軽に出来ること」(75歳・男性・福岡県)

・「夫婦で旅行に出かけてのんびり時間を過ごす事」(73歳・男性・神奈川県)

・「自分のやりたいことをやっているとき。自分で計画を立てて一人旅」(75歳・女性・東京都)

・「家族との旅行。孫との会話」(77歳・男性・神奈川県)

第7位●スポーツをしている時

第7位「スポーツをしているとき」
第7位「スポーツをしているとき」写真:イメージマート

近年、フットネスクラブなどへの高齢者の参加率は高まる傾向にありますが、運動習慣を持つことは健康にも良いですし、仲間とのコミュニケーションも高まり、「生きがい」を感じる人も多いでしょう。

・「毎日午前中に近くの公園で仲間と趣味のゲートボールを夢中になって楽しんでいる時」(76歳・男性・千葉県)

・「職場の同僚、定年まで勤めていた同僚とのゴルフプレーを楽しめている時」(73歳・男性・埼玉県)

・「生きがいとは言えませんが、今はコロナ禍で、健康維持と趣味を兼ねて、感染対策万全のカーブスに行くのが一番楽しいです。コロナ禍前より行く回数が増え、それに比例しお友達もたくさんでき、カーブス内で挨拶や筋トレの合間の簡単な会話も楽しいです。ランチは6月に3年3か月ぶり1回のみで、他には一切遊んでないため」(64歳・女性・神奈川県)

・「卓球しているときが、今一番の生きがいです」(81歳・男性・福岡県)

第6位●健康であること

第6位「健康であること」
第6位「健康であること」提供:イメージマート

「生きがい」を「健康であること」とお答えいただいた方もいらっしゃいました。

「日々健康であり続けることこそが、何かを行うことの起点になる」と考えている方も多いのではないでしょうか。

・「美しく健康でいろいろな人と交流できること。自分の仕事と趣味を楽しめること」(69歳・女性・東京都)

・「健康で自由に動けること」(67歳・男性・千葉県)

・「健康で周りに迷惑をかけないで過ごせることですかね」(64歳・男性・大阪府)

・「健康で、仕事が続けられていること」(62歳・女性・山梨県)

第5位●孫との時間

第5位:孫との時間
第5位:孫との時間写真:アフロ

やはり、というか、当然のことというか、「孫」はシニアにとって強力な「生きがい」のひとつです。

・「孫たちの成長。わたしの作る食事を家族がおいしいと言いながら食べてくれること。特に孫においしいからまた作って、と言われた時」(61歳・女性・愛知県)

・「孫達の幸せな様子に接する時です。自分の人生におけるこれまでの努力が報われた気がします。」(75歳・男性・栃木県)

・「孫とスキーをしているとき」(72歳・男性・新潟県)

・「孫が時々遊びに来てくれる時」(81歳・男性・京都府)

第4位●仕事をしている時

第4位「仕事をしているとき」
第4位「仕事をしているとき」写真:アフロ

高齢期になって仕事をリタイアせざるを得ない人も多いですが、自分で選んだ仕事を続けられていらっしゃる方もいます。仕事が生きがい、天職だと答えられる方はある意味で幸せな方と言えるでしょう。

・「仕事をしている時です。高齢者の介護の仕事してます。利用者さんのお世話をしている時に感謝の言葉をいただき、この仕事をしていて良かったと思います」(62歳・ 女性・大阪府)

・「自営業です。自分が選んだ物造りの仕事です。死ぬ一日前まで作り続ける事です」(67歳・男性・大阪府)

・「断然仕事です。本当にやりたい仕事につけているので、もっと仕事をやり遂げたい」(67歳・女性・神奈川県)

・「趣味が仕事になったので、仕事が生きがいです」(72歳・女性・徳島県)

第3位●とくになし

第3位「とくになし」
第3位「とくになし」提供:イメージマート

当然のことながら、すべてのシニアの人たちが、「生きがい」を感じて生活しているわけではありませんし、また「生きがい」を求めているわけでもありません。そもそも「生きがい」という言葉自体も、極めて抽象的でもあるので、答えづらく感じた方もいらっしゃったかもしれません。

・「特に考えたことがありません」(69歳・女性・北海道)

・「生きがいを求めない。なくなった時やできなくなった時の喪失が大きいので」(69歳・男性・岐阜県)

・「生き甲斐はありません。あれば生活ライフも変わるんだが。」(68歳・男性・新潟県)

・「特に生きがいは感じない もう最晩年に来ていると思うから」(85歳・女性・佐賀県)

第2位●夫婦や子供、家族との時間

第2位「夫婦や子供、家族との時間」
第2位「夫婦や子供、家族との時間」写真:アフロ

第5位の「孫との時間」同様に、夫婦や子供との時間を大切に感じている方も非常に多かったです。

・「夫と普通の日常生活をしている時です。大病をしてから「普通」という有り難さがよく分かったから、普通の毎日を続ける事が生きがいです」(63歳・女性・広島県)

・「奥さんと二人家庭菜園をしている時」(67歳・男性・福岡県)

・「家族たちが幸福に暮らせるよう裏表で面倒を見ること」(78歳・男性・神奈川県)

・「配偶者と仲良くしている時」(76歳・男性・大阪府)

第1位●趣味の時間

第1位「趣味の時間」
第1位「趣味の時間」写真:アフロ

「生きがい」を感じる時の第1位は、「趣味の時間」でした。一口に趣味と言っても、その内容は幅広く、中には「査読をしているとき」と答えられた方もおり、こうなると、何が趣味の範疇に入るのかということもありますが、ずっと続けられる、楽しく夢中になれるものがあることが、高齢期の「生きがい」と密接につながっていることがわかります。

・「レコードやCDを聴く。本を読む。文化遺産や自然景観を堪能する。数学や物理を勉強する」(65歳・男性・愛知県)

・「趣味の絵を描いている時。没頭できるので、若い頃からの生きがいだと思います」(75歳・女性・大阪府)

・「昆虫を卵や幼虫から飼育して無事に成虫になった時、生きがいとまでは行かないけれど嬉しい」(73歳・女性・兵庫県)

・「親しい近場の仲間とサークル活動を通して楽しく生活すること、退職した会社の現役社員やOBとたまに飲み会を開くこと、同じく学生時代の友人と定期的に会って食事をすること、そして時にはおいしい料理に舌鼓を打つこと等、楽しく、生きがいを持って日々生活していくこと」(72歳・男性・千葉県)

「陶芸の同好会を主催しており、会の仲間と作陶したり会食したりするのが生きがいの一つになっている」(77歳・男性・東京都)

生きがいの3つのタイプ

このようにランキングを見てくると、「生きがい」には、大きく3つのタイプがあることがわかります。

ひとつは、積極的に何かしら求めるのではなく、「日常の一日一日を穏やかに過ごせる事こそが生きがいだ」というもので、第10位:美味しい食事、第9位:日々、穏やかな生活をおくること、第6位:健康であることなどが、それにあたるでしょう。

そして2番目は、「家族とのやりとりや交流が生きがい」というもので、第5位:孫との時間、第2位:夫婦や子供、家族との時間、などがそれに該当します。

3番目は、「積極的に何かを行うことが生きがいにつながる」というもので、第8位:旅行、第7位:スポーツをしている時、第4位:仕事をしている時、第1位:趣味の時間などがそれにあたるでしょう。

こうした「生きがい」のタイプのどれが良い、悪いということは一概には言えませんが、回答いただいた文面から感じたのは、趣味やスポーツ、仕事など、積極的に何かに取り組んでいる人の方が、「生きがい」の感じ方、熱量が総じて高いということでした。将来、高齢期を迎える人にとって、いつまでも続けられる趣味やスポーツを持つことの大切さを感じさせてくれる結果となりました。

超高齢未来観測所 所長

超高齢社会と未来研究をテーマに執筆、講演、リサーチなどの活動を行なう。元電通シニアプロジェクト代表、電通未来予測支援ラボファウンダー。国際長寿センター客員研究員、早稲田Life Redesign College(LRC)講師、宣伝会議講師。社会福祉士。著書に『超高齢社会の「困った」を減らす課題解決ビジネスの作り方』(翔泳社)『ショッピングモールの社会史』(彩流社)『超高齢社会マーケティング』(ダイヤモンド社)『団塊マーケティング』(電通)など多数。

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