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話題の「劇場版 忍たま乱太郎」大人も惹きこまれる“底知れなさ”とは

小新井涼アニメウォッチャー
劇場内掲示(筆者撮影)

先週末に公開された「劇場版 忍たま乱太郎 ドクタケ忍者隊最強の軍師」が、早くも興収3億円に迫る好スタートを切り、注目を集めています。

「忍たま」と聞くと、キッズファミリー層向けという印象を持つ方も少なくないかもしれませんが、2.5次元ミュージカル等の展開からも窺える通り、実は子供達だけでなく大人世代からの人気も絶大です。

中でも本劇場版は、特に大人達にも刺さる内容となっているのもあり、連日SNSでも話題の絶えない盛り上がりをみせています。

次々と大人達をも夢中にさせる本劇場版の魅力とは、一体どこにあるのでしょうか。

  • ※核心的なネタバレはありませんが、以下本編の内容に触れています

■「劇場版 忍たま乱太郎 ドクタケ忍者隊最強の軍師」

「忍たま乱太郎」13年ぶりの劇場版である本作は、2013年に発売された小説作品「小説 落第忍者乱太郎 ドクタケ忍者隊 最強の軍師」を映像化した作品です。

それもあって、普段アニメや原作漫画ではみられないような小説原作ならではのシリアスさも含む本作。

物語は、忍術学園で学ぶ主人公達の教科担当である“教師の失踪”、そして突如現れた“失踪した教師と瓜二つの男”の存在を巡って展開されます。

劇中にも、本格的なアクションや戦を巡る描写、他の忍軍との時にシビアな利害関係といった大人も痺れる要素が盛り沢山と、往年のファンはもちろん、忍たまは子供の頃以来みていないという大人がふと鑑賞しても、思わず惹きこまれる映画となっているのです。

■単なる“大人向けのシリアス路線”ではなく…

かといって、大人向けになるあまりこれまでの「忍たま」のイメージが崩れたり、全くの別作品になってしまっているのかというと、決してそうではないのが本作のすごいところ。

小さい頃に何気なくみていると気づきにくいのですが、実は「忍たま」及び原作漫画の「落第忍者乱太郎」には、元々その設定や世界観に、舞台となる室町時代ならではのシビアさや、時代考証に基づいた本格的な戦や忍びの描写もちりばめられています。

例えばRPGゲームのようなパラメーターがあったとして、普段テレビアニメや原作漫画ではギャグ要素や元気さの数値が高い分、そうしたシリアス要素はあったとしてもあまり目立ちません。

本作では、“大人向けにするために全くそういう要素の無い作品に無理矢理シリアス描写を入れる”ではなく、そうした「忍たま」が元々もっていたシリアス面の数値を普段より大きくしているのだと思います。

そのため、ギャグや元気さといった「忍たま」らしさはそのままに、これまでみたことがない「忍たま」を見せてくれるという絶妙なバランスで、改めて「忍たま乱太郎」という作品の“底知れなさ”を、大人達にも味わわせてくれる作品となっているのです。

イメージ図(筆者作成)
イメージ図(筆者作成)

とはいえ子供の頃以来、本当に久々に「忍たま」に触れる人の中には、増えたキャラや知らない設定も多いのではと、鑑賞に二の足を踏んでいる人も少なくないかもしれません。

しかし本作はそんな人達もなんとなく覚えているであろう「戦災孤児であるきり丸は、長期の休みの際には土井先生の家で共に暮らしている。」※という二人の関係性を知っているだけでも、充分に刺さる作品だと思います。

むしろ“忍たまが大人達にも人気”ということは知っていたけどタイミングをずっと逃してきたという人には、今が本シリーズに改めて触れてみる絶好の機会かもしれません。

  • ※下記動画内表記より引用

冒頭で触れた通り、世間一般的にはキッズファミリー向けという印象も強いことからその反響をはかりかねている人も多いかもしれませんが、本作は子供達はもちろん、上記のような潜在的な大人のファン層も厚く、より一層大きな盛り上がりを生むポテンシャルも秘めています。

これから年末、年明けに向けての盛り上がりにも、まだまだ注目の作品です。

※2024年12月27日12:58 誤表記修正

アニメウォッチャー

北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院博士課程在籍。 KDエンタテインメント所属。 毎週約100本以上(再放送、配信含む)の全アニメを視聴し、全番組の感想をブログに掲載する活動を約5年前から継続しつつ、学術的な観点からアニメについて考察、研究している。 まんたんウェブやアニメ誌などでコラム連載や番組コメンテーターとして出演する傍ら、アニメ情報の監修で番組制作にも参加し、アニメビジネスのプランナーとしても活動中。

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