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広島・丸が巨人入り表明。2年連続MVP翌年のFA移籍、過去には……

菊田康彦フリーランスライター
丸には侍ジャパンの一員として国際試合出場経験もある。写真は2014年の日米野球(写真:アフロスポーツ)

 今季終了後にFA宣言をしていた広島東洋カープの丸佳浩(29歳)が、読売ジャイアンツへの移籍を表明した。丸は昨年、今年とセ・リーグのMVPに輝いているが、2年連続リーグMVPがその翌年にFA移籍した例は、過去にあるのだろうか。

FA制後、2年連続MVPは3人だけ。小笠原はチームまたぎの連続MVP

 まず、NPBにおいては1993年のFA制度発足後、同一チームで2年以上連続してMVPを獲得した選手は、丸を除くとイチロー(1994~1996年=オリックス、現MLBマリナーズ会長付特別補佐)とアレックス・ラミレス(2008~2009年=巨人、現横浜DeNA監督)のみ。2人とも連続MVPの翌年も、移籍はせずに変わらぬユニフォームでプレーしている。

 ちなみに、前記期間で2年連続MVPになった選手はもう1人いる。それが現中日ドラゴンズ二軍監督の小笠原道大である。小笠原は北海道日本ハムファイターズ時代の2006年に打率.313、32本塁打、100打点で本塁打と打点の二冠王となり、チームをパ・リーグ優勝にけん引してMVPを獲得。シーズン中に取得していたFA権を行使して、そのオフに巨人へ移籍した。

 翌2007年は打率.313、31本塁打、88打点で無冠ながら、主に三番・サードで巨人の5年ぶりセ・リーグ制覇に貢献。“優勝請負人”となり、抑えで32セーブをマークした上原浩治、主にトップバッターで35本塁打を放った高橋由伸らを抑えて、移籍1年目でリーグMVPに輝いた。チームをまたいでの2年連続MVPは、NPBではこの小笠原しかいない。

メジャーでも2年連続MVP翌年のFA移籍はなし

 それではメジャーリーグではどうか。1976年オフに正式にFA制度がスタートして以降、2年以上続けて同一チームでリーグMVPを獲得したのはマイク・シュミット(1980~1981年=フィリーズ)、デイル・マーフィー(1982~1983年=ブレーブス)、フランク・トーマス(1993~1994年=ホワイトソックス)、バリー・ボンズ(2001~2004年=ジャイアンツ)、アルバート・プーホールズ(2008~2009年=カージナルス、現エンゼルス)、ミゲル・カブレラ(2012~2013年=タイガース)と6人いるが、こちらもその翌年に移籍した選手はいない。

 なお、この中ではボンズも前出の小笠原と同様、チームをまたいで2年連続リーグMVPになったことがある。ピッツバーグ・パイレーツに在籍していた1992年、打率.311、34本塁打、103打点、39盗塁の成績でチームのナ・リーグ東地区3連覇に貢献し、2年ぶりのリーグMVPに輝くと、そのオフに28歳で初めてFA権を行使。6年契約で同じナ・リーグのサンフランシスコ・ジャイアンツに移籍し、翌1993年は打率.336、29盗塁に加え、46本塁打、123打点で初の二冠王となって、2年連続のリーグMVPに選ばれている。

 メジャーでMVPになった翌年の移籍には、最近ではジャンカルロ・スタントンがいる。昨年はマイアミ・マーリンズで59本塁打、132打点で二冠王、そしてナ・リーグMVPとなったスタントンは、今年はヤンキースでプレーしたが、これはFAではなくトレードによる移籍。スタントンはマーリンズ時代の2014年オフに13年の長期契約を結んでおり、オプションも含めれば契約はあと10年残っているものの、2020年オフには自ら残りの契約を破棄する権利を持っている。

フリーランスライター

静岡県出身。小学4年生の時にTVで観たヤクルト対巨人戦がきっかけで、ほとんど興味のなかった野球にハマり、翌年秋にワールドシリーズをTV観戦したのを機にメジャーリーグの虜に。大学卒業後、地方公務員、英会話講師などを経てフリーライターに転身した。07年からスポーツナビに不定期でMLBなどのコラムを寄稿。04~08年は『スカパーMLBライブ』、16~17年は『スポナビライブMLB』に出演した。著書に『燕軍戦記 スワローズ、14年ぶり優勝への軌跡』(カンゼン)。編集協力に『石川雅規のピッチングバイブル』(ベースボール・マガジン社)、『東京ヤクルトスワローズ語録集 燕之書』(セブン&アイ出版)。

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