イギリス議会の公式な報告書が「台湾は独立国家」と明記した。議会の報告書として初めてという。中国の反発は必至だが、台湾の外交部は感謝を表明し、イギリスとの関係強化に期待を高めている。イギリス政府は「中国は一つ」という中国の主張を尊重する立場だが、今回の表現は、台湾問題をはじめとする中国の覇権的な動きへの警戒感の表れと言えそうだ。

イギリスそして台湾は...

「台湾は、すでに中華民国という名の独立国家」

　アメリカの政治専門サイト「ポリティコ」によれば、イギリス下院の外交委員会が30日に出した報告書はこう表記したという。

「台湾は国家としての資格を全て備えている。それには恒久的な人口、規定された領土、政府、他国と関係を結ぶ能力を含む。欠いているのは広範な国際的な認識だけだ」

　委員会のカーンズ委員長によれば、イギリス議会の報告書として「台湾を独立国家」と断定するのは初めてという。同委員長はポリティコの取材に対し「中国の立場は知っているが、（外交委員会としては）受け入れられない」と答えた上、こう付け加えたという。

「イギリスの価値観に一致しているだけでなく、世界中の独裁政権に対し支配権は暴力や強制によって獲得できないという痛烈なメッセージになる」

　台湾の外交部はこれに感謝を表明、イギリス各界との交流と協力を一層進める立場を強調した。台湾の有力紙「自由時報」は31日付の紙面のトップで報じ、イギリスとの更なる関係強化へ期待を込めた。

中国は...

　中国は、「中国は一つであり台湾は中国の一部」という立場で、台湾や台湾政府を独立した国や政権とは認めていない。国際社会に対して中国の立場を尊重するよう求め、台湾を独立国家として扱うような他国の言動に対しては、猛烈な抗議と時には圧力を加える。近年では、中国は露骨に経済支援などをちらつかせながら、中国と台湾のどちらを選ぶか踏み絵を踏ませるような外交を展開し、台湾を国際社会から孤立させてきた。その結果、台湾との国交関係を保つ国をわずか13か国にまで減らすのに成功した。

　中国はイギリス議会の報告書に対しても当然、反発した。中国外務省の汪文斌報道官は、この件について尋ねられ「一つの中国の原則は公認された国際関係の準則であり、中英関係の政治的基礎である」とした上で、「台湾を独立国家と呼ぶのは是非を逆転させ、白黒を混同するもの」「台湾独立の分裂勢力に対し誤ったシグナルを送るのを止めるべき」などと怒りを示した。

　同日、北京では王毅外相や韓正国家副主席が、外相としては5年ぶりに訪中したイギリスのクレバリー外相と会談した。中国側の発表によれば、王毅外相は台湾問題での中国の立場を改めて表明するとともに、「台湾独立と台湾海峡の安定は水と火のように相容れない」などと述べ、イギリスの台湾問題への干渉を牽制したという。

　両国の要人同士が面と向かって関係を改善しようとしているその時に、政治的なタブーを破ってあえて「台湾を独立国家」と称する必要があるほど、イギリスの一部には中国への警戒感が高まっているとも言える。