田中の守備は菊池以上?広島鉄壁の二遊間の守備力はNPB史上最高
半世紀以上破られなかった記録を大幅に更新か
昨季、535補殺で二塁手の歴代最高記録を樹立した広島・菊池。その前の記録保持者も菊池だった。常識はずれの守備範囲は周知の通りで、広島の大きなアドバンテージとなっている。規格外、破天荒などと表現される菊池に比べてまだそれほど注目されていないが、実は遊撃手の田中も38試合で145補殺を記録しておりシーズン換算で545個ペース。遊撃手のシーズン補殺記録は1948年に杉浦清が記録した502個だから、半世紀以上破られなかった記録を大幅に更新する勢いだ。田中の守備で特筆すべきはスピード感。それは送球はもちろん、捕ってから投げるまでの速さなど全ての動作に共通する。投手の頭をワンバウンドで越えた打球に対するチャージなどその最たる例だ。(刺殺数+補殺数)÷試合数で計算され1試合当たりいくつのアウトに関与したかを示す簡易RFは5.05。リーグ2位の鳥谷で4.4、3位のエルナンデスで4.35だから1人だけ飛び抜けている。このまま行けば広島の二遊間はNPB史上最高のコンビが組むことになる。菊池も田中も”巧さ”よりも”強さと速さ”の印象が強い。二遊間の妙技と言えば、センター前に抜けそうな打球を好捕した二塁手が遊撃手にトスして送球を委ねるプレーがあるが、菊池なら普通は投げられない体勢からでも無理やりアウトにしてしまいそうだ。
打撃でも「巧さ」より「強さ」を
近年で二遊間の名コンビと言えば6年連続で揃ってゴールデングラブ賞を授賞した荒木、井端の名前が挙げられる。田中と菊池は守備での貢献は間違いなくNPB史上最高クラスの二遊間となるが、まだアライバコンビと比較されるような注目のされ方はしていない。その最大の理由は打撃だろう。荒木、井端は守備での活躍もさることながら1、2番コンビとしても文句なしの活躍を見せていた。共に三振は少なく盗塁が出来て、追い込まれてもしぶとい芸術的な流し打ちでつなぐ。また、荒木が出塁すればバントあり、エンドランあり、単独スチールありと小技は何でも出来き相手バッテリーの神経をすり減らした。田中と菊池も1、2番コンビを任され、俊足の持ち主という点は共通しているが無死1、3塁とチャンスメイクする場面はあまり多くない。また、田中は年間通してレギュラーを張った経験が無く、菊池はほとんど四球を選ばない超がつくほどの積極打法。そのため打率.256に対して出塁率は.293と高くない。ならば、守備で「巧さ」より「強さ」が目を引いたように、打撃でもそう出来たらどうだろう。荒木、井端のようないやらしさは無くとも例えば田中が二塁打を量産し菊池が15〜20本塁打。先週、田中が2試合連続先頭打者本塁打を放ったように投手にとって永遠の課題と言われる立ち上がりに強烈な先制攻撃をお見舞いする。チームは借金を抱えているが防御率2.35は12球団トップの数字。投手陣が安定しているだけに得点能力が高まれば一気に上位に躍り出ることも可能。鉄壁の二遊間がスタートダッシュに失敗したチームを上昇気流に乗せたい。