Yahoo!ニュース

韓国のメディアが「安倍元首相銃撃」を一斉に速報、トップで伝える!

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
安倍晋三元総理(写真:AFLO)

 「安倍晋三元首相が銃撃され、心肺停止状態にある」との衝撃的なニュースは韓国でも速報で伝えられ、韓国のポータルサイトの検索ランキングでは1位にランクされていた。

 韓国の各テレビは「安倍元総理遊説中に銃撃される…心肺停止状態 日本列島に大きな衝撃」(KBS),「安倍奇襲容疑者は41歳の元海上自衛隊隊員」(YTN),「安倍元総理、選挙遊説中襲撃され、心肺停止状態」(MBC)などほぼ同じ見出しを掲げ、特派員電をトップに扱っていた。中でも大手紙「朝鮮日報」系列の「テレビ朝鮮」が「安倍、奈良で遊説中に銃撃され、心配停止状態」の見出しで伝えたニュースは視聴者が最も多く観たニュースのトップにランクされていた。

 テレビ媒体はその後も続報を伝えているが、いずれもNHKなど提携関係にある日本の報道機関のニュース、情報をそのまま引用して伝えていた。

 一方、新聞媒体は「韓国日報」が「安倍元首相、遊説途中に被弾・・・緊迫した現場映像」、「中央日報」が「安倍銃撃犯は元海上自衛隊員」、「ソウル新聞」が「安倍心肺停止・・・襲撃犯は41歳の元自衛隊員」、「東亜日報」が「安倍銃撃犯は40代元自衛隊員・・・『不満があって殺そうと思った』などの見出しを掲げ、大きく扱っているが、どれもこれも内容は日本の報道に基づいていた。但し、安倍氏の人物紹介では各紙異なっていた。

 例えば、「靖国神社参拝など極右行歩の政治家門の皇太子」との見出しの「文化日報」の記事は安倍氏について「自民党の最大派閥のドンであり、岸田政権の政治方向を左右する影響力を行使できる大物である」と紹介しただけでなく、「銃撃されたこの日の奈良での講演では軍備増強など『右傾化政策』を推進する自民党を支持してもらいたいとの志願遊説のため訪れていた」と書いていた。また、有力政治家の家柄の出身であり、外祖父の岸信介元総理が「A級戦犯で投獄され、釈放された人物である」こと、また「総理在任中にA級戦犯が葬られている靖国神社を参拝するなど保守強硬派として知られている人物である」と記していた。

 同紙は最後に「安倍元首相は今回の参議院選挙期間中も『選挙の帝王』らしく自らのイメージに合わせ、全国を回り、政治的宿願である自衛隊明記のための憲法改正や敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有を強力に主張してきた。執権自民党の主要政策と方向性を主導してきた安倍元首相銃撃事件で日本の政界は相当の混乱に陥るものとみられる」と綴り、記事を締めくくっていた。

 「中立系」の「国民日報」も安倍元首相が「2006年9月から2007年9月までと2012年12月から2020年9月まで2度首相を務めた」としながらも「自民党の代表的な強硬派である」と付け加えていた。

 一方、親日的な保守系の「朝鮮日報」は安倍元首相のプロフィールについては「外祖父が岸信介元総理で、父親が外務大臣を歴任した名門政治の家柄の出身であり、2度の首相を務め、2012年12月から7年9カ月間長期執権し、日本の歴代首相で最長寿首相である」ことだけさらっと書き、韓国が反感を持っている政治活動についてはことさら触れていなかった。

 この他に変わったところでは、地方紙の「釜山日報」が「銃撃された日本最長寿総理安倍は誰?」との見出しの安倍元総理の経歴に関する記事で▲52歳で首相になったこと▲6回の衆議院選挙及び参議院選挙を勝利に導き、順風満帆だったこと▲2017年に森友学園国有地疑惑と2019年の「桜の会スキャンダル」に続く2020年の新型コロナウイルス対策に失敗し、支持率が20%まで急落していたことなどを書いていた。

 なお、「安倍元首相銃撃される」との衝撃ニュースについて韓国政界からの反応はなく、17時現在、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領からのコメントはない。ツイターもない。

 日本から一報が伝わった際、大統領室では「日本の公式報道があるまでコメントを控える」と慎重な反応を見せていたが、岸田文雄首相が午後2時半に会見していたことから韓国大統領室からそろそろ安倍元首相の回復を祈願するコメントが正式に発表されるのもとみられる。

 なお、インドネシアで開かれているG20外相会議に出席中の朴進(パク・チン)外相は林正芳外相に会い、「非常に衝撃的なニュースだ。安倍元首相の一日も早い回復を祈っている」との慰労の言葉を伝えていた。

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

「辺真一のマル秘レポート」

税込550円/月初月無料投稿頻度:月3回程度(不定期)

テレビ、ラジオ、新聞、雑誌ではなかなか語ることのできない日本を取り巻く国際情勢、特に日中、日露、日韓、日朝関係を軸とするアジア情勢、さらには朝鮮半島の動向に関する知られざる情報を提供し、かつ日本の安全、平和の観点から論じます。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

辺真一の最近の記事