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漸減続ける実日数…入院患者の在院日数をさぐる(2022年時点最新版)

不破雷蔵グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  
昔と比べると入院期間は短くなったとの話はよく見聞きするが(写真:アフロ)

一度の治療で済むような軽度の、あるいは通院による治療で済む程度の病症ならまだしも、手術などが必要な状態にまで悪化していたり、絶え間ない健康管理、投薬が必要な場合などには、入院を余儀なくされる。この入院日数も医療技術の進歩とともに、同じ病症でも昔と比べて今は随分と減っているとの話がある。今回は厚生労働省が定点観測的に実施している「患者調査」(※)の最新版公開資料を基に、入院していた人の平均入院(在院)日数の動向を確認する。

次に示すのは調査対象年の9月1日から30日の1か月の間に退院した人における、平均的な在院日数の推移。病症や対象となった退院患者の年齢などは一切区分せず、単純に退院した人全体の平均値。

↑ 退院患者の平均在院日数(該当年9月に退院した患者対象、施設種類別、日)
↑ 退院患者の平均在院日数(該当年9月に退院した患者対象、施設種類別、日)

一般診療所ではややぶれが生じているが、おおよそ在院日数は減少の動きを示している。この30年あまりの間で大体3割ほど減少した形となる。もっとも人口構成比やそれに連なる入院患者における人口構成比で、長期入院が必要となる高齢者の比率が増加していることから、(高齢者に限った平均在院日数が減少しても)今後は全体としての平均値の減り方は緩やかになると思われる。

また一般診療所よりも病院の方が、在院日数は長い。これは長期入院が必要となる重度の病症は、一般診療所では治療がしにくいのがおおよその理由となる。

なお2020年では病院も一般診療所も在院日数が大きく増加している(次以降のグラフも同様)。この現象について調査報告書では「調査票への入院年月日記載の際に、平成と令和を間違えて書いてしまった可能性がある回答が少なからず見受けられたため(在院日数が約30年になってしまう)、調整を施した」とある。この調整の影響の可能性がある。また、新型コロナウイルスの流行が影響している可能性は否定できない。

これを年齢階層別に見たのが次以降のグラフ。まずは病院。

↑ 退院患者の平均在院日数(病院、各年9月に退院した患者対象、年齢階層別・施設種類別、日)
↑ 退院患者の平均在院日数(病院、各年9月に退院した患者対象、年齢階層別・施設種類別、日)

34歳までの若年層は、その層で発症しうる病気やケガにおける治療に必要な日数の短縮がほぼ上限に達しているようで、今世紀に入ってからは日数は横ばい。一方、35歳以上は直近に至るまで短縮の一途をたどっている。1984年から30年で、ほぼ半分にまで期間は短縮されている。長期入院は患者の心身、そして経済面への負担となることから、同じ治療効果が期待できるのであれば、在院日数は短い方がよい。

なお2020年ですべての年齢階層において2017年と比べて日数が増加している理由は上記の通り、調査票の表記上の問題と、新型コロナウイルス流行の可能性によるもの。

続いて一般診療所。

↑ 退院患者の平均在院日数(一般診療所、各年9月に退院した患者対象、年齢階層別・施設種類別、日)
↑ 退院患者の平均在院日数(一般診療所、各年9月に退院した患者対象、年齢階層別・施設種類別、日)

一般診療所は病院と比べて重度の患者の長期治療体制を整えることが難しいため、病院よりも一般診療所の在院日数は短めとなっている。短縮化は病院同様。2020年のイレギュラー的な増加の理由は上記の通り。

なお2017年において前回調査比で14歳以下の値が増加しているが、詳細データの限りでは(グラフ化は略)、「精神および行動の障害」の病症分類での大幅な増加が確認できる。具体的には「統合失調症、統合失調症型障害および妄想性障害」「気分[感情]障害(躁うつ病を含む)」などが該当する。

もっとも精神科の医療施設が増加していることや、この方面での社会一般の理解が深まり通院・入院措置を必要とするものだとの認識が、対象者やその家族に増えてきた実情も併せ考えると、単純に14歳以下において「精神および行動の障害」の病症比率が増加していると判断するよりは、認識率が高まっていると解釈した方が妥当かもしれない。

長期入院の場合は短期の一時退院が許されることもあるが、原則は入院したら退院まで病院の外で長期間の行動をすることはかなわず、院内のみで行動を制限されることになる。昔と異なり現在ではインターネットの利用許可をする医療施設も増えているため、退屈しのぎの手段は随分と増えたが、それでも行動の束縛著しい在院そのものの長期化を望む人は多くない。

さらなる医療技術の進歩による、在院期間の一層の圧縮化を願いたいものだ。

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※患者調査

今調査の直近分は2020年10月20日から22日のうち、病院毎に指定した1日(診療所は10月20日・21日・23日のうち指定した1日)において、各状況を確認したもの。歯科診療所(いわゆる歯医者さん)は外来のみの調査となっている。患者数は調査日当日の該当人数(抽出調査のため統計値は推計)、退院患者(の在院日数)は同年9月に退院した患者の平均値となる。なお2011年分は震災の影響で宮城県の石巻医療圏、気仙沼医療圏および福島県が未調査のため、それらの地域の統計値は未反映となっている。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項の無い限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。

(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロではないプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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