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「日本の女子ゴルフに挑戦したい韓国選手は多いけど…」“来日最後の韓国選手”が語る日本ツアー行きの現状

金明昱スポーツライター
日本ツアー5年目のペ・ソンウ。1年目から2勝した(写真・KLPGA)

「日本ツアーに来たい韓国人選手は本当に多いんですよ」

 2019年から日本ツアーに初参戦し、今年で5年目を迎えるペ・ソンウはそう教えてくれた。

 彼女は韓国ツアー通算4勝(メジャー2勝)の実力者で、18年には賞金ランキング2位となり、満を持して日本ツアー参戦を決意した。同年の日本ツアーのファイナルQT(予選会)を14位で突破し、19年から日本ツアーに参戦。1年目から2勝(うち1勝はメジャーのLPGAツアーチャンピオンシップリコーカップ)して賞金ランキング4位となった。

 ここ数年、韓国ツアーを離れて日本ツアーに参戦した韓国選手は、1年目からコンスタントにシードを獲得するか、優勝しているケースがほとんどだったが、それもペ・ソンウが“最後の選手”となった。

 というのも日本ツアーに参戦する資格が得られるQTに出場できたのは2018年まで。翌2019年からはプロテストに合格するなどして“正会員”になることが必須となり、韓国女子プロゴルファーの日本ツアー参戦は難しくなった。

 2018年に日本のQTに参戦し、日本ツアー出場権を勝ち取った韓国選手にはペ・ソンウ、イ・ソルラ、ウム・ナヨンがいるが、現在もシード選手としてプレーしている最後の韓国人選手がペ・ソンウというわけだ。

 一方でプロゴルファーながらも日本のプロテストに挑戦し、合格を勝ち取ったアン・シネ(2019年)とジョン・ジユ(2022年)がいるが、韓国ツアーのシード選手がプロテストを受けて日本ツアーに挑戦したケースはいまだにない。そんな現状にかなり寂しい思いをしているのが、ペ・ソンウだった。

「プロテスト合格」条件が日本進出の足かせに

 今季国内メジャーの初戦「ワールドレディスチャンピオンシップサロンパスカップ」に世界ランキング上位の資格で3人の選手が出場した。2021、22年の2年連続賞金女王のパク・ミンジ、22年の年間女王のキム・スジ、ツアー通算5勝のイ・ソミらは20代の選手たち。吉田優利の優勝スコアが1オーバーという難しいセッティングながら、すべて予選を通過し上位フィニッシュを果たしていた。

 そんな3選手とペ・ソンウは韓国ツアーで共にプレーした仲。久しぶりに出会った彼女たちと日本ツアーがどのような場所で、どのような雰囲気なのかについて色々な話をしたという。

「私が日本に来る前に短い間ですが一緒にプレーしたので、当時は若手だった選手。まず試合のコースがとても難しいと話していましたが、これはメジャーなので仕方がないですよね。ただ、他の大会もコースの状態や環境がすごくいいと伝えました。実際、私も日本に来て感じたのは選手がゴルフに集中できるような施策や支援がしっかりしている部分です。コース内の練習場も完備されていますし、選手を中心とした大会が運営されていて、ギャラリーの文化もすごくいいですよね」

 ペ・ソンウは後輩たちに日本ツアーの魅力について、たくさん話したようだが、中でも韓国との一番の違いを感じるのは「息の長い選手が多い」ことだ。

「今では実力のある若手がたくさん出てきましたが、一方で30代を超えてもシード選手としてプレーしている先輩たちがたくさんいます。現役で長くプレーしたければ日本ツアーでやるのはいいと思うんです」

 上田桃子や金田久美子、藤田さいきなど30代の選手が今も活躍する日本ツアーだが、ペ・ソンウは韓国でこうした話を後輩たちにすると、「日本ツアーに行ってみたい」と口をそろえるという。

「今回、『ワールドレディスサロンパスカップ』に出場した選手たちもそろそろ海外ツアーに挑戦したい気持ちがあるようで、日本ツアーも選択肢に入っていると思います。ただ、今は正会員にならないとQTに出られない…。韓国でもランキング上位の選手たちが日本のプロテストを受けるとなると、ツアーを欠場しなければならず、そのあたりでものすごく迷っているようでした」

日本に来る韓国選手がいない寂しさ

 前述したように、韓国ツアー出場を蹴ってプロテストを受け20人という狭き門の合格を勝ち取って正会員となり、さらにQTを突破しなければ日本ツアー出場権を得られない。QTから日本ツアーに参戦を決めたペ・ソンウからすれば、タイミングが良かったのかもしれないが、「自分のあとに続いて日本に来る韓国選手がいないのはやっぱり寂しい」と話す。

「韓国ツアーの後輩たちがもう少し日本に来てくれれば、さらにツアーも盛り上がったり楽しくなると思います。それに私も刺激を受けることができるので、新鮮味もあるでしょう。私もこれから日本ツアーを主戦場にしてがんばっていくので、韓国の選手も少しでも日本に来るチャンスがあれば、挑戦してほしいと思っています」

 ちなみにペ・ソンウは日本初参戦から毎年シードを獲得しつづけており、今季はツアー3勝目に向けて「スイングやプレースタイルを試行錯誤している最中」と話す。

「パワフルなプレーではなくても、引き出しの多さや技術で勝負するプレースタイルに変えていこうとしています。スイングを変えたのですが、感覚がつかめてくれば成績も安定してくる自信はあります」

 コロナ禍も収束し、日韓も行き来しやすくなった今、日本ツアー進出が狭き門でもいずれ挑戦する韓国選手が出てくるのを期待したいところだ。

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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