ドジャース、アストロズとも100勝以上、今年のワールドシリーズは横綱対決
今年のワールドシリーズは、公式戦104勝のドジャース対101勝のアストロズのマッチアップとなった。ともに100勝以上というのは1970年(オリオールズ対レッズ)以来だそうだ。アストロズはリーグ最多勝利球団ではないが(インディアンスが102勝)、久しぶりの横綱同士の対決となったと言って良いだろう。個人的には、1981年以来のドジャース対ヤンキースというクラシックなカードを見てみたいとの気持ちもあったが、ヤンキースはワイルドカードだ。やはり、今季圧倒的な強さを発揮したアストロズがリーグチャンピオンシップシリーズを制して良かったと思っている。
そう、近年のMLBワールドシリーズは、両リーグの最強球団同士の対決が少なくなった。21世紀に入った2001年以降昨年までの16年で、合計19球団もワールドシリーズに出場している。また、ワールドシリーズ出場のべ32球団中10球団がワイルドカード球団だった。その結果、両リーグ最高勝率同士の対戦は2013年の一度きり(ともに97勝で.599のレッドソックスとカージナルス)だし、ワイルドカード同士の対戦すら2度(2002年のエンジェルス対ジャイアンツ、2014年のジャイアンツ対ロイヤルズ)ある。明らかに、1995年以降の3地区&ワイルドカード制(導入は1994年だが、その年は選手会ストライキでポストシーズンは開催されていない)がより多くの球団に機会を与えているのだ。
覇権が特定の球団に集中することは、全体の繁栄への阻害要因になる。ワールドシリーズが当時ニューヨークに本拠地を置いていたヤンキース、ドジャース、ジャイアンツの間でたらい回しとなった1950年代は、ビッグアップルのベースボールシーンは大いに盛り上がり野球の黄金時代のように語られることがあるが、全米規模では人気が低迷した時代であったことは野球史家の間ではよく語られることだ。これは、巨人のV9が巨人の黄金時代ではあっても、プロ野球全体では暗黒時代だったことと同様だ(オールド巨人ファンからは異論があるかもしれない)。
だから、ワイルドカードゲームを含めると4ラウンド制の現在のポストシーズンフォーマットは、それ自体がエキサイティングだしより多くの球団や都市に夢を与えることに成功したのだけれど、その一方でワールドシリーズは毎年意外な組み合わせの連続で、必ずしも実力ナンバーワン同士の対決ではなくなったことは否定できない。ある意味では、プレーオフ進出全10球団中どこがワールドシリーズに出るかは、どこが一番強いかではなく、どこが一番勢いがあるか、どこが一番運に恵まれているかでもあると言って良いだろう。ボクシングなどでよく使われるフレーズを用いるなら、「強いヤツが勝つのではない、勝ったヤツが強いんだ」ということだ。そのことは決して悪いことではないのだけれど、相対的にワールドシリーズの価値を低めてしまっていることも間違いない。
その意味では、各々のリーグで抜きん出た強さを発揮した両球団が雌雄を決する今回のワールドシリーズは大いに価値がある。願わくば、第7戦まで行って欲しいと思う。