Yahoo!ニュース

ウクライナ軍、穴に隠れているロシア兵に米国提供の神風ドローン「Switchblade300」で攻撃

佐藤仁学術研究員・著述家
米国が提供した「Switchblade300」(エアロバイロンメント社提供)

無防備な穴の中のロシア兵に神風ドローンで攻撃

2022年2月にロシア軍がウクライナに侵攻。ロシア軍によるウクライナへの攻撃やウクライナ軍によるロシア軍侵攻阻止のために、攻撃用の軍事ドローンが多く活用されている。また民生品ドローンも監視・偵察のために両軍によって多く使用されている。そして両軍でドローンの撃墜が繰り返されている。

ウクライナ軍ではここ数か月間くらい、小型の民生品ドローンやウクライナ軍が開発した攻撃ドローン「R18」などから爆弾を投下して地上のロシア軍の戦車などを攻撃して破壊している。ドローンで撮影した動画もよく公開している。

そんな中、ウクライナ軍が神風ドローンと呼ばれる標的にドローンごと突っ込んでいき爆発する軍事ドローンで、穴の中に隠れているロシア兵に攻撃を行った動画を公開していた。アゼルバイジャンのメディアKanal13が報じていた。

ウクライナ軍が使用していた神風ドローンは動画から、米国が提供した「Switchblade300」であろう。

▼【刺激的な映像のため閲覧注意】

米国提供の神風ドローン「Switchblade300」で穴の中に隠れているロシア兵を攻撃するウクライナ軍(アゼルバイジャンのメディアKanal13)【閲覧注意】

ロシア領攻撃にも使用されていた米国提供の「Switchblade300」

米国バイデン大統領はロシアに侵攻されているウクライナに対して2022年3月に、米国エアロバイロンメント社が開発している攻撃ドローン「Switchblade300」を提供していた。

米国政府が提供した「Switchblade300」はウクライナ東部での戦いで多く利用されていた。同機を使ってロシア領内にも攻撃を行っていた。「Switchblade300」を地面に設置した発射台を兵士が足で押さえて、兵士が手にしたスイッチを押すと発射台から簡単に攻撃ドローンが上空に向けて発射される動画も公開していた。発射台を上空に向ければ、どのような場所からでも発射できる。タブレットで標的の位置を確認しているシーンもあり、人間の軍人が目視で標的のロシア軍を探している。

▼「Switchblade300」発射シーンの動画

「Switchblade300」のような小型攻撃ドローンは上空から標的に向かって突っ込んでいき、爆撃することから「Kamikaze Drone(神風ドローン)」、「Suicide Drone(自爆型ドローン)」、「Kamikaze Strike(神風ストライク)」とも呼ばれている。標的を認識すると標的にドローンが突っ込んでいき、標的を爆破し殺傷力もある。日本人にとってはこのような攻撃型ドローンが「神風」を名乗るのに嫌悪感を覚える人もいるだろうが「神風ドローン」は欧米や中東では一般名詞としてメディアでも軍事企業でも一般的によく使われている。

ロシア軍が頻繁に使用しているイラン製の軍事ドローン「シャハド136」「シャハド131」も、標的に向かって突っ込んでいき爆発する、いわゆる神風ドローンだ。ロシア軍は神風ドローンを使用して首都キーウやオデーサ近郊の民間施設や電力施設を攻撃して市民生活にも大きな打撃を与えている。

「Switchblade300」や「シャハド136」はドローン自らが標的に向かって突っ込んでいき爆破する、いわゆる「神風ドローン」なので、「Switchblade300」や「シャハド136」が報じられるときはよく耳にする。今回のウクライナ紛争で「神風ドローン」はウクライナでも一般名詞となり定着した。ウクライナ語では「Дрони-камікадзе」(神風ドローン)と表記される。アゼルバイジャン語では「dron-kamikadze」だが、ウクライナ紛争を報じる地元のニュースで耳にしたり目にしたりしない日はない。

▼米国がウクライナ軍に提供している軍事ドローン「スイッチブレード」

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

佐藤仁の最近の記事