「持ち家無くてもかまわない」傾向、単身世帯で特に強まる(2014年)
夢のマイホーム、一国一城の主、多様な表現で持ち家への憧れが語られるように、住宅保有は夢の一つであり人生の目標ともされている。ところが最近では住宅保有を望まない人が増えているという。その実態を、金融広報中央委員会の「知るぽると」の公開データから探る。
世帯全体に占める持ち家率は増加する傾向にある。しかしこれは世帯主の平均年齢の上昇に伴うもので、特定世代(中堅層以下の若年層)における持ち家率はむしろ減少傾向にある。次のグラフは総務省統計局の住宅・土地統計調査を元に生成したものだが、中堅層までは持ち家率が減退しつつあるのが確認できる。
今件調査の直近値(2014年)では、単身世帯は26.1%、二人以上世帯では74.0%が持ち家に住んでいると回答している。単身世帯の方が圧倒的に持ち家率が低く、借家や居候の人が多い。それでは現在持ち家に住んでいない人は、将来自家を取得する予定はあるのだろうか。自前で購入する以外に、親などから相続を受ける可能性もあるため、それも含めた回答をしてもらったのが次のグラフ。
直近となる2014年分を見ていくと、二人以上世帯の方が(現在非持家世帯でも)持ち家取得意向が強い。また、単純計算で確率が2倍に増えることから、「持ち家は相続で譲り受ける予定」の意見も、二人以上世帯の方が多い。しかし3倍以上の値は単純な確率論を超えている。「単身で生活している子供では無く、夫婦で世帯を有している子供にこそ、住宅を相続させたい」との祖父母側の意図がすけて見えてくる。
単身・二人以上世帯間で「相続予定・時期不明」と「目下考えていない」を合わせた比率に大きな違いが見られない点にも注目したい。「取得予定なし」はノー、「何年以内」は明確なスケジュール付きのイエスのため、「取得できる・できない・しない」の差はあれど、「住宅取得を直近で深く考えたことはない、考えていない」との人は単身・二人以上世帯共に同程度の比率で存在するということになる。
「相続予定」「目下考えていない」は多少のばらつきがあるがそれぞれの世帯種類内ではあまり変わらず、具体的年数を決めて取得する意向の値が少しずつ減り、その分「取得予定無し」が増えているのが分かる。特に単身世帯の持ち家取得性向の減り方は著しく、2007年から2014年の間に「予定なし」の人が16.8%ポイントも増加している。
相続による取得以外では、自宅は自前で手に入れるしかない。相場は比較的安定しているとはいえ、可処分所得の減退や雇用の安定度を考え、取得をあきらめる人が増え、その実情・心境が反映されていると考えれば、今件動向も納得がいくというものだ。
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