新型国産ロケット「イプシロンS」の爆発事故と将来計画
宇宙をもっと身近に、スペースチャンネルです。
世間ではH3ロケットの打ち上げが話題ですが、実は2024年度にはもう一つの新型国産ロケット「イプシロンS」の打ち上げも控えています。本記事では、2023年7月に発生した爆発事故や、将来の打ち上げ計画についてご紹介していきます。
■イプシロンS爆発事故
イプシロンSは3段式の固体燃料を搭載した国産基幹ロケットで、初代であるイプシロンの進化系です。H3と固体ロケットを共通化するなど、様々なシナジー効果により国際競争力を強化することを目的としています。
2023年7月、秋田県の能代ロケット実験場にて、イプシロンSで使用される2段目モーターの燃焼試験が実施されました。
今回の試験ではロケットを実際に打ち上げる訳ではなく、固体モーターを横倒しで地上に固定した状態で、様々な性能評価を行います。
その目的は、モーターの燃焼特性の取得やノズルの構造特性の評価などです。燃焼時間は約120秒で、約170個のセンサーを貼り付け推力や温度などを測定します。
そして試験本番、燃焼開始から約1分後に爆発が発生してしまいます。爆発により試験建屋で火災が発生しましたが、約1時間半後には消し止められたとのことです。幸いにも今回けが人は発生しませんでした。
その後の調査により、先日JAXAから原因が発表されました。ロケットを点火するための装置が燃焼の熱で溶けてしまい、それが飛び散ったことでロケット内を破損させたためと考えられています。
今後は、溶けてしまった部品に断熱対策を施し、もう一度燃焼試験に臨むことです。
■打ち上げ計画
今回の爆発事故によりイプシロンSの開発に遅れが生じる結果となったことは否めないでしょう。
そして皆さんも良くご存知の通り、2022年はイプシロンロケット6号機の打ち上げが行われましたが、姿勢が目標からずれていたため、空中にて指令破壊されることとなりました。原因はロケット2段目に搭載している「ガスジェット装置」の配管のつまりと推定されています。
果たしてイプシロンSは予定どおり打ち上げることができるのでしょうか。一方で、イプシロンSの打ち上げ計画も後が詰まっている状態です。
まず、2024年度に最初に打ち上げるのは、ベトナムの地球観測衛星「LOTUSat-1(ロータスサット・ワン)」です。実はこのLOTUSat-1、日本企業のNECがベトナムから受注した衛星なのです。ミッションの目的はベトナムの自然災害への監視強化による、被害の抑制や災害予測に貢献することです。衛星に搭載したレーダーにより、昼夜を問わず観測データを取得します。日本の洗練された衛星技術が、このように海外へ今後も広がっていくと嬉しいですね。
そして、小惑星フェートンを探査する深宇宙探査技術実証機「Destiny+」、そして革新的衛星技術実証4号機「RAISE-4」については、当初2024年度の打ち上げではありましたが、イプシロンSの開発の遅れも影響し、2025年度へ延期となっています。
次のイプシロンSの燃焼試験が成功し、順調に打ち上げを重ねていってほしいですね。