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岩手の“暗闇ロープウェー!?”は本当に真っ暗だった

瀧澤信秋ホテル評論家
雫石銀河ロープウェー(筆者撮影)

南部片富士と呼ばれる秀峰・岩手山の雄大な姿を望む雫石。冬のスキーで知られる地であるが、周囲には小岩井農場や盛岡手づくり村といった観光スポットも点在する。冬のスキーと書いたがリゾートホテルとスキーでいえば、シーズンで賑わうのが「雫石プリンスホテル」だ。 岩手山の迫力ある眺望や北海道のような雄大な風景も魅力のホテルには、リモートワークに資するビジネスルームも設置されるなど、多様な利用ができる滞在型のリゾートホテルである。

雫石プリンスホテル(筆者撮影)
雫石プリンスホテル(筆者撮影)

そんなホテルに隣接するのが、スキーシーズンに大活躍するスキー場にロープウェー(本稿ではロープウェイではなくホテルの表現を用いることにする)。中腹に初心者用ゲレンデもあるスキー場であり、下山するコースは中上級者向けであるところ、初心者が下山する際にもロープウェーが利用される。リフトと異なりスキーなどの器具を装着していなくとも、観光的な乗車が可能なのはロープウェーの魅力だ。スキーをせずとも付き添いができるわけだ。

ナイトロープウェーへ向かう(筆者撮影)
ナイトロープウェーへ向かう(筆者撮影)

そんな雫石のロープウェーであるが、もちろん冬だけの稼働ではもったいないということで、ホテルでは様々な企画を出している。中でも夏の風物詩ともいえる期間限定の「雫石銀河ロープウェー」は大人気。標高730メートルの高倉山山頂から銀河の大パノラマを観察するためのナイトロープウェーというわけであるが、無論涼やかな場所(下よりも5度くらいは低いだろうか)での(天気が良ければ)感動的な星空体験へ行くためではあものの、往復のロープウェー内が異空間体験なのだ。

山頂ではガイドの案内と共に星空体験が(筆者撮影)
山頂ではガイドの案内と共に星空体験が(筆者撮影)

山頂へ向かうべく、少々年季を感じるレトロなロープウェーに乗り込むが、出発準備が整うといきなり電灯が全てOFFとなりそこはまさに暗闇となった。暗順応もままならない状態でロープウェーは山腹を上がるべくするすると動き出す。真っ暗な中の全行程は約7分間であるが、出発して2~3分、少し暗さに慣れてきた辺りで山腹や山頂への視線を外し振り返ると・・・そこには幻想的な下界の煌びやかな灯りが広がっていた。山頂からの星空と共に往復のロープウェー内も感動時間が待っていたのだ。

本当に真っ暗だ(筆者撮影)
本当に真っ暗だ(筆者撮影)

全国的に見ると、ナイトロープウェーは2017年頃から増えてきたというが、自然の中のナイトロープウェーの先駆け的存在が雫石銀河ロープウェーでもある。市街地近くの高台などへ向かうためのナイトロープウェーは散見するが、大自然の中の山の夜を体験できるとは興趣深い。もちろんスキーシーズン以外のロープウェー活用は夏期のナイトロープウェーだけではない。秋には定番ではあるが紅葉を愛でるなど、稼働もシーズナリティなリゾートホテルには様々なアイディアが溢れている。

本当に本当に真っ暗闇だ。ここは岩手。何だか銀河鉄道(乗ったことないけど)の夜を体験といった非日常時間だった。

ホテル評論家

1971年生まれ。一般社団法人日本旅行作家協会正会員、財団法人宿泊施設活性化機構理事、一般社団法人宿泊施設関連協会アドバイザリーボード。ホテル評論の第一人者としてゲスト目線やコストパフォーマンスを重視する取材を徹底。人気バラエティ番組から報道番組のコメンテーター、新聞、雑誌など利用者目線のわかりやすい解説とメディアからの信頼も厚い。評論対象はラグジュアリー、ビジネス、カプセル、レジャー等の各ホテルから旅館、民泊など宿泊施設全般、多業態に渡る。著書に「ホテルに騙されるな」(光文社新書)「最強のホテル100」(イーストプレス)「辛口評論家 星野リゾートに泊まってみた」(光文社新書)など。

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忌憚なきホテル批評で知られる筆者が、日々のホテル取材で出合ったリアルな現場から発信する辛口コラム。時にとっておきのホテル情報も織り交ぜながらホテルを斬っていく。

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