豪華布陣の「秋アニメ」展望 「スパイファミリー」「ガンダム」押しのけてプロ注目の一番人気は
「SPY×FAMILY(スパイファミリー)」や「機動戦士ガンダム 水星の魔女」「うる星やつら」など10月から放送される「秋アニメ」は、近年まれにみる超豪華ラインアップです。そこでアニメビジネスにかかわる関係者らに注目作を聞いてみました。
◇多すぎる注目作
今回の秋アニメのラインアップですが、先程挙げた3作だけでもかなり強力ですが、他にも有名な作品がズラリと並びます。
「ゴールデンカムイ」や「ベルセルク」「ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン」「ポプテピピック」「弱虫ペダル」などのタイトルも挙がりました。いずれも、ヤフートピックスに採用されたこともある有力作です。
さらに「PUI PUI モルカー」や、「名探偵コナン」のスピンオフ「犯人の犯沢さん」、「令和のデ・ジ・キャラット」なども挙がりました。
アニメやドラマの紹介記事を書くと「有力作が多い」というのは、ある意味“決まり文句”になっています。しかし、今回の「秋アニメ」は、例年以上に強力で、プロの目から見ても「今回は質と量の両方がそろっている」という評価で概ね一致しています。
◇一番人気は「チェンソーマン」
シリーズもの、定番、リメークものがそろう中、関係者が推す一番人気は「チェンソーマン」でした。質問した半数以上からの「推挙」で、圧倒的な支持です。競馬に例えたら、有馬記念などの大レースで、G1馬がズラリと出走する豪華メンバーの中、G1初出走の新鋭が一番人気に推された……という感じでしょうか。
「チェンソーマン」は、悪魔がいる世界を舞台に、裏切りで殺されてしまったデビルハンターの少年デンジが、チェンソーの悪魔と契約してよみがえり、圧倒的なパワーを手に入れて悪魔たちと戦う物語です。作者の藤本タツキさんは、「ファイアパンチ」や「ルックバック」などユニークな作品を生み出し、マンガ好きの間でもよく知られています。「チェンソーマン」も連載開始直後から注目されていました。
同作は、海外メディアのインタビューでも明かされ、クレジットにも表記されている通り、多数の会社から出資を募ることでリスクを回避するアニメ制作の基本ビジネスモデル「製作委員会」ではありません。自信の表れと言えるわけで、「こだわりの映像、スタジオ幹事で何をするか楽しみ」(大手アニメ会社)など、「呪術廻戦」や「進撃の巨人 The Final Season」を手掛けたアニメ制作会社「MAPPA」へ期待する声も聞かれました。
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◇人気シリーズ・ブランドへの依存度 より強く
今回の強力なラインアップから分かるのは、続編もの、人気シリーズへの傾斜が、これまで以上に強まっていることです。もう一つ、ブランド力のある「ジャンプ」作品に集中していることも明確です。放送中のアニメまで加えると、その流れはさらに強まります。
有力作が集中した背景について、ある関係者は「アニメのビジネスは、前ならパッケージ販売がメインだった。しかし今は配信プラットフォームに購入してもらうのがメインで、(アニメの放送時期の分散を)そこまで気にする必要がない。だからこそ起きた現象では」と指摘しています。
逆に言えば、配信のおかげで、ビジネスの自由度がアップしたとも言えます。しかし、これだけ実績のある人気作、期待作がそろうと、見てもらうだけでも一苦労でしょう。レッドオーシャンになった厳しい競争を勝ち抜くためにも、人気シリーズや人気ブランドへの依存度は、今後も強まりそうです。
ネットの特性として、話題になったごく一部の作品が脚光を浴びる一方で、残りの作品が目立たずに沈むという、「勝ち組」と「負け組」がハッキリする傾向にあります。アニメも同じで、一番人気の“覇権”アニメが、すべてを持っていくような流れにあり、大物とて安心できません。ましてや、原作のないオリジナルもの、知名度で譲る作品は、放送後にSNSなどで話題になる「口コミ」頼みになります。
それでも、コンテンツとは面白いもので、前評判の高い作品が案外だったり、放送前にノーマークだった無名の作品が話題をさらい、関係者を驚かせることも「あるある」です。当然ですが、物事に絶対はありません。ハイレベルな戦いに期待したいと思います。