後半激闘も、厚すぎる45分間の壁。2戦連続で苦杯/レノファ山口(J2第3節)
J2レノファ山口FCは3月13日、山口市の維新みらいふスタジアムで首位のアルビレックス新潟と対戦し、1-2で敗れた。終盤に浮田健誠が1点を返したものの、前半に喫した2失点が重くのしかかった。
明治安田生命J2リーグ第3節◇レノファ山口FC 1-2 アルビレックス新潟【得点者】山口=浮田健誠(後半48分)、新潟=星雄次(前半13分)、高木善朗(同38分)【入場者数】3045人【会場】維新みらいふスタジアム
対照的な前半のゲームメーク
レノファは前節のFC琉球戦でも前半に2失点を喫していた。渡邉晋監督は3月11日の練習後、メンタル面を含めた「単純な拙(つたな)さだった」と琉球戦を振り返り、選手により厳しいディフェンスを求めたほか、攻撃面では1週間のトレーニングを通して戦術のさらなる深化を図った。
ただ、今節はレノファの新戦力で横浜FCで活躍してきたボランチの佐藤謙介と右サイドハーフの島屋八徳が欠場。レノファは岸田和人を先発起用し、高井和馬を左サイドハーフ、高木大輔を右サイドハーフに配置。メンタル面でも積極性があるタフな選手を置いた。
これらの起用策でレノファはゲームの入りこそ前節とは異なり、ファーストプレーから攻守にわたって高い強度を披露する。最序盤に右からのコーナーキックのチャンスも獲得するなど、入り方そのものは前節とは異なった。だが、レノファがボールを持つ時間は一瞬で終わってしまう。
対する新潟もキーマンの一人と言える本間至恩が出場停止で、メンバー変更は避けられなかったが、本間がプレーしていた左サイドでレノファにも所属していた星雄次を先発させる。
開幕からの2試合で途中出場していた星は「自分のプレーをすることと、連勝を止めないようにという気持ち」を持ってゲームに入り、新潟のパスワークの中に収まっていく。チーム全体としてもパスの質が高く、本間がいないとはいえ新潟はレノファの陣内で安定してボールを動かした。
逆にレノファはボールを落ち着かせられずにイージーミスが散発。自陣からボールを出すことさえ苦労を強いられてしまう。サイドハーフ、サイドバックともに個の打開力がある顔ぶれを揃えていたものの、彼らの特徴が生かせなかっただけでなく、ビルドアップの負担がボランチに集中し、サッカーは小さくなってしまう。
前半13分には新潟のロメロ・フランクが前線からの強いプレスでボールを奪うと、ペナルティーエリアのすぐ外側で高木善朗、島田譲と細かくリレー。タイミング良くディフェンスラインの背後を突いた星がラストパスを受け、右足でゴールネットを揺らした。「前からうまく連動してプレスに行き、自分のところに転がってきた。周りの選手に感謝したい」と話す星の一撃で新潟が先制する。
さらに、同38分にも新潟が追加点。藤原奏哉から右サイドのロメロ・フランクへとパスを通し、グラウンダーのクロスを収めた高木善朗が追加点となるゴールを挙げた。
前半の45分間を渡邉監督は「一週間、新潟戦に向けて準備してきたものが、前半に関しては攻守においてマッチしなかった」と悔やみ、新潟のアルベルト監督は「素晴らしい前半だった。試合を明確に支配でき、チャンスも多く作れていて、決定力もあった」と自信を見せた。対照的な45分間だった。
ハーフタイムで修正。後半に主導権
後半は一転してレノファがボールを保持する。渡邉監督は「前半の最後に左サイドで石川啓人が前進し、右足のアウトサイドで出した」パスを例に挙げ、同様の場面を増やす必要があると判断。田中陸、橋本健人などを投入して、攻撃の修正を図った。後半はそれが奏功した形だ。
渡邉監督が指摘したのはおそらくは前半アディショナルタイムのパスシーンだろう。左サイドバックの石川が左サイドのタッチライン際でパスを受け、斜め前への鋭いパス(写真上)で相手の背後を突こうとした。高井が反応して相手サイドバックとセンターバックの間を抜けようとしたが、惜しくも通らなかった。しかし、チャンスになりかけていた場面だった。
前節・琉球戦では高木大輔と石川の連係で左のハーフスペース(左サイドと中央の間)を突いている。それをアレンジしたような巧みな崩し方だったが、前半はこの一本のパスが出るまでに時間を要した。
後半のスタートと同時に中盤でタクトを振る田中をピッチに送り出し、後半18分にはサイドバックの橋本を投入。ボールを外側でも内側でもさばける選手を入れて、流動性を高める。またFWの草野侑己と途中投入の梅木翼は運動量を落とすことなく前線からプレスを掛け、相手のビルドアップを抑制。サイドバックがハーフスペースを見てゲームを構築する時間を作った。
それでも最後のパスが合わなかったり、相手のブロックに跳ね返されたりして、決定的なチャンスを増やすことはできなかったが、後半のアディショナルタイムにようやく待望のゴールが生まれる。
橋本が自陣からボールを持ち出して中央突破すると、試合途中からゲームに入っていた浮田健誠が橋本からのスルーパスを回収。左足のミドルシュートをしずめて一矢を報いた。
「思い切りの良さやダイナミックさを出していこうと思って振り抜いた。相手に当たったが、シュートの感触は良く、うまくゴールに吸い込まれた」(浮田)
これで1点を返したものの、残る時間で次のチャンスは作れず、レノファは前節と同じスコアでの2連敗を喫した。
45分間を乗り越えるために
レノファは開幕戦からの3試合、いずれも前半の45分間を満足に戦えていない。魔の45分間とも言える分厚い壁、あるいは長いトンネルを取り払わなければ、勝利を手にするのは難しい。
前半に流れが引き寄せられない原因は一つではない。開幕戦の松本戦や第2節の琉球戦はメンタル面での入り方が悪かった。今節は渡邉監督が自ら指摘するように、準備してきた戦い方が「攻守においてマッチしなかった」ことが一因だ。もちろん戦力そのものの差もあったため、戦術の全てがはまったとしてもゲームを支配できたかどうかは分からない。いずれにせよ原因を整理し、次の試合ではどのような症状が出てしまうかを想像して、ネガティブな可能性をつぶしていくしかないだろう。
その一方で、流れを呼び込んでいた後半の45分間も、シュート数だけを見れば5本にとどまった。相手陣地でボールを持ち、いくつかの選択肢を持ってチャンスを広げていくという作業は及第点の出来だが、さらに質を高めていく必要がある。ただ、現状でもゴール自体は決まっており、1点は返せるという自信はある。時間とともに決定的な場面はもっと増えていくはずだ。
レノファは次戦もホーム戦で3月21日午後4時からファジアーノ岡山と対戦する。今度こそ少ない失点数で試合を進め、どこかで勝利を引き寄せる得点を手にしたい。維新劇場のフラッグが揺れるスタジアムは、オレンジをまとい、手を叩き、歓喜に沸くドラマの上演を待っている。