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【手帳関連書】稀代の業界たたき上げマーケターが語る手帳の効能とは?巻末の手帳作家との対談も必読の一冊

舘神龍彦デジアナリスト・手帳評論家・歌手
表紙。左端の6穴がシステム手帳のリフィル的。

 石津大といえば、今や飛ぶ鳥を落とす勢いの文房具ソムリエです。

 

 今年10月の「マツコの知らない世界」(TBSテレビ)出演も記憶に新しく、その世界では、まさに時の人のような存在感です。

 ですが実際は、実家が文具店で小学生の頃から能率手帳を売っていたという、いわばたたき上げのキャリアの人なのです。ともあれTV出演歴は数え切れないぐらいらしいので、時の人というのはあながち間違いではないでしょう。

 この石津氏の初の著書が本書です。

 こんにちは。デジアナリスト・手帳評論家・歌手の舘神龍彦(たてがみたつひこ)です。

 今回は、文房具ソムリエ石津氏のこの本を紹介します。

手書きの効能を知る

 本書が最初に強調しているのはこの部分です。

 そもそも、予定管理に紙の手帳を使うか、スマートフォンやパソコンを使うかでもっとも違うのはこの部分です。

 本書では手書きの効能が複数の研究機関の実験結果をあげてこれでもかと説明されます。

 たとえば、プリンストン大学のミューラー、UCLAのオッペンハイマーの研究。

 そして脳神経内科医の長谷川嘉哉氏の著書『ノートを書くだけで脳がみるみるよみがえる』では、手書きが脳の記憶定着を助けるとのことです。

 またテキサス大学教授ジェームス・ベネベイカーの報告によれば、個人的な感情や体験を手書きで書くことが、心理的、身体的な健康に良い影響を及ぼすとのこと。

 ノルウェー科学技術大学のオードリー・ファン・デル・メール教授のグループによれば、手書きはタイピングよりも脳の多くの領域を活性化し、記憶の形成と学習の強化に繋がることを実証したとのこと。

 

 デジタルではなく、紙の手帳を使うことにはこれだけのメリットの裏付けがあるのです。たんに手書きがデジタルのフォントに置き換わったのではない、手書きだけの理由があるわけです。複数のエビデンスをあげて、ここにきっちり言及している手帳関連の本は実は初めてかもしれません。

手帳時間とは

 この本の中でもっとも注目すべきキーワードがあります。

 それは「手帳時間」。

 タイトルの一部にもなっているこの手帳時間とはなんでしょうか?

 それは、手帳を記入する時間、見直す時間です。これをきっちり確保して場所も選んでやることで手帳が習慣になる。

 石津氏は、1日2回、手帳を見直す手帳時間を作ることを推奨しています。

 「書くだけではなく、振り返ってみることが大切」(P54)

 そのことで、予定や実際にやったことがわかるわけです。単なる予定管理ツールというより、振り返りもできる。それが手帳時間と手帳が実現するものなのです。

 また、見つけた名言やモチベーションを高める言葉をメモしておくことも推奨されています。

 こういうことは、日頃から手帳や文具を使っている人には普通のことにきこえると思います。

 そして、実はこれもデジタルツールにはむずかしいことです。手帳ならではのメリットなのです。

 つまり、前述の手書きならではのメリットがあり、そしてそれを受け止めるツールとしての手帳。さらにデジタルツールにはできない手帳の良さが解説されているわけです。

 手帳がデジタルツールには完全に置き換えられない理由がここにあるわけです。

手帳クリエイターとのインタビューページが第5章
手帳クリエイターとのインタビューページが第5章

手帳の新潮流を知る

 本書を他の手帳関連書から際立たせているのが、この第5章「手帳の使い方は作家が一番知っている!」です。

 この章には、この十数年で自ら手帳を作り販売している10人の例が掲載されています。記入ページの構成こそ違います。ですがここに登場する方はみな、既存の手帳に飽き足りず、自ら手帳を作ってしまった人たちなのです。

 つまり、誰よりも手帳に思い入れがあり、また、長い時間手帳を使ってきた人たちなのです。

 だから作家というのは、手帳を作っている人たちのことです。具体的には、Citta手帳の青木千草氏、ジブン手帳の佐久間英彰氏ら10名です。

 彼らが手帳をどう使っているのか、また手帳時間をどう作り、その時間に何をしているのかが、石津氏との対話の中で明らかになっていきます。

 手帳関連書としては、この章の存在が実は新しい。私はそう感じています。なぜならこの章に出てくる手帳やその作者は20年ぐらい前にはほとんど存在していなかった、いわば新潮流だからです。

 石津氏はさらっと「手帳作家」と書いていますが、こういう存在自体が実は新しい。だから本書はその点において歴史的な価値があるとも言えます。

 日本の手帳の歴史については、拙著『手帳と日本人』(NHK出版新書)にまとめました。そして、石津氏の書籍のこのパートは、それ以降の新しい流れの紹介なのです。

 今後日本の手帳がどうなっていくのか。

 2024年のバラエティやニュースなどの番組では、手帳は売り上げを回復していて、そのキーワードは「ライフログ」である旨の伝えられ方がなされていました。

 はたして今後の手帳はどうなるのか。それを知る上でも本書は重要な一冊だと思います。

関連リンク

文房具ソムリエが教える「自分に合った手帳」の選び方

https://shuchi.php.co.jp/article/11603?fbclid=IwZXh0bgNhZW0CMTAAAR2Vi9K3yiUsFUHWRd2C_zQhcmMFQ8LE48XE6csR2Fi__pvnV-1qhnQ71P4_aem_sBzY7UrYLIYULpzKQWSoPw

【超神回】文房具ソムリエ??石津ヒロシさん??本田健手帳??が未來を変える??手帳新時代到来?【朝から引き寄せ??循環で感謝開運】】

https://www.youtube.com/watch?v=DM54wl3_LeE

製品情報

書名:『文房具ソムリエの手帳時間』

出版社:秀和システム

価格:1760円(税込み)

デジアナリスト・手帳評論家・歌手

デジアナリスト・手帳評論家・歌手。著書『手帳と日本人』(NHK出版新書)は週刊誌の書評欄総ナメ。日経新聞「あとがきのあと」登場ほか大学受験の問題に2回出題。『凄いiPhone手帳術』(えい出版社)『システム手帳新入門!』(岩波書店)等著書多数。「マツコの知らない世界」(TBSテレビ)「HelloWorld」(J-WAVE)はじめテレビ・ラジオ出演多数。講演等も。手帳ユーザーを集めた「手帳オフ」を2007年から開催する等トレンドセッター的存在。手帳活用の基本をまとめた「手帳音頭」をYouTubeで公開中。認知症対策プロダクト「おぼえている手帳」は経産省オレンジイノベーションプロジェクト事業採択。

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