北朝鮮「車いす」の障がい者も問答無用の"見せしめショー"
終わりなき韓流との闘いを続ける北朝鮮は、見せしめ効果を狙い、逮捕した容疑者を次々に公開裁判にかけている。
市民を多数集めた上で、公開裁判を行い、ひどい場合にはその場で処刑してしまう。それで恐怖を煽り、韓流コンテンツの視聴や流通という「犯罪」を抑制しようとしているのだ。
(参考記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面)
平安北道(ピョンアンブクト)の亀城(クソン)市でも、韓流コンテンツの視聴・販売に関与した20人が、思想闘争会議(吊し上げ、人民裁判)にかけられた。
現地のデイリーNK内部情報筋が伝えた、事件の概要は次のようなものだ。
亀城工作機械工場に勤める労働者のCさんは、建国記念日だった今月9日の前夜、工場の夜間警備を行っていた。一人になったCさんは、宿直室のドアを固く閉め、窓を締め切った上で、テレビにUSBメモリを挿して、韓国映画を見ていた。だが、その様子をパトロール中だった巡察隊員に見られてしまったのだ。
取り調べから、徐々に事件の全容が明らかになった。まず、この工場に勤めるBさんが、同僚のAさんに「韓国の歌と映画をUSBメモリにコピーして欲しい」と頼んだことが事件の発端となった。
Bさんが受け取ったUSBメモリには、中国映画、韓国映画が保存されていたが、これを知人に自慢したところ、「自分にも分けて欲しい」との要求が相次いだ。そこでBさんは、Aさんにカネを渡してさらに多くのUSBメモリに韓国映画をコピーしてもらい、それを同僚や知人に販売した。その一人がCさんだったようだ。
Aさんも、別の知人からUSBメモリを受け取っていたことが判明し、15日までに芋づる式に20人が逮捕された。
その数日後、亀城工作機械工場の会館に多くの労働者が集められた中で、思想闘争会議が開かれた。彼らは「腐って病んだ資本主義の大敗文化を流布した者共」などと、厳しく批判された。
20人の中には栄誉軍人――日本で言うところの傷痍軍人の姿もあった。勤務中の事故で腰を負傷し、下半身不随となって歩けなくなった人で、かつてなら国の手厚いケアを受けて暮らしていたところだが、今では食糧支援も何も得られず、自分の力で生きていくことを余儀なくされる。それで韓流コンテンツの販売に手を染めたようなのだが、彼は電動三輪車に乗ったまま壇上に上げられ、厳しい批判を浴び続けたという。
会館の外には、20人の家族が集まり、思想闘争会議が終わるのを待っていた。安全部(警察署)に勾留され、数カ月に及ぶ予審(起訴前の証拠固めの過程)を受けることになれば、まともな食事は提供されず、厳しい取り調べと拷問に晒されることになる。もしかすると今生の別れになるかもしれないと、温かい弁当を持ち寄り最後に食べさせようとしていたのだった。
しかし、20人は壇上で手錠をかけられ、家族に会うこともないまま、車に乗せられ連れ去らされた。それを知った家族たちは、悲しみのあまり嗚咽したとのことだ。
20人が管理所(政治犯収容所)に行くのか、教化所(刑務所)に行くのかはわからない。かつてなら幾ばくかのワイロを渡せばもみ消してもらえたところだが、「韓流罪」の重罰化が進んだ今では、ワイロ相場も高騰し、1000ドル(約14万9000円)以上を渡しても、効果がない。
取り締まりがゆるくなれば、相場も「お手頃価格」に下がるだろうが、今では庶民が到底払えない金額となっている。結局、相当荒稼ぎして蓄財したであろう主犯格を除いては、家族のもとに帰ってくることはないだろう。