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内田日銀副総裁の今回こそはこれまでと違う、という意味

久保田博幸金融アナリスト
(写真:つのだよしお/アフロ)

日本銀行は、2013年以降、QQEやYCCなどの政策によって経済に高圧をかけ続け、政府の諸施策と相俟って、女性やシニア層を中心に数百万人の雇用を創出し、雇用環境を人手不足の方向へ徐々に変えていきました。そして、近年の世界的なインフレは、デフレ的なノルムに対する最後の一押しとして作用しました。

 上記は27日に開催された「日本銀行金融研究所主催2024年国際コンファランス」における日銀の内田副総裁の講演内容にあったものである。

 これについては個人的にはかなりの疑問が残る。QQEやYCCなどの政策によって経済に高圧をかけ続けることによってどのような経緯で雇用が創出されるのか。たしかにひとつの要因であった可能性は否定はしないが、果たして主要因であったのかは疑問が残る。

この10年間、QQEやYCCおよびマイナス金利政策のもとでの経験を経て、日本銀行は、今年3月に、これらの一連の非伝統的な政策手段がその役割を果たしたと判断して、短期政策金利の操作を通じて2%の物価安定の目標を目指す伝統的な金融政策の枠組みに戻りました。

 これらの一連の非伝統的な政策手段が、本当にその役割を果たしたのかどうかはさておき、伝統的な金融政策の枠組みに戻ったことは歓迎である。やっと普通の金融政策に修正してきた。

このことは、ゼロ金利制約を克服したことを意味します。引き続き、インフレ予想を2%にアンカーしていくという大きな課題は残っていますが、デフレとゼロ金利制約との闘いの終焉は視野に入りました。

 つまり今後はゼロ金利解除が視野に入っていることを示唆した格好か。金融政策でインフレ予想を2%にアンカーしていくことが本当に可能なのかと言う疑問は残る。しかし、いつまでもデフレとゼロ金利制約との闘いを続ける必要はない。

最後に、この言葉で締め括りたいと思います。今回こそはこれまでと違う(This time is different)。

 なかなか思い切った言葉を使っていた。何と、いつと比べて今回こそは違うのか。利上げは0.5%では済まないことを示唆しているのか。

 できればこの宣言は、物価が上がりだした2022年あたりに出してほしかったと思う。そうすれば2022年後半での債券市場との無益な戦いは回避出来たのではなかろうか。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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