箱根に新規開業【1泊2食/27万5300円~】はどんな宿のどんな部屋?
普段リーズナブルなホテルなどを取材することも多くある中で、ラグジュアリーな施設となればやはり独特のハードルを感じるものですが、そのような中でも今回は別格ともいえる箱根に新規開業した宿へ取材に出向きました。
スモールラグジュアリーシーンを牽引してきたブランド
その宿とは1月26日に開業した「ふふ 箱根」。“ふふ”は日本のスモールラグジュアリーシーンを牽引してきたブランドで、ラグジュアリーな宿を求めるゲストから支持されてきました。筆者も当初から注目してきたブランドで、これまで熱海や日光、関西にも進出していますが、意外にも箱根にはありませんでした。
スモールラグジュアリーがテーマというふふですが、小規模だからこそ徹底したサービスが提供できるというのはわかりやすいかもしれません。出店に際してはエリアの文化、地のもつポテンシャルを重視するといいますが、何より隠れ家、静寂というイメージを抱くブランドです。館内の動線も秀逸でゲスト同士が会わないような仕掛けすら感じるというのも共通しています。
ふふ 箱根のある強羅は全体として坂が多いイメージのあるエリアです。テーマは「山のリゾート」ですが、斜面を生かし箱根連山が広がる渓谷を正面にとらえようとしたのでしょうか、建物を見ると山の傾斜に沿って建築されているのがわかります。実際に館内にいると大浴場やロビーをはじめ様々な場所で眺望の広がりを感じます。徒歩でゆっくり坂を上がるアプローチもあれば、低層にして複数のエレベーターを設置してバリアフリーになっているのも高級感ある動線といえます。
客室は39室全てがスイートルームという構成です。最もリーズナブルな6室あるスタイリッシュスイートでも約50平方m有します(8万2800円~)。最も豪華なのが3室あるふふラグジュアリープレミアムスイートでそのお値段なんと27万5300円~。客室面積は約102~115平方mという贅沢空間です。
※いずれも1泊2食付/1室2名利用時1室料金(税サ入湯税込)
27万5300円~とはいったいどんな部屋!?
ラグジュアリー宿のゲストには“10万円だろうが20万円だろうが関係ない”というリピーター層も実際多いといいますが、それにしても果たしてどんな部屋なのか気になります。
まず入って驚くのがエントランス正面にお風呂が広がること。ゆったりとした洗面・脱衣スペースの奥に贅沢な浴室スペースが広がります。ふふ箱根には全室に温泉が備えられていますが、湯はやわらかいアルカリ性でしっとりとしています。お風呂からの景色はすぐ近くに自然を感じることができます。好きな時間に何度でもゆっくり堪能できるのは何よりの醍醐味でしょう。
リビングにはソファセットに加え、テーブルセット、さらにオリジナルの大振りなソファも備えられていて、上手く空間にアクセントを付けています。岩石や繊細な竹細工の花器などを飾りなども印象的。箱根大文字焼ビューのバルコニーは何とも贅沢なスペースですが、これまでのふふとは異なる点も多く新たなトライが見られす。リビングとベットスペースも完全に別れておらず繋がりを持たせていますが、ベッドも人気のふふシリーズにあって納得のクオリティーです。
アメニティー類や備品のセレクトは言わずもがな。スイッチ類のポジションやタッチの感触にはじまり、計算し尽くされた照明やテーブルの高さ、ソファの座面の硬度、椅子を引いた時の滑りまでも考慮されているふふのゲスト目線は箱根でも体現されています。そんなラグジュアリー感極まる一方で、客室ミニバーではウイスキーやワインのボトルが格安で提供されている“逆サプライズ”的なゲスト目線は興味深いところです。
プリフィクススタイルもラグジュアリー
1泊2食付きを基本とするふふですが、日本料理山の笑(やまのえ)で供されるふふ 箱根のディナーはふふシリーズ初となるプリフィクススタイル(鉄板焼きダイニングもあり)。プリフィクススタイルとは、数種あるメニューから好きな料理を組み合わせるスタイルで、ホテルでもよく見られるようになりました。
ふふ 箱根もプリフィクススタイルと言われれば確かにそうなのですが、過去のホテルプリフィクス体験からは常識外れの贅沢さでただただ驚きです。コースは前菜、お椀、お造りと続きメイン料理では20品以上の献立から3品選ぶことができますが(3品以上も注文可能)、山菜の天ぷらや和牛の焼き物、旬の魚の握り寿司、黒毛和牛のすき煮など厳選された食材であることがよくわかるメニューが並びます。
ダイニングスペースは個室だけではありませんが、プライバシーが保たれた空間作りになっています。ディナーでは気付きませんでしたが、晴れていれば朝食で朝陽に輝く箱根連山の美しい景色が望むことができます。
スモールラグジュアリーの強さ
コロナ禍で宿泊業界全体が苦境に喘ぐ中にあっての新規開業という見方もできますが、このような事態に陥っている業界全体にあって、コロナ禍の命題ともされ続けた密を避けるという点でもスモールラグジュアリーのニーズは堅調とされ、このカテゴリーの強さを改めて感じます。
コロナ禍のいま開業する宿泊施設の多くは、過去の激増した訪日外国人旅行者需要の経験から、(そこまでの活況ではないにしても)いずれはインバウンドが戻ってくることを見据えているといえそうですが、そもそもスモールラグジュアリーには多くの人々を一気に迎える発想がありません。
そうした点で、外的要因に左右される要素が少ないカテゴリーと分析できますが、最上を求めるゲストやマーケットはどんなご時世でも存在する中で、既存しないサービスやホスピタリティを究めることでさらに業態が進化、同時にマーケットも深化していくという循環は、スモールラグジュアリーの重要な要素といえるでしょう。