元売りに補助金? トリガー条項発動? ガソリン価格高騰抑制に、行うべきベストな政策とは何か?
ガソリンの全国平均小売価格が170円を突破したことを受け、石油元売り会社への補助金支給が1月27日から行われることになりました。根拠は昨年12月に成立した補正予算に800億円の対策費が計上されていることで、金額は最大で1リッターあたり5円(5円/L)。今回、支給されるのは、上昇額を考慮して、3.4円/Lとなります。
一見、良い政策のように思えますが、さまざまな問題も指摘されています。ひとつめは、補助金が支給されるのが元売り会社であること。しかし販売単価を決めるのはガソリンスタンドですから、補助金額がそのまま小売値に反映されるかどうかはわからないのです(ガソリンスタンドの経営は厳しい状況が続いているため、一部を利益としてしまうスタンドがあったとしても、そこは責めるべきではないでしょう)。
もうひとつの問題は、期限付きの措置であること。今回の措置も3月末までと決められていますし、補正予算によるものなので、原資がなくなれば中止せざるを得ません。それまでに原油価格が下がっていれば良いのですが、そうなるかどうかは不透明です。
現在の原油価格の高騰は、新型コロナ収束後の景気回復で石油需要が高まる期待感があることや、中東情勢の悪化などが理由として挙げられていますが、それに加えて、脱石油の流れを受けて産油国が石油採掘への投資を抑えているため、将来的にも供給量が減り、原油高は恒久化するのではないかとも予想されています。
すなわち、一時的な価格抑制のために税金を投入しても、いずれまた新たな対策が必要になる可能性が少なくないのです。
トリガー条項発動にも問題は多い
では、トリガー条項を発動させるのはどうでしょうか? トリガー条項がどういうもので、なぜ発動されないかについては過去にも書いておりますので、そちらを参照いただくとして、政府が主張している「買い控えや買い急ぎが起こる」という点について、解説しておきましょう。
トリガー条項の判断基準は月単位ですから、発動や解除がいつからになるかは、1週間程度、前になれば予想が付きます。翌月から単価が25円も安くなるなら、それまで給油を控える人が増えるはず、というのが「買い控え」の根拠です。逆に、翌月から単価が25円高くなるなら、その直前に入れようと考える人が増えるはず、というのが「買い急ぎ」の根拠です。
どちらも一時的に多くの人がガソリンスタンドに殺到するため、スタンド前の道路の渋滞や、ガソリンが売り切れてしまうなどの問題が予想されます。実際、暫定税率の期限が切れた2008年3月には買い控えが起こり、5月から復活することが決定すると、4月末には買い急ぎが起き、販売現場が混乱するということが発生しています。
また、トリガー条項は「暫定税率を継続するのが前提」なので、発動を認めてしまうと、暫定税率の恒久化を認めてしまうことにもなりますし、逆に、発動後に原油高が恒久化してガソリン価格が130円を下回る可能性がなくなると、暫定税率分は元に戻せなくなってしまいますから、暫定税率廃止派も容認派も、手を出しにくい条項であると言えるのではないかと思います。
税金への課税を廃止するのが、当面の最善策ではないか!?
では、もっと良い案はないのでしょうか? 僕はとりあえず「税金に課税をするTax on Taxを廃止すべきだ」と思います。
みなさんご存じのとおり、ガソリンには多額の税金が課せられています。内訳は、ガソリン税の本則税率が28.7円/L、暫定税率分が25.1円/L、石油税が2.54円/L。合計56.34円/Lが課税されています。
問題なのは、これらの税金にも消費税が10%上乗せされることです。一般に消費税は、商品そのものに課税されるものですが、ガソリンは税金にも消費税が課せられているのです。
これを廃止してしまえば、ガソリンの単価は約5.6円、下げることができます。税収は減りますが、補助金にしても原資は税金です。しかも金額も、補助金で想定している「最大5円/L」の1割り増しで済みますから、恒久的にも予算の調整で対応可能な範囲なのではないかと思います。
ただし、上にも書いたように、長期的な流れが脱石油になれば、エネルギーコストの上昇は避けられません。いずれ税金の調整だけではどうにもならなくなる日が来るかも知れませんから、僕たちもそれに備えて、エネルギー消費そのものを抑える方策を考えておく必要がありそうです。