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映像化もありうるウェブ漫画の公募展『WWCC2018』関係者に聞いた日韓コラボの可能性

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
イ・ソンウク代表(写真:著者撮影)

以前に紹介した『第1回 ワールドワイド ウェブトゥーン&コミック コンテスト』(Worldwide Webtoon & Comics Contest 2018)のことを覚えているだろうか。

アスミック・エース株式会社や韓国の大手映画配給会社SHOWBOX、韓国の電子コミックス製作会社のストーリーカンパニーなど日韓4社が共同主催したウェブ漫画の公募イベント『WWCC2018』のことだ。

韓国ではウェブ漫画のことを“ウェブトゥーン(Web+cartoon)”と呼び、その利用ユーザー数が約1000万人、市場規模は2020年で1兆ウォンに達すると予測されるなど、成長著しいコンテンツ・ビジネスとして注目されているが、そのウェブトゥーンの公募が日韓両国で行われると聞いてからというもの、その応募状況が気になって仕方なかった。

というのも、日本ではまだまだ定着していないが、ウェブトゥーン市場はまだまだ潜在力のあるコンテンツなのだ。その新規コンテンツの公募が、日韓で同時に行われているというだけに興味があった。

(参考記事:日本の漫画とは違う…!? ここ数年で急成長した韓国ウェブトゥーン業界の事情)

「私たちも韓国と日本からどんな作家たちが応募してくれるか、興味津々でした」

そう語ったのは、公募展主催者のひとつであるストーリーカンパニー社のイ・ソンウク代表だ。

韓国の有名映画メディア『CINE21』ブックス編集長、『ハフィントンポスト・コリア』のコンテンツ企画チーム長などを歴任し、自身もウェブトゥーンの企画・製作者として活躍するイ・ソンウク代表は語る。

「日本ではウェブトゥーンに興味がある新人作家たちの登竜門的な位置づけもありますが、特に韓国からは既存のウェブトゥーン作家たちからの応募も多数あって、関心の大きさに非常に驚きました。応募者層も10〜40代までと幅広い。

昨年に韓国で行われた別の公募展と比べても、応募者が約40%ほど増えている印象です。もちろん、応募作品のクオリティーも申し分なく高いです」

韓国でウェブトゥーン作家は人気職業になっている。何しろ韓国紙『少年韓国日報』が2017年に調査したところによると、小学生の「将来なりたい職業」1位がウェブトゥーン作家というくらいだというのだから、一攫千金を夢見て応募する作家たちも多いのだろう。

(参考記事:売れれば印税長者になれるが…。韓国のウェブトゥーン作家たちのお金事情)

「ただ、今回の公募展で作家たちの大きなモチベーションになっているのは最大で700万円の稿料が支給されることではないと思います。全世界80ヵ国で配信連載されることや、脚本は韓国、作画は日本というコラボレーションが実現できることも、大きな魅力でしょう」

こう語るイ・ソンウク代表によると、今回の公募展は将来的に“国籍を超えた作品の制作”を目指している。例えば脚本は韓国人、作画は日本人といった日韓コラボレーションが理想の形だという。

例えば日本の漫画雑誌『ヤングガンガン』で連載され、今年初めに韓国で実写映画化され、1440万人を動員するメガヒットを記録中の『神と一緒に』という作品がひとつのモデルケースだという。

同作の作家ジュ・ホミン氏は「絵が下手」なことで有名だが、優れたストーリーテーリングに定評があり、韓国では売れっ子作家になっている。日本では原作のストーリーラインはそのままに、作画は日本オリジナルに変えたリメイク作品だった。

こうした日韓コラボレーションの可能性が、今回の公募展にはあるというわけだ。イ・ソンウク代表も言っていた。

「ジャンル的にはSFからホラー、ラブコメまで、多様な作品が集まった感じです。やはり日本人作家とのコラボという海外進出への可能性が、積極的な参加につながったのではないでしょうか。日本側では優秀な作画の応募が多く集まることを期待しています」

韓国の面白いストーリーと、日本の繊細な作画で作り上げる日韓共同ウェブトゥーン。韓国にとってはウェブトゥーンの多様化につながり、日本にとっては漫画家の世界進出を可能とするいい機会ではないだろうか。

日韓共同制作といえば先日、吉本ばななの小説『デッドエンドの思い出』が、少女時代のスヨン主演で日韓共同制作されるというニュースがあった。

これまで映画やドラマでは何度か日韓共同制作が行われているが、漫画でもそれが実現すれば日韓コンテンツ交流の新たな可能性も広がるだろう。

(参考記事:韓国でリメイクされた日本のドラマを一挙紹介。最近はあのドラマまで!?)

そしてその可能性は、日本と韓国だけにとどまらない。イ・ソンウク代表によると、日韓共同制作ウェブトゥーンに対して、すでに中国やアメリカの映画会社たちも大きな期待を寄せているという。将来的な映像化を念頭に置いてのことなのだろう。

最近は、ハリウッドで『攻殻機動隊』が実写化されたり、押井守の代表作である『人狼』の実写映画化が韓国で進んでいたりと、作品が国境を越えることも普通になっている。

いずれ日韓共同制作ウェブトゥーンが、他の国で映像化される日もそう遠くない気もする今日この頃、まずはこの公募展を通じてどんな素晴らしい作品が誕生するか、引き続き注目していきたい。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

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