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オープナーは本当に必要なのか? 負担が増える中継ぎ陣への配慮をどう考えるか

上原浩治元メジャーリーガー
(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

オープナー導入の動きが日本球界でも加速している。

 メジャーで採用されたオープナーは本来、先発投手に中継ぎを起用し、1回の上位打線を抑え、2回から本来の先発が登板するシステムだ。

 メリットは2つあるといわれている。

 一つはデータ上、最も失点する確率が高い初回を力のある中継ぎ投手で切り抜けて失点を防ぐという点。近年は2番に強打者を置くチームも多く、初回の失点リスクは確かに高い。とりわけ、立ち上がりに不安がある先発投手に効果があるとされる。

 もう一つは、試合中盤以降の継投時期を遅らせることができるという点。これもデータ上の話で、打者は投手との対戦が3巡目になると、球筋や配球の傾向がわかってきて対応しやすく、失点に繋がりやすくなる。この状況になるのが6、7回とされ、投手は球数も100に近づいて体力的にも厳しくなっている。

 しかし、先発が2回から登板すれば、3巡目の打者が対戦するイニングが後ろへずれ込むため、リードしていれば勝ちパターンのリリーフを送り込めばいいとの判断ができる。わかりやすく言えば、7回に投げる中継ぎと先発の順序を入れ替えたような継投だ。

 日本では完全なオープナーというよりは、中継ぎタイプをショートスターターとして送り出し、その後も小刻みな継投でつなぐ「ブルペンデー」に近いかもしれないが、中継ぎタイプを先発で起用するチームが出てきた。

 「野球に正解はない」というのが持論なので、あくまで私の考えとしてだが、オープナーが定着するかは懐疑的だ。

 まず、メリットに挙げられる「先発の立ち上がりの不安解消」については、初回だろうが、2回だろうが、先発投手の不安は変わらない。私自身も経験があるが、立ち上がりの不安は常につきまとう。試合前にブルペンで投げ込んでも、実際のマウンドでの緊張感は別もので、自分で克服するしかない。オープナーを起用したところで、2番手で登板する本来の先発が立ち上がりの不安を解消できなければ、根本的な解決には至らないのだ。

 何よりも、オープナーで負担が増える中継ぎ陣への配慮をどう考えるかだ。

 先発投手はローテーションが組まれ、自分が投げる日は事前にわかって調整ができる。しかし、中継ぎはシーズンでフル稼働する場合は50~60試合の登板が求められるが、どの試合に投げるかは試合展開次第だ。

 シーズン中は日々、戦況を見ながらブルペンで肩を作って試合に備える。肩が仕上がっても戦況が変われば、登板しなくなるということも茶飯事だ。そんな中でも、自分が投げる場面を想定して調整する。チームの中での役割を理解し、「中盤にリードすれば自分の出番」などと常に頭の中でイメージを巡らせている。もちろん、自分はだいたい何回に投げるとわかっているほうが体と心が一致できて、試合に備えやすい。そんな中で、たまにオープナーやショートスターターとして初回に投げるという役割が加わると、リズムが狂いかねない。

 オープナーは、ホールドやセーブのような記録が残らず、「打たれたら試合を壊してしまう」というリスクしかないような役割だ。「先発が華」とされ、中継ぎはただでさえ、評価が低い傾向にある。中継ぎにこれ以上の負担を強いる戦略はどうなのか。

 さらに言えば、オープナーが必要な投手は「先発ちゃうやんけ」と思ってしまう。先発は文字通りに試合の最初に投げるスターター。だったら、試合の頭から投げて結果を残せと言いたい。「立ち上がりが不安」「試合中盤に3巡目の打者との対戦が不安」というなら、課題を克服するために2軍でやり直すしかない。オープナーが必要ということは、「先発失格」と言われているに等しく、奮起しなければならない。

 オープナーはメジャーのレイズが最初に採用した、先発投手のコマ不足を解消する戦術の一つだった。監督がチームの戦力を冷静に分析し、シーズンを勝ち抜くために立てた作戦でもある。メジャーでも日本でも、チーム状況によっては、オープナーが必要な状況は生まれるかもしれない。結果に責任を持つ監督の采配は尊重されるべきだが、この場合でも、チームの戦術をオープナーを務める投手が戦略上で必要とされていることを理解し、評価にもつながる査定が必要だ。チームの意図がきちんと伝わり、登板する投手が準備を理解できていないと、中途半端な気持ちでマウンドに立つことになり、戦術も機能しない。

 近代野球の中では新たな戦術、戦略が生まれているのも事実で、オープナーもその中の一つと言えるかもしれない。なので、起用する監督、使われる投手が納得しているのなら否定するものではないという点も記しておきたい。

元メジャーリーガー

1975年4月3日生まれ。大阪府出身。98年、ドラフト1位で読売ジャイアンツに入団。1年目に20勝4敗で最多勝、最優秀防御率、最多奪三振、最高勝率の投手4冠、新人王と沢村賞も受賞。06年にはWBC日本代表に選ばれ初代王者に貢献。08年にボルチモア・オリオールズでメジャー挑戦。ボストン・レッドソックス時代の13年にはクローザーとしてワールドシリーズ制覇、リーグチャンピオンシップMVP。18年、10年ぶりに日本球界に復帰するも翌19年5月に現役引退。YouTube「上原浩治の雑談魂」https://www.youtube.com/channel/UCGynN2H7DcNjpN7Qng4dZmg

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