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羽生九段A級残留への大一番――第79期順位戦A級5回戦羽生善治九段-佐藤康光九段戦展望

古作登大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員
順位戦A級では1勝3敗と苦しい星取りの羽生九段(写真:Natsuki Sakai/アフロ)

 渡辺明名人(36)への挑戦権を争う第79期順位戦A級(朝日新聞社・毎日新聞社主催)は現在5回戦が進行中。11月23日に、ここまで1勝3敗の羽生善治九段(50)と3勝1敗の佐藤康光九段(51)の対局が東京都渋谷区「将棋会館」で行われる。

 羽生九段にとっては残留を目指すため、佐藤九段にとっては挑戦権争いに踏みとどまるため、ともに重要な一局となる。勝敗と展開を、データを基に予想してみた。

調子の比較では佐藤九段やや有利か

<羽生九段の最近10局>(放映前のテレビ対局を除く)

9月22日 王将戦リーグ

対藤井聡太二冠 ○

10月1日 順位戦A級

対斎藤慎太郎八段 ●

10月9、10日 竜王戦七番勝負第1局

対豊島将之竜王 ●

10月14日 王将戦リーグ

対佐藤天彦九段 ○

10月22、23日 竜王戦七番勝負第2局

対豊島竜王○

10月29日 王将戦リーグ

対広瀬章人八段 ○

11月3日 王将戦リーグ

対永瀬拓矢王座 ●

11月7、8日 竜王戦七番勝負第3局

対豊島竜王 ●

11月17日 王将戦リーグ

対木村一基九段 ○

11月20日 王将戦リーグ

対豊島竜王 ●

<佐藤九段の最近10局>(放映前のテレビ対局を除く)

7月2日 棋王戦本戦

対千田翔太七段 ●

7月15日 順位戦A級

対糸谷哲郎八段 ●

7月27日 竜王戦決勝トーナメント

対梶浦宏孝六段 ●

8月26日 王位戦予選

対三枚堂達也七段 ○

9月25日 順位戦A級

対稲葉陽八段 ○

10月5日 王位戦予選

対長谷部浩平四段 ●

10月7日 棋聖戦2次予選

対田中寅彦九段 ○

10月23日 順位戦A級

対三浦弘行九段 ○

11月6日 朝日杯将棋オープン戦2次予選

対佐藤紳哉七段 ●

11月10日 叡王戦予選

対島朗九段 ○

 羽生九段の対戦相手はトップ棋士ばかりで竜王戦七番勝負を含むタイトなスケジュールだ。なにより11月12、13日に予定されていた竜王戦第4局を体調不良のため延期(26、27日予定の第5局を第4局として開催)したのが気にかかる。

 長年トップクラスで戦い続けてきた「勤続疲労」が出ているのかもしれない。

 それでも直近10局は5勝5敗と五分の星で踏みとどまっているのはさすがといえるだろう。

 一方の佐藤九段も対局ペースこそ余裕があるように思えるが、日本将棋連盟会長としての公務で全国各地を飛び回り多忙なことに変わりはない。

 直近10局は5勝5敗だが、8月以降調子が上向きになっているのは好材料で、調子の面ではやや佐藤有利と見る。

直接対決は羽生九段が大きくリード

 直接対決は163局あり、羽生九段が108勝55敗と大きくリードしており、A級陥落を心配する「羽生ファン」にとっては心強いデータだ。

 順位戦は先後が決まっており本局は羽生九段が先手のため、後手の佐藤九段が角交換系の力戦振り飛車を採用する確率が高い。飛車を振る筋は2筋の「向かい飛車」が本命だ。

 佐藤九段が飛車を振らない場合は角交換からの力戦相居飛車に進む可能性もあるだろう。

大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員

1963年生まれ。東京都出身。早稲田大学教育学部教育学科教育心理学専修卒業。1982年大学生の時に日本将棋連盟新進棋士奨励会に1級で入会、同期に羽生善治、森内俊之ら。三段まで進み、退会後毎日コミュニケーションズ(現・マイナビ)に入社、1996年~2002年「週刊将棋」編集長。のち囲碁書籍編集長、ネット事業課長を経て退職。NHK・BS2「囲碁・将棋ウィークリー」司会(1996年~1998年)。2008年から大阪商業大学アミューズメント産業研究所で囲碁・将棋を中心とした頭脳スポーツ、遊戯史研究に従事。大阪商業大学公共学部助教(2018年~)。趣味は将棋、囲碁、テニス、ゴルフ、スキューバダイビング。

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