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自助・共助・公助の限界を見据えて台風上陸前にすべきこと

中澤幸介危機管理とBCPの専門メディア リスク対策.com編集長
昨年の台風被害(写真:ロイター/アフロ)

いよいよ台風シーズン。あと数日で台風が来ると分かっていても、自分がいる場所は大丈夫だろうと考えてしまい、早めに避難をするというのはなかなか難しいものです。しかし、過去の災害を見れば、避難情報が出るぎりぎりまで待って、避難情報が出された時にはすでに外は大雨、しかも真夜中とあって動けず、そのまま浸水被害に遭ってしまうといったケースが後を絶ちません。

さらに、台風の規模や強さは分かっても、雨量までを正確に予測することは難しく、想定以上の大雨に逃げ遅れ、被災をされた方もいらっしゃいます。

一方、防災の基本である自助、共助、公助も、近年の少子高齢化や過疎化により機能しづらくなっています。当然、自らが自らの命を守れるようにすることが何より大切ですが、高齢化や核家族化などにより、一人暮らしの高齢者や高齢世帯が増えており、自助には限界がきつつあります。共助についても、中山間地では、過疎化により限界集落ともいわれるような地域が増え、やはり限界を迎えています。そして、公助についても、特に中山間地の小規模自治体は人手が足りず、防災担当者は数名しかおらず、さらに現在は新型コロナウイルスの対応に追われていることもあり、防災や災害対応にまで手が回らないというのが実情でしょう。

では、こうした状況の中で、被害をなるべく防ぐにはどうしたらいいのか? 

【災害時の負担を少しでも少なくする】

解決方法の1つは、災害時にやることを少しでも事前にやっておくということです。危機が発生した際に、危機への対応の負担を少しでも減らせるようにすることは危機管理の要諦です。自助でいえば、大雨になってしまえばもう動けないわけですから、最低でも、自分がいる場所の危険性をハザードマップなどで知っておく、避難の場所を探しておく、避難のタイミングを考えておく、災害情報を常に入手できるようにしておく、備蓄を見直し持ち出せる物を用意しておくということを今すぐにでもすべきです。

ハザードマップでは、特に、洪水、土砂災害、高潮の危険性について改めて確認をしてください。ハザードマップは市区町村が家庭に配布する場合がありますが、なければ国土交通省の「ハザードマップポータルサイト~身のまわりの災害リスクを調べる~」で調べることもできます。

<ハザードマップポータルサイトの使い方>

1. 「重ねるハザードマップ」に自宅の住所を入力すると、地図上に位置が表示されます。

2. 「災害種別」から洪水と土砂災害をクリックして、自宅が色のある範囲内かどうか確認します。

3. 洪水は色のある場所をクリックすると、浸水の高さが分かります。仮に0.5メートル未満なら床上まで浸水する可能性は低いし、それ以上でも3メートル未満なら、2階建て以上の家なら2階に逃げることで命は助かります。

4. 土砂災害はさまざまな色が塗られていますが、特に「警戒区域」に指定されている場合は注意が必要です。

避難先は、コロナ禍であることを考慮し、少しでも広い避難所、車での避難(ただし災害時には渋滞を引き起こすので早めの場合に限る)、旅館やホテル、安全な親戚・知人宅などに避難する方法も考えましょう。自治体によっては、ホテル・旅館などの宿泊施設に避難する場合に、その宿泊費を助成したり、受け入れる側の施設の改修費などを助成する動きも出ています。

https://news.yahoo.co.jp/byline/nakazawakosuke/20200901-00195723/

災害の直前になると、買い占めに走る人が多いことが予測されます。確実に台風が来るかどうか分からなくても、備蓄量に不安があるのであれば、数日前の時点で購入しておいたほうがいいでしょう。ガソリンなど車両燃料も同じで、台風の接近直前、あるいは被害が出た後では入手できなくなる可能性が大きくなります。

復旧を終えていない被災地で考えるべきことは、まず、自分の命をしっかり守るということ。被災した家でもそこに居たい気持ちは分かりますが、台風が接近する中で、すでに屋根が大きく被災しているような家で過ごすことは危険です。今のうちから避難所の場所を確認し、安全な身内の家などに移れる準備をしておくことが大切です。

共助の立場からいえば、災害時に突然皆で集まって逃げるかどうか判断もできないわけですから、いつの時点で逃げるかをあらかじめ確認しておくことが大切です。一人では逃げることが難しいので、とにかく声をかけ合い、皆で早めの行動を起こすことを心掛けてください。

公助でいえば、災害時に一斉に避難情報を出して本当に危険な場所には声が届かず、あるいは、すでに動けない状況になっている人も多いわけですから、大雨が降りだす前に、土砂災害や河川洪水などの被害に遭いそうな危険な地域については直接連絡し、事前対策や災害時の行動を伝えるということが大切です。自治会などと連携して、危険と思われる地域に優先的に声をかけてください。

災害が起きてから後悔することがないよう、今できることをしっかりと行うということが大切です。

【あらゆる縁の力を使う】

それでも限界はあります。繰り返しになりますが、共助と公助も、少子高齢化や過疎化によりコミュニティそのものが崩壊しかけているからです。その際、自助・共助・公助に新たに「縁助」を加えることが重要だと私は考えています。

縁助とは、地縁、血縁、職縁、酒縁…、学校での先生や友だち、お店と顧客、趣味、ネット交流、さまざまな結びつきの「ご縁」を防災力に生かしていくことが重要だと思うのです。お店ではお客様に早めの避難を呼びかける、学校でも、職場でも、あらゆる場所で同様に避難を呼びかける。こうすることで、公民館や学校以外の新たな受け入れ先も出てくることが期待されます。コロナ禍では、分散避難が求められていますが、さまざまな縁を広げていくことが新たな避難先の確保につながるはずです。

数日前からすべきこと

あと数日で、台風が来るとなったら、常に気象情報を見るようにします。天気予報やニュースはもちろん重要ですが、見逃してはいけないのが注意報や警報です。台風は上陸前から大雨や暴風をもたらします。台風の上陸時間を目安にするのではなく、常に、注意報などが出されていないかを確認するようにします。

http://www.jma.go.jp/jp/warn/

出典:気象庁
出典:気象庁

注意報が出るのは大雨の1日前~数時間前です。できればこの時点で避難の準備を進めて下さい。避難情報は自治体から発表されます。警戒レベル3で避難準備・高齢者等避難開始、警戒レベル4で避難勧告・避難指示(緊急)。ただし、繰り返しになりますが、避難情報が出された時にはすでに大雨になっている可能性がありますから、できれば大雨が降りだす前に避難をした方がいいでしょう。その他に注意すべき情報は、河川の洪水や土砂災害の危険度。これらは気象庁のサイトなどから見ることができます。

https://www.jma.go.jp/jp/suigaimesh/flood.html

台風の被災地で取材をすると「まさかこんな被害が出るなんて思っていなかった」という話を必ず聞きます。川から数キロは離れているような場所でも浸水する可能性は十分あります。ハザードマップ通りに被害は起きています。命を守ることはもちろん大切ですが、大雨が降る前に車を移動させておくべきだった、家電類を2階に上げておくべきだった、災害トイレは用意しておくべきだったなどという話も聞きます。停電も想定し、車の電源を使えるようにしておく、スマートフォンなどをあらかじめ充電しておく、洗濯も普段より早めに済ませる、夜中に大雨が予想されるなら早めにお米を炊いておくことなども有効です。

https://news.yahoo.co.jp/byline/nakazawakosuke/20200804-00187708/

企業では、出社・帰宅の判断基準を明確にしておくことや、浸水危険地域にある車両の移動や、在庫の棚上げをしておくことで被害を小さくすることが可能になります。

今できることは何か、どうすれば少しでも被害を小さくすることが可能なのかを考えてください。

危機管理とBCPの専門メディア リスク対策.com編集長

平成19年に危機管理とBCPの専門誌リスク対策.comを創刊。国内外500を超えるBCPの事例を取材。内閣府プロジェクト平成25年度事業継続マネジメントを通じた企業防災力の向上に関する調査・検討業務アドバイザー、平成26年度~28年度地区防災計画アドバイザー、平成29年熊本地震への対応に係る検証アドバイザー。著書に「被災しても成長できる危機管理攻めの5アプローチ」「LIFE~命を守る教科書」等がある。

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