「防災の日」に見直すべき災害の備え 感染リスクと暑さ対策も忘れずに【#コロナとどう暮らす】
9月1日は「防災の日」。台風や高潮、津波、地震などの災害に備える目的で1960年に制定され、今年でちょうど60年になります。この日を挟み8月30日~9月5日は「防災週間」です。9月1日は関東大震災(1923年)の発生日であり、またこの頃(今年は8月31日)は雑節の「二百十日」にあたり、古くから台風襲来の厄日とされてきました。1959年9月26日に上陸した伊勢湾台風が、防災の日制定の契機とされています。
台風に限らず災害に警戒を
近年も9月は、台風に限らず災害が多発しています。2014年9月27日には、長野・岐阜県境の御嶽山で噴火が発生し、飛散した噴石などで63人が死亡・行方不明となり、戦後最悪の火山災害となりました。昨年2019年9月9日には、台風15号が関東地方に上陸し千葉県を中心に甚大な被害を出しました。強風により93万件を超える停電が発生し、復旧が長期化したことは記憶に新しいのではないでしょうか。地震災害では、2018年9月6日に北海道の胆振地方中東部を震源とするマグニチュード6.7の北海道胆振東部地震が発生し、大規模な土砂災害などで43人が死亡。また北海道全土が停電するという前代未聞のブラックアウトが発生しています。
感染リスクを抑える「分散避難」
災害に備えるには具体的に何をすればよいのでしょうか。
今年はコロナ感染対策という課題もあり、各自治体で避難所の過密対策が進められています。また、政府でも、国民に対して、安全な場所にいる人まで避難場所に行く必要がないことや、避難先は、小中学校・公民館だけではなく、安全な親戚・知人宅などに避難する方法もあると「分散避難」を呼び掛けています。内閣府と観光庁によれば災害避難所として活用可能なホテルや旅館などの宿泊 施設は6月16日時点で全国1254に上るとのことで、さらに拡充されるとのことです。また自治体によっては、ホテル・旅館などの宿泊施設に避難する場合に、その宿泊費を助成したり、受け入れる側の施設の改修費などを助成する動きも出ています。
避難することは命を守る上で最も重要なことですが、「避難所」に行くことだけが避難ではありません。体育館や公民館などの避難所は、密集、密接、密閉のいわゆる「3密」になりやすいとされています。危険性がない場所にいるなら、あえて避難する必要はないでしょう。地震災害に対して言えば、耐震化や転倒防止、備蓄などをしっかり行っておくことで避難所に行く必要はなくなります(高齢者に関しては、災害関連死の危険性もあることから、災害後に長期間、家で一人でいることがないような配慮が必要です)。いずれにしても、日頃から、避難する必要があるのか、あるとすれば、どのタイミングで、どこへ、どうやって、誰と避難するかを考えておくことが重要です。
内閣府と消防庁は下記のようなチラシを作り、住民向けに災害時の注意点をまとめています。
出典:新型コロナウイルス感染症が収束しない中における災害時の避難について(PDF)(内閣府防災情報のページ)
新型コロナウイルスの影響で避難をためらうことがないよう「危険な場所にいる人は避難することが原則です」と強いメッセージを冒頭に載せています。裏面(画像下=PDF2枚目)には、避難行動のフローが分かりやすくまとめられていますので、ぜひご自分でやってみてください。また、具体的な避難時の注意点を分かりやすくまとめている自治体もありますので、お住まいの市区町村のホームページを調べてみてください。
いざ災害が発生したとき適切に行動するには、発生前の備えがとても大切です。
1.予測する
まずは災害時の危険性を知り、自分の状態を正しく予測することです。地理的・物理的な視点から、自宅やその周辺でどのようなことが起き得るのか、知っておく必要があります。
そのためにハザードマップを見て洪水、土砂災害、津波の危険性があるか、危険性はどの程度なのか確認しておいてください。
ハザードマップは市区町村が家庭に配布する場合がありますが、なければ国土交通省の「ハザードマップポータルサイト~身のまわりの災害リスクを調べる~」で調べることもできます。
<ハザードマップポータルサイトの使い方>
1. 「重ねるハザードマップ」に自宅の住所を入力すると、地図上に位置が表示されます。
2. 「災害種別」から洪水と土砂災害をクリックして、自宅が色のある範囲内かどうか確認します。
3. 洪水は色のある場所をクリックすると、浸水の高さが分かります。仮に0.5メートル未満なら床上まで浸水する可能性は低いし、それ以上でも3メートル未満なら、2階建て以上の家なら2階に逃げることで命は助かります。
4. 土砂災害はさまざまな色が塗られていますが、特に「警戒区域」に指定されている場合は注意が必要です。
地震なら1981年より前に建てられたかどうかで耐震基準を満たしているかどうかを確認します。さらに室内に転倒または大きく移動しそうな物がないかも確認し、転倒防止や移動防止、落下防止策を講じておいてください。
2.避難先を考える
どのような災害があったら、どこに避難するかを考えておきます。本当に自宅が危険なら避難すべきです。安全が確保できるなら自宅内で避難するのもよいでしょう。
自宅外に避難する場合、感染リスクを意識しましょう。体育館や公民館などの避難所は、密閉・密集・密閉のいわゆる「3密」になりやすいとされています。「3密」を避け感染リスクをできる限り下げるため、少しでも広い避難所を探したり、安全な親戚・知人宅に避難するのもよいでしょうし、ホテルなども空いていると思います。ただし災害が起きてから親戚・知人にいきなり連絡したら受け入れる側も大変でしょうから、避難が必要になりそうな場合はあらかじめ話し合っておいてください。
また考えてほしいのは、避難することで新たなリスクが発生するということ。3密を避ける手段として車中泊が注目されていますが、上記チラシにもあるように豪雨時の屋外の移動は危険です。大雨の中、車で逃げることで命を落としてしまった方は少なくありません。早めに避難する、落ち着いて避難することがとても重要であることをくれぐれも忘れないでください。
なお新型コロナウイルス対策により、避難所や避難場所が変更または増設されている可能性があるので、災害時には市町村ホームページ等で確認したほうがよいでしょう。
3.備蓄する
上の避難場所をイメージしつつ、しっかり備蓄しておきましょう。
一般的な備蓄品(参考:防災用品 - Yahoo!天気・災害 防災手帳)に加え、基本的な感染対策がとれるようにしておくことが大切です。次のリストを参考にしてください。
画像制作:Yahoo!ニュース
上のリストのうち、防虫スプレーは蚊が増える季節の定番ですが、3密を避けるため窓を開けたり屋外で過ごしたりする場合に備えて今年は特に必須と思われます。また、暑さ対策として、うちわや扇子、手持ち扇風機などがあってもいいかもしれません。2007年7月に発生した新潟県中越沖地震では避難所の暑さ対策が大きな問題となりました。
タオルなども多めに用意するとよいでしょう。汗を拭いたり、マスク代わりに口や鼻を覆うと楽ですし、せき込んだとき音が消せます。また避難生活でも心身の健康を保つために、安眠グッズ(アイマスク、耳栓、ヘッドフォン)や好みのおやつ、ビタミン剤などもおすすめです。ヘッドライトまたはランタン、乳児には液体ミルクもあると便利です。
そして大事なポイントは、人それぞれ違う「必要なもの」があるということ。なるべく我慢が少なくてすむようイメージして備えてください。例えば人によって予備のメガネは欠かせません。
災害は予測しきれない
最後に、災害や自分自身の状況は予測しきれるものではないことも頭に入れておいてください。安全だと思っていた自宅が被災してしまい、その時あなたは新型コロナウイルスに感染しているかもしれません。地域で集団感染が発生し、避難所の感染リスクが非常に高まっている事態も考えられます。ですので常に状況を把握し、どう行動するか複数の選択肢が選べるようにしておくことが大切です。