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ウクライナ軍、破壊された小型ドローンを上空のドローンがロープで釣り上げて回収「置き去りにはしません」

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

「どのようなドローンも置き去りにはしません」

2022年2月にロシア軍がウクライナに侵攻。ロシア軍によるウクライナへの攻撃やウクライナ軍によるロシア軍侵攻阻止のために、攻撃用の軍事ドローンが多く活用されている。また民生用ドローンも監視・偵察のために両軍によって多く使用されている。そして両軍でドローンの撃墜が繰り返されている。

ウクライナ軍ではドローンで上空からロシア軍への攻撃の様子を撮影して、その動画や写真をSNSで公開して世界中にアピールしている。多くがロシア兵への攻撃シーンや撃墜したドローンの残骸の写真や動画が多い。

そんななか、ウクライナ軍では破壊されて草原に落ちていた中国のDJI製の民生品ドローン「Mavic3」を、別のドローンがロープを垂らしてフックをつけて、破壊されたドローンを釣りあげて回収している動画を公開していた。地元メディアでは「Leave no drone behind, no one left behind(どの兵士も置き去りにはしないように、どのようなドローンも置き去りにはしません)」と伝えていた。

▼上空のドローンがロープで破壊されたドローンにフックを付けて釣り上げる様子

このような偵察に使用される小型の民生品ドローンで上空から敵軍の居場所を検知したらすぐにミサイルを撃ち込んで攻撃を行っている。そのためロシア軍もウクライナ軍でも小型の民生品ドローンでも徹底的に破壊しておかなければならない。そのため多くのドローンが上空で機能停止されたり破壊されたりしている。

上空のドローンを迎撃するのは、電波を妨害(ジャミング)してドローンの機能を停止させるいわゆる"ソフトキル(soft kill)"と、対空機関砲のように上空のドローンを爆破する、いわゆる"ハードキル(hard kill)"がある。それぞれに迎撃システムがある。

今回、ロープで釣り上げられて回収された中国のDJI製の民生品ドローン「Mavic3」はおそらくソフトキルで機能停止されたものとみられる。中国のDJI製の民生品ドローン「Mavic3」は監視・偵察だけでなく、小型の爆弾や手りゅう弾を搭載してロシア軍に投下して攻撃することもできる。徹底的に破壊されたドローンは再利用は不可能で、新しいドローンを調達した方が安上がりである。だが回収されて部品などを再利用されることも多い。ロシア軍はロシア製の偵察ドローン「Orlan-10」の部品を再利用している。地上に放置されたドローンを回収しておけば、敵軍に回収されて再利用されることもない。

ウクライナではドローンのことをウクライナ語で「目(eye)」を意味する「Очі」(Ochi:オチ)と呼ばれることが多い。ウクライナ紛争では攻撃でも監視・偵察でも多くの面で戦場でドローンが使用されている。ドローンは「上空の目」として戦場では欠かせない重要な兵器、監視システムになっている。

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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