Moto2直系の走り!新型「ストリートトリプルRS」の凄さをデータから読み解いてみた
トライアンフから2020年モデルの「STREET TRIPLE RS」が発表された。新型となり、いろいろ新しくなっているのだが、一番のトピックはエンジンがMoto2マシン用をベースにしていることだろう。
周知のとおり、トライアンフは2019シーズンからFIMロードレース世界選手権におけるMoto2エンジンの独占的サプライヤーとして3気筒765ccエンジンを供給しているが、開発に2年を費やしたというエンジンは、昨シーズンまでのコースレコードをことごとく塗り替えるなど実力は証明されている。今回の新型ストリートトリプルRSに搭載されるのは、まさにその直系エンジンということで期待は膨らむ。
Moto2で鍛えられた3気筒が戻ってきた
ストリートトリプルRSはスーパースポーツ「デイトナ675」のエンジンと車体をベースとしたミドルクラスのスポーツネイキッドとして2007年に登場。日常域での使い勝手に優れ、ワインディングでのスポーティな走りを気軽に楽しめるモデルとして幅広い層に人気を博してきた。エンジンは「デイトナ675」譲りの軽量コンパクトな水冷DOHC12バルブ3気筒675ccを低中速寄りに最適化したもので、その後スタイリングや排気系レイアウトなどの変更を重ねてきたが、デビュー10周年を機に大幅にアップデートされたのが現行の2017年型である。
排気量を従来の645ccから90cc拡大し、最上級モデルのRSでは最高出力16%アップの123ps/11700rpmに、最大トルクも16%アップの79Nm/10700rpmとしたことは記憶に新しい。自分も2017モデルをサーキットとストリートでそれぞれ試乗したが、加速の鋭さやトルクの力強さが増して明らかに速くなっていたし、エンジンの回り方からサスペンションの動きなど全方位的に走りがグレードアップしていたのを覚えている。
そして、2017モデルと同時に開発が進められていたのがMoto2用エンジンで、2018年2月にスペイン・アルメリアサーキットで行われたMoto2プロトタイプのプレス向け試乗会では最高出力133ps超とされていたが、同年11月の最終戦バレンシアGPでの発表では140ps超まで上乗せされていることがアナウンスされた。そして今回、Moto2によって鍛えられたがエンジンが、再び公道用市販モデルであるストリートトリプルRSの最新型に搭載されて戻ってきたのだ。
常用域での楽しさはミッドレンジにあり
さて、注目のエンジンだが、トライアンフMoto2エンジンチームによって開発された最新の3気筒765ccユニットは最高出力123ps(91kW)/11750rpm、最大トルク79Nm/9350rpm とスペック的に従来モデルと同じだが、注目すべきは増強されたミッドレンジである。出力、トルクともにミッドレンジで9%も増強されている。
元々トライアンフの3気筒エンジンは中速域に厚いフラットトルクが持ち味だったが、そのメリットをさらに伸ばす方向でチューニングしてきたと言える。高速道路やワインディングを含む公道レベルでの走りにおいて実質的な速さはミッドレンジのトルクで決まると言ってもいい。何故なら最高出力を発生する回転数までエンジンを回すことなど、公道ではまずあり得ないからだ。それよりむしろ、常用域でトルクを太らせたほうが信号発進でも追い越し加速でもメリハリが効いて楽しいし、Uターンのような低中速域でも扱いやすくなる。特に新型では最大トルク発生回転数が従来よりも1350rpmも低いことにも注目したい。つまり、加速のより早い段階からより大きな力で車体を前に押し出してくれるということだ。
1割増しの走りに期待したい
ブレンボやオーリンズ、ピレリといったプレミアムな足まわりや新型アップ&ダウンシフター、5種類のライドモードなどの電子制御の進化、新型TFTディスプレイやGoPro接続システムも搭載されるなど最新イクイップメントの充実も魅力だが、やはり何と言ってもストリートトリプルの真骨頂は走りにある。
その意味ではミッドレンジで約1割増しのパワー&トルクを獲得した意味は大きいはず。クラス最軽量レベルの車体とMoto2の鞭が入ったエンジンマネジメント、歴代モデルで定評のある俊敏でダイナミックなハンドリングと相まって、新型ストリートトリプルRSはさらにハイレベルのファンライドを楽しませてくれるに違いない。
なお日本でのデリバリー開始は11月中旬、価格は143万7,000 円(消費税込)を予定。
※原文より筆者自身が加筆修正しています。