これまで1,800社のリスクマネジメントに関する支援を行ってきたニュートン・コンサルティング株式会社は、7月21日にプレスセミナーを開催し、企業のリスクマネジメントに関して現在生じている課題について解説。大震災や新型コロナといった社会的リスクだけではなく、レオパレスの施工不備、ベネッセの個人情報流出、マンションや自動車会社のデータ改ざん、三菱電機の長年に渡る品質不正、三幸製菓の建物火災など、近年の不祥事一覧表を見ながら「全く想定外だったのか!?」と疑問を投げかけ、平時のマネジメントにおける問題点を指摘しました。
レビューが形骸化していないか
同社の取締役副社長 勝俣良介氏は、この10年間を振り返り、企業不祥事、大地震、新型コロナ、ウクライナ戦争、いずれも全く想定外かといえばそうではないと指摘。
認識済みのリスクであるにもかかわらず、対応の失敗を繰り返しているように見えてしまいます。
問題は、振り返りの形骸化、慣例化、惰性化にありそうです。
数字の報告だけでその背景にある問題を議論しない。かんぽ生命の不適切販売やスルガ銀行の不正融資の第三者委員会も「問題が立ち消えになっていた」と同じような指摘をしています。何となく会議をしておしまい、の様子を報告書は浮き彫りにしていました。*2
「何のため?」といった視点はリスク討議には欠かせない。日本語はそもそも主語が曖昧で、何となく会話が進んでしまうことがあります。それが一種のリスクになってしまうと指摘。毎回繰り返して問う、確認することが認識のずれやミスコミュニケーション回避につながるといえます。
リスクマネジメントを日常的に続けるコツ
重大リスクに関する討議頻度を高めれば解決するのでしょうか。勝俣氏は短い時間であっても日常的に部門長との議論を習慣化するのが有効だと強調。
確かにゲーム性を取り入れていく方法は、継続するためには有効に見えます。
経営とリンクさせて日常的な目的・目標の中に自然と取り入れるには新たなマインド設定が必要になるのでは。
内部監査が要になりそうですが、企業の内部監査役は役割を果たせるのでしょうか。
織田裕二主演ドラマ「監査役 野崎修平」(漫画原作:周良貨)では、監査役が幹部の不祥事関して単独記者会見を行うシーンがありました。原作は20年以上前の作品ですが、内部監査のあるべき姿を描いていた点は先見性があります。日本大学理事長が昨年逮捕された後の12月の記者会見では、監事(監査役)が記者会見に登壇しました。監事になって1年以上経つのに、「1年半前になったばかり」と逃げの姿勢で説明は充分ではありませんでしたが、今後のリスクマネジメントは内部監査役の活躍にかかっているのかもしれません。
*1 Top Risks 2022 from Eurasia Group(2022年1月3日発表)
https://www.eurasiagroup.net/services/japan
*2 社長が「驚いた」と言っている場合ではない 現場の声と苦情が届かなかったかんぽ生命
https://news.yahoo.co.jp/byline/ishikawakeiko/20200420-00173032