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「メッセンジャー」黒田と「中川家」が今コントをやる意味

中西正男芸能記者
コントイベントを開催する(右から)「メッセンジャー」黒田有、「中川家」剛、礼二

 関西で多くの番組で司会を務める漫才コンビ「メッセンジャー」の黒田有さん(48)と初代「M-1グランプリ」王者「中川家」が約20年ぶりにユニットを組んでコントイベント「ザ.コウラン」(27日、東京・ルミネtheよしもと)を行います。NSC大阪校10期生の黒田さんと11期生の剛さん(47)、礼二さん(46)。濃厚な若手時代を経て、今、もう一度一緒にやる意味とは。思いをストレートに語りました。

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今がギリギリ

黒田:なんかね、最近、よく話をするんですよ。「昔はしょっちゅう一緒にコントを作ってたのに、すっかり作らんようになったなぁ」と。もちろん、昔は「すんげー!Best10」(1995年~97年、ABCテレビ)とか若手が集まってコントをやる番組もあったし、一緒に作る必然性があったんですけど、今はそれがない。ならば、やる意味を作ろうと。それがこのイベントなんです。

礼二:それをやるんやったら、もう今がギリギリやろうなと(笑)。そら、3人ともオッサンですけど、まだ少しは元気もあるし、頑張れる。これが10年経ったら、もうさすがにしんどいやろうと。じゃ、今やなとなったんです。

黒田:こうやって、3人でしっかりコントをやるというのは20年ぶりくらいですね。昔はとにかく勢いでやってました(笑)。みんなエエ歳になったし、この20年でいろいろな経験もしたし、勢い以外のものもやりたいなと。そんな思いを4本のコントに込められたらなと思っています。

:やっぱりこの歳になってくると、凝り固まるというか、決まったことしかやらなくなりますからね。会う人も、いつも一緒になってくるし。それは、あんまり良くないなとずっと感じていたんです。実際、今回けいことか打ち合わせとかで動き出すと、これが本当に新鮮で。久々にドキドキしてますよ(笑)。

昔はやったもん勝ち

礼二:ま、若手の頃は打ち合わせをしてても、誰も一歩も引きませんでしたからね。誰も“死に役”をやらない。個性と個性のぶつかり合いで大渋滞…。しょうがないから勢いだけでやって、あとは本番でやったもん勝ちみたいなね(笑)。

黒田:礼二が言うみたいに、若手の頃は“自分らが世に出たいがため”のコント作りでした。それはそれで良かったと思うんですけど、ま、正直、僕らもそこそこキャリアを積んできた。その中で、変な言い方ですけど「このイベントで見て、僕らを引き上げてほしい」みたいな思いはないんです。簡単に言うたら、高校野球のOBがまたこの歳でもう一回野球をやってみようという感じですね。

礼二:オッサンになって、体は動かんけど、ま、その面白みもありますしね。

黒田:僕も「中川家」も日々漫才で舞台にも立ってますし、もちろん舞台をなめてないし、お客さんもなめてない。そこでやることとは真剣に向き合うんですけど、ただ、今やからこそ出るバカバカしさがあるやろうし、それをお客さんに楽しんでもらえたらなと思っているんです。

:昔は昔の面白みもありましたけどね。ホンマに勢いでやってましたんで、即興でコントをやることもあった。ま、当然、ストーリーが行き詰まることもありますけど、それはそれで最後の“切り札”もありましたしね。ホンマに困ったら思いっきり大きな声で「ワーッ!!」と叫んだら何とかなるという(笑)。「これがオチですよ」みたいな空気もちょっと出るし。

礼二:ホンマに、なんとかなっとったなぁ(笑)。ま、恐ろしいほどスベったのもありましたけどね。

黒田:同棲カップルのコントで僕が彼氏、剛が彼女。礼二がアナウンスで心の声をやるという。彼女が生理が来ないと彼氏に打ち明ける。その時の互いの心の声を礼二が入れていくんですけど、彼氏は焦ってるけど、彼女はしてやったり的な感じで。

礼二:ま、設定からしてお客さんがひいてましたけど、一番スベったのがオチでしたね。最後、彼女が妊娠検査薬を使って、妊娠してなかったことが分かる。黒田さんが演じる彼氏が「そうやったんか…」と残念そうに舞台袖に歩いていくんですけど、そこで心の声の僕が「ヨッシャ!」と叫ぶというオチで…。ウケないというか、何でもアリの当時にしても、お客さんがドン引きというか。

:ほとんど女性のお客さんの前で、それをやって、ウケると思ってたんが恐ろしいわ。

まじめな男

礼二:あとね、今回一緒にやらせてもらって思っているのは、今の黒田さん、意外と打ち合わせが長いんです。皆さん、そんなイメージがあるかどうか分かりませんけど、本当にきちっとやろうとするというか。ものすごくまじめなんです(笑)。僕らの方が「もう、そのあたりでよろしいやん」という感じになるんですけど、本当にしっかり決めにかかるというか。

:まじめで一本気やしね。

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黒田:…。

礼二:ま、よく考えたら、みんなむちゃくちゃやってた昔から、黒田さんは基本ずっとまじめやし、真っすぐな男でしたね。

黒田:今くらいの年齢になってきたら、普通は、もう“プラスのこと”しかしないと思うんです。仕事の内容にしても無理はしなくなるし、ギャラもある程度の額じゃないとやらないとか。ただ、今回のイベントなんて、しんどい割にお金ももらえないし、大々的に発信することでもないし、決してプラスが多くはない。ただ、プラスの薄いことをやる意味というのもあると思うんです。普通にしていたら、どんどんやらなくなっていくことをやってみる。それが、逆に、今求められることなんかなと。

礼二:さすがまじめな男。

黒田:やかましいわ!その流れ、やめ!

:あとね、僕はこの3年くらいですかね。鍛えてるんです。筋力トレーニング。趣味がなかったから。やっと見つけた趣味がトレーニングだったんです。ただ、漫才中、礼二につっこまれても、体幹がしっかりしてるのでよろけないようになりまして。これって、よろけた方が面白いところもあるんで、そこは困ったもんなんですけどね。ただ、ウエートトレーニングも、有酸素運動もしっかりやってるし、だいぶと仕上がってはいますよ。

黒田:いきなり、よく分からん肉体自慢もやめ!多角的にバカにすな!ま、こんな味をお楽しみいただけたら幸いです(笑)。

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(撮影・中西正男)

■黒田有(くろだ・たもつ)

1970年1月29日生まれ。大阪府東大阪市出身。板前を経て、91年にNSC大阪校10期生の同期、あいはら雅一と漫才コンビ「メッセンジャー」を結成。コンビとして上方漫才大賞、上方お笑い大賞など受賞多数。2009年12月、暴行騒動で謹慎生活を経験するも、現在は関西テレビ「ちゃちゃ入れマンデー」、テレビ大阪「わざわざ言うテレビ」などに出演。コンビでもMBSテレビ「メッセンジャーの○○は大丈夫なのか?」、MBSラジオ「それゆけ!メッセンジャー」などに出演中。「中川家」とのコントイベント「ザ.コウラン」を27日に東京・ルミネtheよしもとで開催。他の出演者はお笑いコンビ「ギャロップ」の林、タレント・野呂佳代、劇団「THE ROB CARLTON」のボブ・マーサム。エッセイ集「黒田目線」(毎日新聞出版)も26日に発売される。

■中川家(なかがわけ)

1970年12月4日生まれの剛と1972年1月19日生まれの礼二の兄弟漫才コンビ。大阪府守口市出身。大阪NSC11期生。同期は陣内智則、ケンドーコバヤシ、たむらけんじら。92年、結成。若手時代から、芸人仲間の誰もが認める高い技術で注目される。2001年に行われた第1回「M-1グランプリ」で優勝。フジテレビ「さんまのお笑い向上委員会」、MBSテレビ「痛快!明石家電視台」などに出演中。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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