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46歳バツ2。どこに出しても恥ずかしい経歴ですが、離婚=不幸ではありません~スナック大宮問答集73~

大宮冬洋フリーライター
読者交流宴会の参加男性と改めて対談しました。中央の男性は筆者。(参加者提供)

スナック大宮」と称する読者交流宴会を東京、愛知、大阪などの各地を移動しながら毎月開催している。味わいのある飲食店を選び、毎回20人前後を迎えて和やかに飲み食いするだけの会だ。2011年の初秋から始めて開催150回を超えた。のべ3000人ほどと飲み交わしてきたことになる。
 筆者の読者というささやかな共通点がありつつ、日常生活でのしがらみがない一期一会の集まり。参加者は30代から50代の「責任世代」が多い。お互いに人見知りをしながらも美味しい料理とお酒の力を借りて少しずつ打ち解けて、しみじみと語り合えている。そこには現代の市井に生きる人の本音がにじみ出ることがある。
 その会話のすべてを再現することはできない。参加者と日を改めてオンラインで対話をした内容をお届けする。一緒におしゃべりする気持ちで読んでもらえたら幸いだ。

***マサカズさん(仮名。独身、46歳)との対話***

楽しんだり成長したりする時間よりも、「やるべきこと」を優先してきてしまった人生

――スナック大宮への参加申し込み&自己紹介メールがとても興味深かったです。<これだ!という趣味はありませんが、インドア、アウトドアどちらも楽しめるタイプです。厳密には、何をしているときが楽しいのか探し中です(笑)。バツ2(子供無し)というどこに出しても恥ずかしい経歴ですが、離婚したことが不幸なわけではないと思っています>と書いてありましたね。僕も離婚歴があるので他人事ではありませんが、マサカズさんはもう少し成熟してから結婚すべきだったという印象です。

 おっしゃる通りです。僕はこれまでの人生で、自分が楽しんだり成長したりする時間よりも、目の前の「やるべきこと」を優先してきてしまいました。

――優先してきた「やるべきこと」というのは仕事でしょうか。

 はい。僕は工学部出身で、新卒で精密機器の開発・設計職に就きました。大宮さんと同じく就職超氷河期だったので、「替えの人間はいくらでもいるよ」というプレッシャーの中で徹夜の激務が続いたこともあります。
 さすがに体力的に厳しいと感じて、12年前に現在の会社に転職しました。理系の国家資格が必要な管理業務で、夜勤はありますが前職ほどつらくはありません。好きでも嫌いでもない仕事ですが、全国どこでも需要があり、年齢を重ねても働けます。いずれは東北にある地元に帰ることも可能です。

――そんなマサカズさんにとって、結婚も「やりたいこと」ではなく「やるべきこと」だったのでしょうか。

 そうだったのかもしれません。最初の結婚は40歳のときで、相手は同じ職場で受付業務をしていた11歳年下の女性です。働くことがあまり好きではない人で、結婚と同時に会社を辞めて専業主婦になりました。僕はますます「仕事をがんばらなくちゃ」と思っていたら気持ちがすれ違うようになってしまったんです。家にずっといる人と外で忙しくしている僕とではちょっとした時間の重みが違いますから。42歳のときに別れました。

先月は池袋の「IZAKAYA 場琉 GOO」にて開催。25人のお客さんと飲み交わしました。(参加者提供)
先月は池袋の「IZAKAYA 場琉 GOO」にて開催。25人のお客さんと飲み交わしました。(参加者提供)

いろんな考えの人と出会って話してもう少し成長して、自分と息が合う女性と結婚したい

――2度目の結婚は?

 最初の離婚がかなりショックで、寂しさもあって婚活パーティに行くようになり、そこで好みのタイプの見た目の女性に出会いました。14歳年下です。あまり可愛げのない性格の女性でしたが、結婚したらどうにかなると思っていたんです。でも、人の性格は変わらないのですね……。42歳にしてそんなことも知らずにいた自分は本当に未熟だったなと思います。
 この人も結婚後に専業主婦になり、だけど家事は僕もやっていて、自分だけが自由時間や睡眠時間を削られているような気持ちで過ごしていました。「このまま結婚生活を続けていても楽しいことはないよね」と彼女に言われ、引き留める気にはなれずに「そうだね」と軽く応じて離婚しました。まるで彼女と別れるような感覚でした。

――10歳も年下の女性と結婚するのであれば、「甘やかされたい」という期待に応える覚悟が必要な気がします。マサカズさんはどちらかというと可愛がられる感じの男性なので、精神年齢も実年齢も高めの女性のほうが向いていると思いますよ。

 今では僕もそう思いますが、そのようなアドバイスをしてくれる人が周囲にいませんでした。40代半ばになるまで、職場の狭い付き合いばかりで過ごして来てしまったので……。
 今年5月に離婚してからは、遊び仲間を見つけるアプリなどを利用して、バスケットボールサークルで体を動かしたりキャンプやBBQ仲間を見つけたりしています。以前からやっている登山も含めて、自分が楽しいと思える場所にいる人とは気が合うことが多くて、仕事仲間には言いにくいことも話せたり厳しめのアドバイスをしてもらったり。自分はこういう時間が足りなかったのだと身に染みているところです。
 すぐに婚活をしようとは思っていません。2回の離婚経験が不幸なことだとは思っていませんが、十分に反省して次につなげたいと思っています。いろんな考えの人と出会って話してもう少し成長して、自分と息が合う女性と結婚したいです。

――職場以外で気の合いそうな人とのおしゃべりを楽しむのであれば、僕の読者交流宴会であるスナック大宮は合っているかもしれませんね。婚活パーティーではないので既婚者も含めていろんな人がいます。

 はい。僕は今回初参加でしたが、お一人参加の人ばかりなので「近くに座った人と話そう!」という協調的な雰囲気がありますね。僕も「何を大事にして暮らしていますか」とか「結婚したことはありますか」などといろいろ聞きたかったのですが、質問上手な女性たちに聞いてもらってばかりで時間が過ぎてしまいました(笑)。

*****

こうあるべき姿を追い求めて自分本来の幸せを見失ってしまう悲劇。やり直せます

 以上がにこやかで若々しいマサカズさんとの対話だ。自分はこうあるべきという姿を追い求めるあまり、自分本来の幸せを見失ってしまう――。マサカズさんや筆者のような就職氷河期世代だけでなく多くの現代人が陥りがちな悲劇だが、その過ちに気づいて立ち止まれば人は何歳からでもやり直せると思う。
 ただし、若い頃はなかなか難しい。「自分は何者かになれるはず」という気持ちが強くて、その「何者か」に他人の欲望が入り込んでしまいがちだ。そして、世間的に成功だと思われやすい道を選んでしまう。誰もが知っている有名企業に入り、他人から羨ましがられるような異性と結婚する、などだ。それが自分自身の望みであるとは限らないと知るには経験と時間が必要だ。
 マサカズさんの場合は、バスケットボールで体を動かしたり登山やキャンプで自然を感じたりする「同好の士」との交流に純粋な喜びを見出している。その時間を大事にしていれば、次のパートナー選びを間違えることはないと思った。

常連さんに会場探しや受付も手伝ってもらい、全国各地の良き飲食店で開催しているスナック大宮。今月は大阪・石切のカフェで開催しました。10月は東京・大塚の蕎麦店で開催予定です。(参加者提供)
常連さんに会場探しや受付も手伝ってもらい、全国各地の良き飲食店で開催しているスナック大宮。今月は大阪・石切のカフェで開催しました。10月は東京・大塚の蕎麦店で開催予定です。(参加者提供)

フリーライター

僕は1976年生まれ。40代です。燦然と輝く「中年の星」にはなれなくても、年齢を重ねてずる賢くなっただけの「中年の屑」と化すことは避けたいな。自分も周囲も一緒にキラリと光り、人に喜んでもらえる生き方を模索するべきですよね。世間という広大な夜空を彩る「中年の星屑たち」になるためのニュースコラムを発信します。著書は『人は死ぬまで結婚できる』(講談社+α新書)など。連載「晩婚さんいらっしゃい!」により東洋経済オンラインアワード2019「ロングランヒット賞」を受賞。コラムやイベント情報が読める無料メルマガ配信ご希望の方は僕のホームページをご覧ください。(「ポスト中年の主張」から2017年3月に改題)

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