短観からみても日銀はビハインド・ザ・カーブ(後手に回る)に陥っている
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日銀が2日に発表した9月の全国企業短期経済観測調査(短観)で、大企業製造業の景況感を示す業況判断指数(DI)は、前回の6月調査のプラス5から4ポイント改善してプラス9となった。2期連続で改善し、市場予想も上回った。
大企業非製造業DIはプラス27と前回から4ポイント改善し、1991年11月調査以来の水準32年ぶりの高水準となった。こちらも市場予想を上回っていた。
業種別に見ると、製造業では自動車や、石油・石炭製品、食料品なども改善していた。非製造業では電気・ガスや小売り、不動産、国内観光や宿泊・飲食サービスも改善した。
先行きの見通しは大企業製造業は1ポイント改善しプラス10となっており、大企業非製造業は6ポイント悪化のプラス21となっていた。
企業の事業計画の前提となる2023年度の想定為替レート(ドル円)は全規模全産業で135円75銭と6月調査の132円43銭から円安に修正されていた。足元では150円近くとなっており、やや乖離が生じている。
企業による消費者物価見通しは引き続き高水準となっていた。全規模全産業の1年後の見通し平均は前年比2.5%の上昇。3年後見通しは2.2%、5年後見通しは2.1%。これを見る限りにおいて、日銀が正常化をためらう理由はない。
雇用についてみてみると従業員の数が「過剰」か「不足」かを尋ねて指数化したものがある。これはマイナスが大きくなるほど人手不足だと感じる企業が多いことを示すが、この数値が大企業の非製造業でマイナス36と前回からマイナス幅が2ポイント拡大し、1992年2月以来の水準となっていた。
中小企業の非製造業をみるとマイナス44と、マイナス幅が前回より1ポイント拡大。これは、コロナ禍前の2019年9月と並び、人手不足感が統計開始以来、最も高い水準となっていたのである(2日付NHKニュース)。
コロナ禍後の経済活動の正常化が進み、インバウンドが増えたことで、宿泊や飲食などサービス分野の需要が高まっている。中小企業の間で働き手の確保が深刻な課題となってきている。
2024年には働き方改革関連法が自動車運転業務に適用されることでドライバー不足問題も指摘されているが、すでに人手不足の動きが強まりつつある。この動きがどのように賃金に反映されるかとなる。
日銀はそれを来年の春闘などを確認してというが、ここにきての消費者物価指数の高止まりをみても賃上げの動きも進みつつある。これらからみても、すでに日銀はいわゆるビハインド・ザ・カーブ(後手に回る)に陥っているともいえよう。