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ツイッター社の英国幹部、ネット上の嫌がらせ発言事件で謝罪

小林恭子ジャーナリスト
ツイッター英国の幹部は3日、謝罪した。(BBCのウェブサイトより)

英中央銀行が、作家ジェーン・オースティン(「高慢と偏見」、「エマ」など)を10ポンド紙幣の裏に印刷すると発表したことをきっかけに、女性ジャーナリストや政治家のツイッターに「殺すぞ」、「レイプするぞ」などの書き込みが殺到する事件が発生した。3日、ツイッター社の英国幹部が、悪質な書き込みを受けた女性たちに謝罪。一連の書き込みは「許されない」、今後、こうした行為をなくするようさらに努力する、と述べた。事件発生から1週間以上が過ぎており、「対応が遅すぎた」という声もある。

中央銀行が、10ポンド紙幣の裏に、現在描かれているチャールズ・ダーウィンの代わりに、女性の作家オースティン(1775-1817年)を印刷すると発表したのは先月24日のことだ。

2016年からは、現在5ポンド紙幣の裏に登場する社会改革者のエリザベス・フライの代わりにウィンストン・チャーチル元首相が描かれることになっている。そうなると、エリザベス女王以外では、女性の姿が英国の紙幣から消えてしまうー。この点を懸念した英国内の女性団体は、女性が紙幣に印刷されるよう、キャンペーン運動を始めた。

運動の中心となったのが、ジャーナリストのキャロライン・クリアドペレス氏であった。女性を選出するようにというオンラインの署名も3万5000人分が集まった。2017年以降に使われる10ポンド紙幣の裏に描かれる人物としてオースティンが選ばれたことで、クリアドペレス氏の努力が実った格好となった。

ところが、中銀の発表直後から、「殺すぞ」、「レイプするぞ」、「爆弾をしかけてやる」などの脅しのつぶやきが、クリアドペレス氏のツイッターに押し寄せた。1日に数十回の頻度で発生したという。

野党労働党の女性議員ステラ・クリージ氏がクリアドペレス氏を擁護する意見を表明すると、今度は彼女のツイッターに同様の悪質なつぶやきが押し寄せた。その後の数日で、ガーディアン紙、インディペンデント紙、米タイム誌の欧州特派員など、複数の女性ジャーナリストのツイッターにも「爆弾をしかけるぞ」などのつぶやきが出るようになった。

女性たちが警察に通報し、これまでに数人の逮捕者が出ている。

英国では、一連のツイッター事件は連日、テレビや新聞で報道された。

しかし、ツイッター側の反応は必ずしも早くはなかった。被害にあった女性たちは脅しのつぶやきを止めるための対応をツイッター側に依頼したが、返事がないままに数日が過ぎた。

筆者は、英民放チャンネル4の7月30日放送分で、ツイッター米本社の「信頼と安全性」部門の責任者デル・ハービー氏の返答を視聴した。同社は悪質なつぶやきが発生しないよう、ベストを尽くしていると説明していたが、何故英国で大騒ぎになるのか分からないような様子を見せ、米英の温度差を感じた。

BBCの報道によると、「悪用を報告する」というボタンをツイッターの機能に入れるべきだという署名が、2日時点で約12万5000人分、集まったという。

ツイッター英国のゼネラル・マネージャーとなるトニー・ウオング氏が、ツイッターの自分のアカウントから、虐待を受けた女性たちに謝罪したのは3日だった。

「女性たちが経験した虐待はまったく受け入れられないものだ。リアルの世界で受け入れられないし、ツイッターでも受け入れられない」

同じく3日、ツイッター英国は今回の事件や利用者からのフィードバックによって、嫌がらせについての方針をより明確にしたとブログ内で述べた。

「悪用を報告する」というボタンはIOSを使う機器ではすでに使えるようになっており、9月からはそれ以外の機器でも使えるようにするという。

ジャーナリスト

英国を中心に欧州各国の社会・経済・政治事情を執筆。最新刊『なぜBBCだけが伝えられるのか 民意、戦争、王室からジャニーズまで』(光文社新書)、既刊中公新書ラクレ『英国公文書の世界史 -一次資料の宝石箱』。本連載「英国メディアを読み解く」(「英国ニュースダイジェスト」)、「欧州事情」(「メディア展望」)、「最新メディア事情」(「GALAC])ほか多数。著書『フィナンシャル・タイムズの実力』(洋泉社)、『英国メディア史』(中央公論新社)、『日本人が知らないウィキリークス』(洋泉社)、共訳書『チャーチル・ファクター』(プレジデント社)。

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