オジュウチョウサン平地2戦目も完勝!次走は有馬記念など広がる選択肢
オジュウチョウサンを勝利へ導いた武豊騎手「しっかり脚をつかってくれた」
11月3日、障害王者のオジュウチョウサン(牡7歳、美浦・和田正一郎厩舎)が南武特別(1000万下)を快勝した。7月の開成山特別に続き、平地を2連勝。障害から通算11連勝を果たした。
オジュウチョウサンの単勝オッズは馬券を売り出してからパドックの直前まで1倍台の人気を集めていたが、パドックで周回していたあたりから2倍台へ落ちていった。最終的には1番人気はこの条件で2着を続けるブラックプラチナム(牡5、美浦・栗田博厩舎)、2番人気は三冠馬同士の配合であるディープインパクトとアパパネの仔・ジナンボー(牡3、美浦・堀宣行厩舎)となり、オジュウチョウサンは3.1倍の3番人気となっていた。
勝利に導いた武豊騎手はレース後「並ばれてからも、しっかり脚を使ってくれた」と笑顔をみせた。
「人気のある馬だし、今日も(前走の開成山特別に続いて)お客さんの歓声も凄かった。勝ちたいと思っていました。折り合いもしっかりしていましたよ。タイムは一線級との差は感じます。ただ、まだ平地に戻って2戦目と考えると伸びしろはあると思います。」(武豊騎手)
道中、他馬がペースを速めても我関せず。冷静なレース運びで平地2勝目をあげる
南武特別のスタート地点は観客の目の前であるホームストレッチだ。いったんゴール前をとおって、そこからコースを1周する。
オジュウチョウサンはスタートもよく、2番手でレースを進めていた。向こう正面の中間まではゆったりとした流れだったが、ここからジナンボーが上がっていった。オジュウチョウサンは3番手へ。そして、ここから一気にペースが上がる。ジナンボーが先頭をいくグリントオブライトに並びかけ、2頭でやりあう展開になったのだ。だが、武豊騎手とオジュウチョウサンはこれには我関せずと上手に折り合い、先頭まで4馬身ほどあった差を徐々に自分のペースで詰めていった。
直線を向いて残り400m。最後の上り坂をあがったあたりで武豊騎手が左ムチを入れると、オジュウチョウサンはすかさず反応した。送り出す脚のアクションも大きくなり、首を下げてチーターさながらの前傾姿勢で内ラチ沿いに逃げるグリントオブライトに並びかけ、まもなく堂々先頭に躍り出た。
そして、ここからが強かった。最終的に1番人気となったブラックプラチナムが外から追いかけて並びかけようとするのだが、ブラックプラチナムの鼻面がオジュウチョウサンのゼッケンあたりまで迫ると、そこからオジュウチョウサンは抜かさせないのだ。オジュウチョウサンとブラックプラチナムが半馬身差で並ぶように走りながらゴールを駆け抜けた。
ブラックプラチナムに騎乗したミルコ・デムーロ騎手はレース後、「並んだらかわせると思ったけど、最後まで向こうが止まらなかった」とオジュウチョウサンの渋太さと完敗を認めていた。
王者の挑戦を称える長い拍手
JRAの競馬場の中で最大集客数を誇る東京競馬場だけに、この日だけが目立って人が多いという印象はなかった。しかしながら、土曜のわりには混んでいたし、何より南武特別の表彰式では1000万下特別とは思えないほどたくさんの人が集まっていた。
そして、オジュウチョウサンが先頭に立ったあたりからゴールを過ぎるまでのしばらくのあいだ、長い長い拍手が沸きおこった。あえて十二分な実績のある障害ではなく、平地へチャレンジする王者の挑戦を称えていた。
競馬は野球やサッカーのような対立する2つの力が戦う競技ではない。参加する人がそれぞれの馬券を買ったり応援したりしている。それゆえ、絶対的な一番人気馬でないかぎり場内の一体感など生まれないのだ。
しかも、1000万下特別という中堅クラスの戦いだ。にもかかわらず、たくさんの人々が熱い拍手を1頭の馬の勝利へ贈っていた。
こんな光景は普段、見たことがない。たぶん、これからも見るチャンスはなかなかないだろう。
オジュウチョウサンがさらに上のクラスで通用する可能性は?
勝ちタイムは2分25秒0。このところの東京競馬はいわゆる高速馬場で好タイムを連発しているように時計の速い馬場だったとはいえ、昨年の同レースより勝ちタイムは5秒速かった。ちなみに昨年の勝ち馬であるホウオウドリーム(牡4、栗東・矢作芳人厩舎)はその後、もうひとつクラスが上の準オープン(1600万下)を勝っている。
さらにいえば、ステイヤーズS(GII)やダイヤモンドS(GIII)など長距離重賞を4勝しているアルバート(牡7、美浦・堀宣行厩舎)は1000万下を同コース(東京芝2400m)で勝っているがそのときのタイムは2分25秒1だった。
このタイム差から考えて、オジュウチョウサンは武豊騎手の言う「一線級」については未知数だが、重賞クラスでは十分通用する可能性があると筆者は考える。
次走はジャパンカップ?それとも有馬記念?広がる選択肢
レース後、和田正一郎調教師は安堵の表情をみせた。
「無事走って勝てたということで良かったと思います。ひじょうにスムーズで何も言うことがないレースでした。能力も発揮できたと思いますし、課題も特に見当たりません。」
気になるのは、有馬記念へ向かうまでのステップレース。12月23日に行われる有馬記念(GI、中山芝2500m)までのあいだには長距離重賞は11月25日のジャパンカップ(GI、東京芝2500m)と12月1日のステイヤーズS(GII、中山芝3600m)がある。
これについては、「このあとは有馬記念を本線にあとはオーナー、ジョッキーと相談し、馬の状態をみて決めたいと思います。有馬記念へ直行とは決めていません」と慎重に言葉を選んでいた。
いずれにせよ、長山オーナーの掲げた有馬記念への参戦への壁はひとつひとつ、順調にクリアしている。
次なる壁はファン投票で参戦を希望する馬(第1回特別登録を行った馬)の上位10頭に入ることなのだが、これは南武特別での人気ぶりからもまず問題ないだろう。
クラスが上がるにつれて、馬への体の負担も増える。何よりも、未知の世界へ挑み続けるオジュウチョウサンが無事にこのまま順調に駒を進み続けることを願う。