日雇い、短期、そして自営業…雇用期間や形態別の平均世帯所得をさぐる
・全世帯の平均所得は560.2万円だが、1か月以上1年未満契約の雇用者は452.4万円、日々・1か月未満では321.9万円(2016年)。
・所得動向を見ると、常雇用世帯や自営業は前世紀末あたりまでは順調な伸びを示していたが、それ以降は漸減。
・常雇用でない雇用者は所得額の大きな減少は見られない。
雇用契約期間による所得の違いは、どの程度生じているのだろうか。その実情を厚生労働省の定点観測調査「国民生活基礎調査」(※)の公開値から確認する。
次に示すのは、直近2016年分(今調査最新分は2017年に実施されているため、1年を通した所得=年収が確認できるのは2016年分となる)における、雇用期間や形態別の平均世帯所得。全世帯とは今調査の調査対象母集団全世帯の平均。雇用者世帯は給料や賃金を受けている世帯(自営業者や年金生活者のみの世帯は該当しない)。常雇用者世帯は契約期間の定めが無いか一年以上の雇用者世帯となる。
全世帯が560.2万円なのに対し、雇用者世帯はそれよりも高く、682.5万円となる。これは全世帯では年金生活者や仕送りによる生活者も含まれるため。特に昨今では年金を主な所得とする高齢者世帯が増加していることから、全世帯平均値は減少する傾向にある。
また雇用期間別で見ると、常雇用者世帯が706.9万円なのに対し、1か月以上1年未満契約は452.4万円、日々・1か月未満では321.9万円と明らかな差異が生じる。これは短期間契約による雇用が1年を通して行われている=就業できる=所得が発生するわけではないことを意味する。
自営業はその内容によって所得の額もケースバイケースとなることは容易に想像できるが、少なくとも今調査の限りでは、平均値として算出されているのは632.0万円。全世帯よりは多いが、常雇用者世帯よりは少ない。
これをデータが取得可能な1985年分以降について、その変化を見たのが次のグラフ。
今回精査した区分においては、大よそ所得の順位に違いは無い。日々・1か月未満契約雇用者世帯がもっとも低く、次いで1か月以上1年未満契約、自営業者、そして常雇用者世帯の順。雇用者世帯の値が常雇用者世帯に近いのは、世帯数において日々・1か月未満契約雇用者世帯や1か月以上1年未満契約が少なく、常雇用者世帯が多分を占めるため。
他方、経年変化で見ると、常雇用世帯や自営業は前世紀末あたりまでは順調な伸びを示していたが、それ以降は漸減。常雇用者は正規・非正規ともに該当するため、非正規雇用者の増加が平均額を押し下げたと考えれば道理は通る。また、ここ数年でこれまでの下げ基調から転じるような動きも確認できる。
常雇用でない雇用者は意外にも所得額の減少は見られない。やや上下に振れている面もあるが、むしろ漸増しているとも受け止められる。とはいえ、常雇用者世帯と比べれば額面的には低いことに違いは無い。生活の上での苦境さは否定できまい。
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※国民生活基礎調査
全国の世帯および世帯主を対象とし、各調査票の内容に適した対象を層化無作為抽出方式で選び、2017年6月1日に世帯票・所得票を配ることで行われたもので、本人記述により後日調査員によって回収され、集計されている(一部は密封回収)。回収の上集計が可能なデータは世帯票が4万6399世帯分、所得票が6541世帯分。今調査は3年おきに大規模調査、それ以外は簡易調査が行われている。今回年(2017年分)は簡易調査に該当する年であり、世帯票・所得票のみの調査が実施されている。
また1995年分は阪神・淡路大震災の影響で兵庫県の分、2011年分は東日本大震災の影響で岩手県・宮城県・福島県(被災三県)の分、2012年は福島県の分、2016年は熊本地震の影響で熊本県の分はデータが取得されておらず、当然各種結果にも反映されていない。
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