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企業にメリットがない? ジリ貧な“風化を防ぐ”復興支援活動

安藤光展サステナビリティ・コンサルタント
Yahoo!の復興支援「Search for 3.11」

■東日本大震災から6年で何ができた?

企業サイドからはほとんど復興支援活動の話を聞かなくなりました。

直近で2016年4月に起きた熊本地震もあり、これまで復興支援と言えば東方地域一色であったものの、この1年はその支援エネルギーが分散していたようにも感じています。企業としては、見えないものやいつくるかわかならないものに予算がつけにくい現状もあります。今後は、企業はどのように被災地に関わればいいのでしょうか。

本記事では東日本大震災をCSR(企業の社会的責任)という視点から、調査・統計などの紹介、支援事例などを含めて紹介します。

■復興の現状

◯復興の現場

復興庁「東日本大震災からの復興に向けた道のりと見通し」によると、避難者数は「約12.3万人」、住宅は「高台移転69%・災害公営住宅83%」(※1)、産業では「営農再開可能面積:83%」「水産加工施設の再開:88%」などとなっています。被災者数は発生当時より4分の1以下になってはいますが、それでも相当数の人がいます。インフラの復旧を含むハード面の復興に関してはこの6年でそれなりに進んでいるようです。

◯意識調査

Yahoo!意識調査『東日本大震災から6年。震災前を100とした場合、被災地の復興は何%進んだと思いますか?』では、1位は「3割」(28.4%)で、2位は「2割」(15.4%)でした。(※2)

アンケート回答者がどこにお住まいなのか、などで大きく数字が変わる可能性がありますが、一つの指標とすると、なかなか興味深い点があると言えるかもしれません。「報道が減っていて被災者の現状が見えない」という趣旨のコメントもあり、被災地外の人には進捗がわからないのかもしれません。

◯企業寄付対応

経団連「2015年度 社会貢献活動実績調査結果」(2016年10月発表)によれば、災害被災地支援支出額は「76億円」。このうち、東日本大震災関連支出は「63億円」(83%)で大半を占めた、とのこと。支出は2012年以降年々減り続けており、今後も同様の傾向があるでしょう。復興の現状に関係なく、企業としても億円単位の寄付はもう難しいし、寄付以外の被災地の関わりをどこまで盛り上げられるかがポイントとなるのかもしれません。

※1:避難者数は2月13日時点、住宅は16年度末見込み。

※2:3月10日現在の数値。

■経営者として復興支援活動

では実際、経営者は復興支援に関してどう感じているのか。支援事例として、先日ツイートされたスタートトゥデイ・前澤氏のものを引用させていただきます。

ちなみに前提情報としてスタートトゥデイ社は「コーポレートガバナンス報告書」(2016年6月版)で、「CSR活動等の実施」として東日本大震災の継続的な復興支援活動や、熊本地震の支援(約4,700万円もの寄付!)など、積極的な“儲からないCSR活動”の実施と情報開示を行っています。素晴らしい。

上場企業の社長が記事広告のインタビューならまだしも、ソーシャルメディアでCSRについてコメントをすることが皆無なのでこのツイートは驚きました。「CSR=慈善活動=コスト」と定義してツイートされたのでしょう。国際的には「慈善事業=CSR」ではなく、CSRは「ステークホルダー(利害関係者)に関わるすべての事業活動での配慮」と定義されています。つまり、慈善事業はCSRのごくごく一部の側面でしかないということです。

企業の公式な開示内容と、社長の発言が異なるように見えるのは“たまたま”だったのかもしれませんが、「CSRとは儲けることである」とは言わず、良いことしているのだから斜に構えなければもっと評価が上がるのに、もったいないなと思いました。良い悪いではなく、このような趣旨の発言をされる若い上場企業経営者の方は意外と多いのが現状です。企業はNPOではないので当然といえば当然の考え方なので、経営者がコミットメントしない限り、企業の関わりが減っていくのでしょう。

■キャンペーン企画

昨年まで集中復興期間(5年間)ということもあり、様々な企業が自社のリソースを活かした広告含むキャンペーンなどを行っていましたが、今年はほとんど見つけることができません。つまりメディアも人も企業も復興支援に関して大きなコミットメントができなっている、ということもあるのかもしれません。

数少ない事例でいえば、Yahoo!で恐縮ですが(ヤフー社のステマではありません)「Search for 3.11」という寄付企画をしており、今日が対象のキャンペーンのようなので、ぜひチャレンジしてみてください。

今年は3月11日が土曜日ということで、メディア以外の企業は当日の動きがあまりないという可能性もあります。現実的には支援ブームの5年が終わり、それこそ官公庁が企業にメリットのある形で“特別・ふるさと納税企業版”などをやればいいのかもしれませんが、セクターをまたいだ企画を大きな組織がやらないと、来年は今年以上に寂しい結果になりそうです。

もちろん、継続した支援活動をしている企業もありますが事例は数えるほど。体力がある企業は継続できますが、すべての企業がそうではありません。正直ジリ貧な“風化を防ぐ”ための企業活動ですが、東北の外の人たちを巻き込むさらなる施策が求められています。現在の復興の詳細については「復興庁|復興の現状と取り組み」でご確認ください。

サステナビリティ・コンサルタント

サステナビリティ経営の専門家。一般社団法人サステナビリティコミュニケーション協会・代表理事。著書は『未来ビジネス図解 SX&SDGs』(エムディエヌ)、『創発型責任経営』(日本経済新聞出版)ほか多数。「日本のサステナビリティをアップデートする」をミッションとし、上場企業を中心にサステナビリティ経営支援を行う。2009年よりブログ『サステナビリティのその先へ』運営。1981年長野県中野市生まれ。

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