任天堂、周回遅れの『スーパーマリオラン』ビジネスモデル
KNNポール神田です!
任天堂の収益を試算してみると…
配信開始から10日間が過ぎた…。すでに当初のダウンロードは落ちついてきたようだ。
4000万ダウンロードのうち4%の有料割合で160万×1200円=19.2億円
AppleのAppStore手数料30%(5.7億円)をひくと13.5億円となる。つまり1000万ダウンロードあたり3億3750万円となる。1億ダウンロードであれば、33億3750万円の利益だ。今後、Androidや複数リリースして、10億ダウンロードされたとしても売り上げは330億円だ。
しかも、共同開発とされるDeNAの取り分をここから差っ引かなくてはならない。
かつて任天堂は2兆円にせまる売上だったが現在は5044億円
2008年(今から8年前)は「Wii」と「ニンテンドーDS」のヒットで売上2兆円にせまっていた。
かつての2008年の任天堂と比較すると、売上は1/4にシュリンクしている。そこでスマホ参入で全世界で10億ダウンロードを達成しても330億円の売り上げにしかならない。しかも、1200円という価格設定もゲーム買い切りアプリとしては異例な高額商品だ。そう、任天堂のゲームソフトとしては破格の安値だが、スマホアプリの価格としてはとびきり高価格な価格設定だ。もちろん、キャンペーンなどで半額セールなどという手法も考えられるがそれだけ売上数は伸びても半額では売り上げにはつながらない。
任天堂はもっと早期にスマホ投資しておくべきだった
惜しむらくは、8年もの間、任天堂は、なぜ?スマホゲームに参入しなかったかである。2016年3月の「miitomo」からだ。
コンソールゲームメーカーのスマホ参入は消極的だった…。
任天堂スマホ参入元年!?ポケンモンGO・Miitomo・どうぶつの森・ファイアーエンブレムでスタート猛ダッシュ!https://hasigo.co.jp/blog/160711-2/
任天堂がスマートフォンに参入しなかった理由が任天堂の黒歴史にあった…。
「異業種には絶対手を出すな」という任天堂の呪縛
「異業種に参入しない」という山内 溥との約束。そして「スマートフォンという技術」がまだ枯れていなかったことが任天堂のスマートフォン参入に8年間もブレーキを踏み続けさせたのではないだろうか?
2007年6月29日、iPhoneが米国で発売となった…。スマートフォン市場が誕生した瞬間だ。今年で10年目を迎える。しかし、この10年の進化はすべてのPCの進化を凌駕するものだ。ゲームコンソールに向かわなくてもゲームができる。任天堂にとっても、スマートフォンは異業種ではなかったはずだ。モバイルにおけるプラットフォーマーになれるチャンスでもあった。
もしも、任天堂がMVNOモデルでスマホ事業に参入していたら…
ここから先は「たられば物語」だが、任天堂が、「virgin mobile」や「ディズニーモバイル」のようにMVNO回線で通信キャリアとしてスマホ事業に参入していたらどうだっただろうか?おそらく大失敗していたとしても、何もやらずに売り上げ1/4になることはなかったのではないだろうか?少なくともモバイル通信での経験値はあがっていたはずだ。
月額課金モデルでのスマホ用のゲームアプリの開発と提供。もちろん、携帯ゲーム+データ通信機能+音声通信のビジネスモデルも可能だったはずだ。シェアを伸ばしていれば、Appleに手数料を払うこともなかっただろうし、スマホ開発部隊を自ら創ることもできただろう。「ニンテンドーの生態系」を築くプラットフォームビジネスでさえ自前で展開できたはずだ。
任天堂は、自ら設計したコンソールデバイスの上に生態系ビジネスを築くのに慣れすぎた弊害があったのかもしれない。
『スーパーマリオラン』は、周回遅れでスマホ事業に参入しただけではなく、単なる一ゲームサプライヤーとしての任天堂の立場でしかないことが一番問題なのだ。