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レンジャーズOB、侍ジャパン・建山コーチに訊く 韓国のエースのメジャー昇格可能性は?

室井昌也韓国プロ野球の伝え手/ストライク・ゾーン代表/KBO取材記者
ヤン・ヒョンジョン(写真:ロイター/アフロ)

フリーエージェント(FA)権を行使しメジャー進出を目指すも、テキサス・レンジャーズとのマイナー契約に至った韓国の左のエース、ヤン・ヒョンジョン(33、前KIA)。同投手は現在、アメリカ・テキサス州で行われている、レンジャーズの春季キャンプ(スプリングトレーニング)に招待参加している。

ヤン・ヒョンジョンは今後、メジャーのマウンドに立つことができるか。2011年から2シーズン、レンジャーズでメジャーリーガーとしてプレーした、野球日本代表投手コーチの建山義紀氏(45)にその可能性について訊いた。

2012年、レンジャーズ在籍当時の建山氏
2012年、レンジャーズ在籍当時の建山氏写真:ロイター/アフロ

建山氏はメジャーキャンプに参加する選手について、以下のように説明した。同氏は渡米3年目の2013年、マイナー契約でキャンプに招待選手として参加したこともある。

「マイナー契約でキャンプに参加する選手はたくさんいます。その中でメジャーで実績があるも、その後手術をしてメジャー契約に至らなかった選手は、手術前のようなパフォーマンスに戻ればメジャー契約に切り替わることもあります」

「それ以外の選手がメジャー契約を得るのはすごく難しいです。ただレンジャーズは『優勝をいよいよ狙うぞ』という段階のチームではないので、しっかりとした布陣を敷くチームに比べて、チャンスはあると思います」

2012年キャンプでの建山氏とダルビッシュ有投手(中央)、上原浩治氏(右)
2012年キャンプでの建山氏とダルビッシュ有投手(中央)、上原浩治氏(右)写真:ロイター/アフロ

ではヤン・ヒョンジョンはどうか。

「韓国での活躍通りの力を出せることが前提になりますけど、メジャーでやれる可能性は低くないと思います。150キロ近いストレートと、真っ直ぐの軌道に乗ったチェンジアップは、バッターにとって真っ直ぐと錯覚を起こしやすい有効な球種です。メジャーのボールとマウンドの違いにアジャストできれば、非常に面白いと思います」

建山氏は2019年9月、侍ジャパン・稲葉篤紀監督、井端弘和コーチと共に韓国KBOリーグを視察。公式戦で先発勝利を挙げたヤン・ヒョンジョンの投球をチェックした。その2か月後のプレミア12、日韓戦となった決勝戦で先発したヤン・ヒョンジョンの姿も見ている。

2019年9月に韓国視察を行った侍ジャパン稲葉篤紀監督、建山コーチ、井端弘和コーチ(左から。写真:スポーツ朝鮮)
2019年9月に韓国視察を行った侍ジャパン稲葉篤紀監督、建山コーチ、井端弘和コーチ(左から。写真:スポーツ朝鮮)

ただ建山氏はヤン・ヒョンジョンの早い時期のメジャー昇格は難しいと見ている。

「レンジャーズは韓国での実績のあるヤン・ヒョンジョンに、期待感を持っていると思います。ただオープン戦で先発する機会はそんなに巡ってこないかもしれません」

「しかし中継ぎでも結果を残していけば、仮に開幕で3Aスタートでも、3Aなら先発ローテーションで回してもらえると思います。そこでしっかり活躍していれば、スポットでメジャーの先発を託されることもあるでしょう。キャンプ中にメジャー契約を勝ち取ろうとしない方がいいと思います」

建山氏は自身が2013年のレンジャーズのキャンプに参加した時にいた、ある左腕投手を例に挙げた。

「ニール・コッツという手術明けの投手がいました。開幕は3Aスタートでしたが5月にメジャーに昇格してからは、シーズン終了まで残りました。レンジャーズは選手にチャンスを与える球団なので、ヤン・ヒョンジョンもあせらずにそのような形を狙った方がいいでしょう」

ニール・コッツはその年58試合に登板し、8勝3敗11ホールド、防御率1.11でリリーフ投手として役割を果たした。

2月24日(日本時間)にレンジャーズのキャンプに加わったヤン・ヒョンジョンは、これまで2度、ブルペンでピッチングを行ったと現地メディアは伝えている。

3日のオープン戦でレンジャーズは、メジャー契約の有原航平(28、前日本ハム)がシカゴ・ホワイトソックス戦に登板。2回を投げて5安打、3失点だった。マイナー契約のヤン・ヒョンジョンは今後のオープン戦での投球内容がメジャー行きへのアピールとなる。

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(本記事は筆者が韓国・スポーツ朝鮮に執筆したコラムを日本語化し、再編集したものです)

韓国プロ野球の伝え手/ストライク・ゾーン代表/KBO取材記者

2002年から韓国プロ野球の取材を行う「韓国プロ野球の伝え手」。編著書『韓国プロ野球観戦ガイド&選手名鑑』(韓国野球委員会、韓国プロ野球選手協会承認)を04年から毎年発行し、取材成果や韓国球界とのつながりは日本の各球団や放送局でも反映されている。その活動範囲は番組出演、コーディネートと多岐に渡る。スポニチアネックスで連載、韓国では06年からスポーツ朝鮮で韓国語コラムを連載。ラジオ「室井昌也 ボクとあなたの好奇心」(FM那覇)出演中。新刊「沖縄のスーパー お買い物ガイドブック」。72年東京生まれ、日本大学芸術学部演劇学科中退。ストライク・ゾーン代表。KBOリーグ取材記者(スポーツ朝鮮所属)。

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