【熊本地震から4年】新型コロナで被災者の見守り支援難しく 新たな「頼れる」仕組み構築が課題
熊本地震から明日で4年。仮設住宅から災害公営住宅(復興住宅)への転居が進み、被災者の生活再建は着実に進んでいる。一方で、仮設住宅を退去した後に、社会から孤立する世帯が出てきている。新型コロナウイルスの感染拡大により、支援が難しい状況も生まれており、支援団体は頭を抱えている。
PTSDやうつ病の兆候が見られる人も
熊本県の発表によると、プレハブなどの建設型仮設住宅やみなし仮設で「仮住まい」を送る人の数は、3月31日時点で3122人(1296世帯)。自宅の再建や災害公営住宅への入居が進んだことで、ピーク時(2017年月5末時点、4万7800人)の約15分の1まで減った。3122人の内訳は、建設型仮設が1392人(592世帯)、みなし仮設1689人(687世帯)、公営住宅など41人(17世帯)となっている。
数字を見ると、被災者の生活再建は確実に進んでいる。しかし、「生活再建を果たした」として退去したものの、継続的な見守りが必要な世帯もあると支援団体は考えている。
みなし仮設から退去した世帯などを対象に、見守り活動を続ける一般社団法人「minori」。同団体は、益城町からの委託を受けて、(同町で罹災証明書を取得して)県内のみなし仮設入居者やみなし仮設から退去した人を対象に、訪問などによる見守り活動を行ってきた。今年3月に町からの受託は終了したが、その後も独自にボランティアとして見守りを続けている。現在、同団体が見守りを続けているのは、本人の了承があった約50世帯。心的外傷後ストレス障害(PTSD)やうつ病の兆候がみられる人も存在するという。
突然連絡がつかなくなった
変化があったのは、およそ2週間前のことだった。ある見守り対象世帯に電話するも、呼び出し音が鳴り続けるばかり。時間をかけて丁寧に関係を構築し、かつては「落ち着いたら一緒に遊びに行けたらいいですね」などとスタッフと話ができるまでになっていた世帯。しかし、新型コロナで外出しづらくなった頃から、連絡がつきにくくなった。
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、接触回数を減らすことが国民に求められている。同団体では、今後どのように見守りを続けていくべきか、数週間前から検討を開始。新型コロナの感染が拡大する前のことだが、別の見守り対象世帯から「怖いのでしばらく訪問しないで」と連絡があったからだ。新型コロナへの不安を口にする見守り対象世帯は増加の一途をたどっており、団体は見守り方法の見直しを迫られている。
「不安を感じるのは仕方がないことで、また接触回数を減らすことについては私たち含め国民全員が協力するのは当然のこと。一方で、誰にも頼ることができず孤立をより深める世帯が出ることも懸念している。訪問以外でどのように見守っていくべきか。電話だけでは難しい面もあり、新しい方法について早急に考えなければならない」。同団体の高木聡史代表理事はこう危機感を募らせる。
熊本地震も新型コロナも同じ「災害」
高木代表理事によると、気分が落ちることは、複合的な要因で起こるという。孤立状態はその一つであり、新型コロナへの不安もその一つだ。今後は、新型コロナによる不況も要因として顕在化することが予想される。社会全体が新型コロナへの対応で余裕がなくなっている中、全国に存在する被災地で孤立していた世帯は、誰かを頼ったり声を上げたりをしづらくなるという。そして、外とのつながりがなくなることで、気分がより落ち込んでいくという負の連鎖に陥りやすい。したがって、いつでも相談できるような、外とのつながりが持てる仕組みを急いで構築する必要があると高木代表理事は考えている。
まだ熊本地震からの復興は途中だったところ、「新型コロナ」という別の災害が重なった。現在はまさに世界中が「災害下」にあるといえる。熊本地震の被災地では、今後より孤立を深める世帯や、新たに見守り支援が必要な世帯が出ることが想像される。同団体では外とのつながりがいつでも持て、孤立を防げる状態を「門戸を開いた状態」と表現している。接触が制限される中、いかにして「門戸を開いた状態」を作るのか。高木代表理事の模索が続く。