2023年4月にウクライナ軍の防空部隊が地対空ミサイル（surface-to-air missile：SAM）でロシア軍の監視・偵察ドローン「Orlan-10」を迎撃している動画を公開していた。

2022年2月にロシア軍がウクライナに侵攻。ロシア軍によるウクライナへの攻撃やウクライナ軍によるロシア軍侵攻阻止のために、攻撃用の軍事ドローンが多く活用されている。

ロシア軍は主にロシア製の監視・偵察ドローン「Orlan-10」で上空からウクライナの監視・偵察を行っている。たまに「Eleron-3」でも偵察を行っているが、ほとんどが「Orlan-10」か中国製の小型民生品ドローンで監視・偵察を行っている。

ウクライナ軍では撃破したロシア軍のドローンや戦車、輸送トラックなどをSNSで公開して世界中にアピールしている。ロシア軍がウクライナに軍事侵攻してから数か月は、ロシア軍の監視ドローン「Orlan-10」の破壊した写真も多くSNSで公開していた。だが「Orlan-10」以外の監視・偵察ドローンが使用されて、それを迎撃して破壊したものはあまり見かけない。

たまにカメラの精度が高い「Orlan-30」、「ZALA 421-16Е2」といったレアなドローンが迎撃されて写真や動画が公開されることもあるが、ほとんどが監視ドローンなら「Orlan-10」、攻撃ドローンならイラン製軍事ドローンの「シャハド136」である。

最近ではあまり「Orlan-10」を迎撃したり破壊したりしている動画は見かけなかったが、久しぶりに公開されていた。2022年2月にロシア軍がウクライナに侵攻してきてから「Orlan-10」を継続的に使用してきた。そしてウクライナ軍やウクライナ兵らが頻繁に「Orlan-10」の写真や迎撃する動画を公開していた。そのため「Orlan-10」を迎撃したり破壊した同機の写真や動画が少しの期間でも公開されないと、「Orlan-10」が枯渇してしまったのではないかという憶測や見解が欧米の戦争研究のシンクタンクなどを中心に流れる。「Orlan-10」が枯渇したのではないかという見解は過去にも何回も出ている。だが、このような動画が公開されるところを見ると、「Orlan-10」の在庫はまだあるようだ。

▼ウクライナ軍防空部隊がロシア軍の監視ドローン「Orlan-10」を迎撃（2023年4月）

ドローンは攻撃用も監視用も探知したらすぐに迎撃して破壊してしまうか、機能停止させる必要がある。上空のドローンを迎撃するのは、電波を妨害（ジャミング）してドローンの機能を停止させるいわゆる"ソフトキル（soft kill）"と、対空機関砲のように上空のドローンを爆破させる、いわゆる"ハードキル（hard kill）"がある。今回の「Orlan-10」も地対空ミサイルなので、明らかにハードキルで破壊されている。

このような監視・偵察ドローンは発見したら、すぐに迎撃しなくてはならない。偵察ドローンは攻撃をしてこないから迎撃しなくても良いということは絶対にない。

「Orlan-10」や民生品ドローンのような安価な偵察ドローンに対してこのようなミサイルシステムで迎撃して破壊するのはコストパフォーマンスが低い。だが偵察ドローンに自軍の居場所を察知されてしまったら、その場所にめがけて大量のミサイルを撃ち込まれてしまい大きな被害を招きかねないので、偵察ドローンを検知したら、すぐに迎撃して爆破したり機能停止させたりする必要がある。回収されて再利用されないためにもドローンは上空で徹底的に破壊しておいた方が効果的である。ロシア軍に対しての迎撃能力誇示の抑止にもなる。

▼「Orlan-10」

▼最近では2023年2月に「Orlan-10」が迎撃されていた。

▼2023年1月に迎撃された「Orlan-10」