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ホロコーストの始まりだった「水晶の夜」から83年 ユダヤ団体が3Dで破壊されたシナゴーグを再現

佐藤仁学術研究員・著述家
3Dで再現した破壊されたシナゴーグ(世界ユダヤ人会議提供)

1938年11月9日はドイツ全土で「クリスタルナハト(水晶の夜)」と呼ばれた日で、ユダヤ人に対する暴力、ユダヤ人店舗の略奪、破壊が行われた。ユダヤ寺院のシナゴーグも襲撃、放火された。店舗やシナゴーグの破壊されたガラスが夜の月明かりに照らされて「水晶」のようだったので「水晶の夜(クリスタルナハト)」と呼ばれている。当時、多くのドイツ人がユダヤ人迫害に加担、もしくは見て見ぬふりをしていた。ドイツとオーストリアで約3万人のユダヤ人が逮捕された。

その後、第2次大戦での欧州全体でのナチスによる約600万人のユダヤ人大量虐殺のホロコーストへと繋がっていった。「水晶の夜」ではドイツとオーストリアの1400のシナゴーグ(ユダヤ教の教会)が襲撃された。そしてユダヤ人の多くが不当に逮捕されて強制収容所に移送されていった。ホロコーストにおけるユダヤ人への組織的暴力の始まりだった。

そして「水晶の夜」から83年を迎えた2021年の11月9日には世界ユダヤ人会議(The World Jewish Congress)は3D技術を活用して、ナチスドイツの親衛隊や暴徒化したドイツ人やオーストリア人によって破壊されたドイツとオーストリアの13のシナゴーグを再現した。ほとんどが19世紀から20世紀初頭にかけて建造された建物。「水晶の夜」とその後のホロコーストでシナゴーグも当時の書物もほとんどが破壊され、多くのユダヤ人が殺害されたり、生き残っていても他界してしまった人が多い。当時の情報が少ないなか、限られた当時の情報や歴史書物を元に再現している。建物だけでなくシナゴーグの内部まで3Dで再現している。3D技術の活用はドイツのダルムシュタット工科大学、オーストリアのウィーン工科大学が協力している。

▼3Dで再現された「水晶の夜」で破壊されたシナゴーグの紹介動画

再現されたシナゴーグ内部(ダルムシュタット工科大学提供)
再現されたシナゴーグ内部(ダルムシュタット工科大学提供)

再現されたシナゴーグ内部(ダルムシュタット工科大学提供)
再現されたシナゴーグ内部(ダルムシュタット工科大学提供)

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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