Yahoo!ニュース

自家用車に自宅、若年層が「これなら買える」と判断できる年収は

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 庭付きの自宅に自家用車。年収いくらならば購入を考えるか

自家用車は年収500万円なら6割強が「検討に値する」

金額的に大きな買い物となる自宅や自家用車。若年層には手が届きにくい存在で、昨今ではさらに敬遠する傾向がある。その理由が年収の減退。それでは若年層は年収がどれほどあれば、購入しても良いと考えているのだろうか。SMBCコンシューマーファイナンスが2015年12月に発表した調査結果「20代の金銭感覚についての意識調査2015」(2015年10月実施、20代男女対象)から確認していく。

まずは自家用車について。世帯年収がいくら位になれば、それらを所有しても良いと考えるようになるだろうか。なお今件における「年収」とは特に設問中で定義がされていないため、世間一般に認識されている通り、手取り(所得)では無くサラリーマンなどなら天引きされている税金や社会保険料を含めた金額を意味するものとする。また、世帯主年収ではなく、世帯年収であることに注意。回答者が世帯持ちだった場合、配偶者の収入も合わせて計上される。

次のグラフは年収の一定区分別の回答率と、累積回答率を併記したもの。例えば年収400万円に達した時点で自家用車を取得しても良いと考える人は、年収500万円の条件でも当然取得したいと考える。400万円より500万円の方が、金銭的余裕は一層あると考えられるからだ。そこで各年収の仕切り別回答率に加え、累積の回答率も併記した次第。例えば自家用車で300万円の累積回答率は36.3%だが、これは「年収を問わず所有したい」の14.8%、「200万円」の5.6%、「300万円」の15.9%をすべて足した結果。

↑ 所有・購入しようと思える世帯年収は(自家用車、円)(2015年)
↑ 所有・購入しようと思える世帯年収は(自家用車、円)(2015年)

個々の区分回答率では300万円位ならとの回答率がもっとも高く15.9%。次いで500万円、年収を問わずに調達したいとの意見が続く。ボリュームゾーンとなる300万円から500万円の値を合わせると大よそ5割の回答率となる。もっとも「世帯年収500万円まで」と評する場合には、それ以下の条件でも所有したいとの累積回答率の考えが必要になるため、65.9%の値が導き出される。つまり、年収500万円が維持確保できれば、20代の2/3は自家用車を所有しようと考える。

それ以降の年収増加による回答率は減り、累積回答率の上昇度合いも緩やかなものとなる。年収条件の上限まで加算すると84.9%、つまり19%ポイントほどの増加にしかつながらない。若年層の自動車所有率を高めたいのなら、関連各方面は該当世代の年収を500万円から600万円程度に引き上げ、安定化させる方策が重要となる。

半数以上が「自宅が欲しいな」と思うのには年収700万円

同様の発想で自宅について尋ねた結果が次のグラフ。自家用車よりも単価が高いこともあり、回答も分散し、かつ累積回答率の上昇度合いも緩やかなものとなっている。なお設問では単に「自宅」とのみあり、一戸建て・分譲マンション、新築・中古の仕切り分けは無い。

↑ 所有・購入しようと思える世帯年収は(自宅、円)
↑ 所有・購入しようと思える世帯年収は(自宅、円)

自宅は単価が高いだけでなく値幅も大きいため、想定している対象によって金額が大きく異なることから、上昇の度合いもゆるやか。自動車が累積回答率で7割超に達したのは年収600万円だったが、自宅では900万円に至っても7割には届かない。同じ600万円では5割にすらならない。

単独回答区分で一番高い回答率を示しているのは「1000万円以上」で、直前の区分の「900万円」から大きく跳ねている。この動きを見るに、住宅取得が相当好条件下における選択である、「自宅所有は高嶺の花」と考えている人が多いようだ。

例えば自家用車所有ならば仕事柄、居住地域の状況から不可欠な人もいる。個々の環境によって所有動機は大きく変動するため、年収はあくまでも要素の一つでしかない。

一方で金銭上の問題が大きな影響を与えることも事実。消費の活性化を若年層に望むなら、それを後押しすべく、その世代の年収の底上げと安定化を推し量ってほしいものである。

■関連記事:

外より家、遠出より近所……変わる若年層のライフスタイル

「買いたい」想いは変わらない・大学生はなぜクルマ離れをしているの?

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

不破雷蔵の最近の記事