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「ちゃお」がトップの27.0万部…少女向けコミック誌の部数動向をさぐる(2020年1~3月)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ コミック誌は男子向けだけでなく女子向けのものも人気だが。(写真:アフロ)

部数は「ちゃお」ダントツ状態

日々進んでいく技術、中でもインターネットとスマートフォンをはじめとしたコミュニケーションツールの普及に伴い、紙媒体は立ち位置の変化を余儀なくされている。すき間時間を埋めるために使われていた雑誌は大きな影響を受けた媒体の一つで、市場・業界は大変動のさなかにある。その変化は少年・男性向けコミック誌ばかりでなく、少女・女性向けのコミック誌にもおよんでいる。今回はその雑誌のうち、少女向けコミック誌(少女向けのコンセプトで発刊されているコミック雑誌。おおよそ未成年でも高校生ぐらいまでが対象)について、日本雑誌協会が四半期ベースで発表している印刷証明付き部数(※)から、実情を確認する。

まずは少女向けコミック誌の現状。最新データは2020年1~3月分。

↑ 印刷証明付き部数(少女向けコミック誌、万部)(2019年10~12月期と2020年1~3月期)
↑ 印刷証明付き部数(少女向けコミック誌、万部)(2019年10~12月期と2020年1~3月期)

少女向けコミック誌ではトップは「ちゃお」。第2位の「りぼん」に2倍ほどの差をつけており、少年向けコミック誌の「週刊少年ジャンプ」的な群を抜く部数の多さ。この圧倒的差異をつけた状況は、現在データが取得可能な2008年4~6月期の値以降継続している。以前話題に上ったATM型貯金箱をはじめ、魅力的な付録の数々も、同誌をトップの座に位置し続けさせている大きな要因となっているようだ。

第2位は「りぼん」、第3位は「花とゆめ」。そしてその後に「LaLa」「別冊マーガレット」「なかよし」「Sho-Comi」が続いている。部数動向としては「ちゃお」が大きく落ち込んでいるのが見て取れる。

プラスはゼロ誌…四半期変移

次に前期と直近期との部数比較を行う。雑誌は季節で販売動向に影響を受けやすいため、精密さにはやや欠けるが、大まかに雑誌推移を知ることはできる。

↑ 印刷証明付き部数変化率(少女向けコミック誌、前期比)(2020年1~3月期)
↑ 印刷証明付き部数変化率(少女向けコミック誌、前期比)(2020年1~3月期)

プラス誌は無し。全誌がマイナスで、誤差領域(上下幅5.0%以内)でのマイナスが5誌、それを超えた下げ幅は8誌。前期比で1割以上の下げも2誌確認できる。

「マーガレット」は少女向けコミック誌の中では前期比で最大の下げ幅を示している。

↑ 印刷証明付き部数(マーガレット、部)
↑ 印刷証明付き部数(マーガレット、部)

「マーガレット」は毎月5日・20日の月二回刊誌で、1963年創刊の由緒ある少女向けコミック誌。「ベルサイユのばら」「エースをねらえ!」など数々の名作を世に送り出し、かつての少女漫画ブームを創生した雑誌。だが部数動向を確認できる期間の限りでは、ほぼ一様に部数を下げ続けている。

今期はグラフの形状からも分かる通り、ややイレギュラーな下げ方を見せており、気になるところではある。購読者の感想を確認する限りでは、過激な描写が多くなってきたとの指摘が少なからず見受けられるが、部数が落ちたからがためのテコ入れなのか、その対応による結果としての部数減少なのかは不明である。

全誌がマイナス…前年同期比

続いて前年同期比による動向。年ベースの変移となることから大雑把な状況把握となるが、季節による影響を考慮しなくて済むので、より確かな精査が可能となる。

↑ 印刷証明付き部数変化率(少女向けコミック誌、前年同期比)(2020年1~3月期)
↑ 印刷証明付き部数変化率(少女向けコミック誌、前年同期比)(2020年1~3月期)

プラスは皆無。プラスマイナスゼロも無く、全誌マイナス、しかも誤差領域内に留まった下げ幅は1誌のみで、それ以外はすべて誤差領域を超えた下げ幅。1割を超えた下げ幅を示しているのは11誌。2割以上の下げ幅は6誌で「別冊マーガレット」に至っては3割台の下げ幅。1年間で部数が1/3以上減った計算になる。「別冊マーガレット」は2016年に入ってからは部数を大きく減らす傾向の中にあり、よい状況とは言い難い。

↑ 印刷証明付き部数(別冊マーガレット、部)
↑ 印刷証明付き部数(別冊マーガレット、部)

掲載作品に何か大きな動きがあったわけではなく、本質的な不調にあると解釈できる。起死回生の策が必要な時期に来ていることには違いない。

かつて複数の雑誌で見受けられた「おそ松さん」特需だが、今期では残り香すら覚えること無く、各雑誌の部数動向は通常運転に戻っている。「進撃の巨人」や「おそ松さん」のような盛り上がりを複数タイトルで意図的に起こせるようになれば、それこそ全盛期の「週刊少年ジャンプ」のような活性化も不可能では無い。

他方、多くの雑誌で電子化が行われており、電子版に読者の一部を奪われ、結果として紙媒体としての印刷部数が減少している可能性は否定できない。特に今期では多くの雑誌が大きな部数の減少を示しており、電子版に読者がシフトしたとの推測以外の原因が見つからない。あるいは単に、需要に合わせた部数の削減なのか。

しかしながら他の雑誌同様、電子版の部数は非公開のため、その推測の検証ができないのは残念ではある。

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※印刷証明付き部数

該当四半期に発刊された雑誌の、1号あたりの平均印刷部数。「この部数だけ確かに刷りました」といった印刷証明付きのものであり、雑誌社側の公称部数や公表販売部数ではない。売れ残り、返本されたものも含む。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項の無い限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

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(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロで無いプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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