アメリカでインフルエンザが急増 新型コロナを超える勢い 「トリプルデミック」に警戒
アメリカでインフルエンザが急速に流行し始めています。全州で増加傾向にあり、新型コロナの新規入院患者数を上回る勢いとなっています。日本でも起こりうる事態であるため、注意が必要です。
アメリカで急増するインフルエンザ
アメリカにおける今シーズンのインフルエンザは、少なくとも、感染者数870万人、入院患者数7万8,000人、死亡者数4,500人と推定されています(1)。
新規入院患者数も増えており、直近1週間で約2万人が入院しています(図1)。新型コロナの新規入院患者数より多い地域もあります。
検査の陽性率は25.1%にのぼり、かなりの感染者が水面下に存在しています。検出されたインフルエンザのうちほぼすべてがA型です。
ほぼすべての州でインフルエンザが増加していることから、大流行が到来するのではないかと警戒されています。
ワクチン接種率が低下
新型コロナを警戒するあまり、インフルエンザのワクチン接種率が低下していることが指摘されています。アメリカでは、今シーズンは昨年と比べてインフルエンザワクチンの接種率が1割ほど減少しているとのことです。
日本では同時流行にそなえてインフルエンザワクチンの接種を検討している人が多いと思いますが、特に妊婦、子ども、高齢者がいる家庭では身を守るためにワクチンの接種を検討ください。
新型コロナ合併は?
アメリカにおいて、詳細なデータが得られたインフルエンザ関連入院患者555人のうち、4.32%が新型コロナを合併していたとされています(1)。
インフルエンザウイルスと新型コロナウイルスが重複感染した場合、新型コロナウイルス単独と比べると、人工呼吸器を必要とするリスクが2.09~4.14倍上昇することが分かっています(2,3)。院内で死亡するリスクが2.35倍上昇するという報告もあります(2)。また、1万8,000人の新型コロナを追跡したエジプトの研究では、重複感染があった患者のうち7.7%が死亡したと報告されています(4)。
A型インフルエンザウイルスと新型コロナウイルスが重複感染すると、より重度の体重減少や肺炎の悪化がみられることが報告されています(5-7)。これは、A型インフルエンザウイルスが、新型コロナウイルスの侵入門戸となるACE2受容体の発現を助長するからではないかと考えられています(8)(図3)。そのため、どちらの中和抗体も増加させるワクチンを接種することが重要になります。
「トリプルデミック」に注意
アメリカでは10月からRSウイルスの重複流行が懸念されていました。新型コロナウイルス、インフルエンザウイルス、RSウイルスの3つの流行、すなわち「トリプルデミック」です。
RSウイルスによる最近の入院率は、平時の約7~10倍となっており、小児科病床が満床に近づいている地域もありました。
直近のデータではややピークアウトがみられていますが、あらゆる呼吸器系ウイルスの感染を疑わないといけないため、現場は大変でしょう(図4)(9)。
もちろん、新型コロナにも注意が必要です。アメリカではBA.5が少なくなり、BQ.1とBQ.1.1が優勢株となっています。
まとめ
日本国内ではまだインフルエンザの流行はみられていませんが、京都府や大阪府では定点あたり報告数が増えてきています(10)。
この定点あたり報告数は、1つの医療機関が1週間に診察したインフルエンザ患者数を表しますが、1以上ならその地域は流行域に入ったことになります。京都府と大阪府はいずれも増加傾向で、現在約0.5となっています。
また、日本でも「トリプルデミック」が起こる可能性があるため、注意が必要です。
(参考)
(1) Weekly U.S. Influenza Surveillance Report(URL:https://www.cdc.gov/flu/weekly/index.htm)
(2) Dao TL, et al. J Clin Virol Plus. 2021; 1: 100036.
(3) Cong B, et al. J Glob Health. 2022; 12: 05040.
(4) Fahim M, et al. Can J Infect Dis Med Microbiol. 2022; 2022: 7497500.
(5) Bai L, et al. Cell Res. 2021; 31: 395-403.
(6) Zhang AJ, et al. Clin Infect Dis. 2021; 72(12): e978-e992.
(7) Kinoshita T, et al. Sci Rep. 2021; 11(1): 21259.
(8) Su S, et al. Cell Res. 2021; 31(5): 491-492.
(9) RSV-NET Interactive Dashboard. (URL:https://www.cdc.gov/rsv/research/rsv-net/dashboard.html)
(10) インフルエンザに関する報道発表資料 2022/2023シーズン(URL:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou01/houdou_00010.html)