米国の写真家、ホロコースト生存者の写真をインスタ&NYの大型ビジョンで掲載:進む記憶のデジタル化
第二次大戦時にナチスドイツが600万人以上のユダヤ人を大量に虐殺したホロコーストだが、そのホロコーストを生き延びることができた生存者たちも高齢化が進んでいき、その数も年々減少している。彼らの多くが現在でも博物館などで若い学生らにホロコースト時代の思い出や経験を語っているが、だんだん体力も記憶も衰えてきている。
現在、世界中の多くのホロコースト博物館、大学、ユダヤ機関がホロコースト生存者らの証言をデジタル化して後世に伝えようとしている。ホロコーストの当時の記憶と経験を自ら証言できる生存者らがいなくなると、「ホロコーストはなかった」という"ホロコースト否定論"と反ユダヤ主義が世界中に蔓延することによって「ホロコーストはなかった」という虚構がいつの間にか事実になってしまいかねない。いわゆる歴史修正主義だ。そのようなことをホロコースト博物館やユダヤ機関は懸念して、ホロコースト生存者が元気なうちに1つでも多くの経験や記憶を語ってもらい動画や3Dなどでデジタル化して記録して保存している。そのようなホロコースト生存者の記憶のデジタル化を通して、後世の人たちにホロコーストを伝えて、反ユダヤ主義と対抗している。いわゆるホロコーストの「記憶のデジタル化」を行っている。そして欧米ではホロコーストの歴史を伝えるためにホロコースト教育が多くの学校で行われている。
そんななか米国ニューヨークで写真家のギリアン・ラウブ氏がアメリカのニューヨーク周辺に住んでいるホロコースト生存者200人の写真を撮影してインスタグラムで発信している。ホロコースト生存者のコメントとともにホロコーストの記憶を伝えながら、アメリカや世界中に蔓延っている反ユダヤ主義に対抗している。ラウブ氏の取り組みもホロコーストの記憶のデジタル化の1つである。インスタグラムのアカウントは「Live2tell」で、ホロコーストの記憶と経験を後世に伝えていくために生きているというメッセージが込められている。
またニューヨークマンハッタンとブルックリンを結ぶブルックリン橋やニューヨークの大型ビジョンにもラウブ氏が撮影したホロコーストらの写真が掲載されていた。その様子はアメリカのメディアでもいくつか報じていた。
ラウブ氏が自身のニューヨークのスタジオで撮影しているのはホロコースト生存者の現在の写真で、当然ながらみんな高齢者ばかりだ。ホロコースト当時の収容所やゲットーなどの悲惨な写真や映像などは一切出てこない。現在のホロコースト生存者の元気な姿とともに、テキストでホロコースト時代の記憶や体験がつづられている。
ラウブ氏は「アメリカでは20%の若者がホロコーストは作り話だと信じています。私は写真を通じてホロコースト生存者の現在の姿と彼らの記憶、経験を後世に伝えていきたいです」と語っていた。
▼ニューヨークの写真家ラウブ氏が行っているホロコースト生存者の写真によるホロコーストの記憶のデジタル化を伝えるアメリカのメディア