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ウクライナ軍、小型ドローンでロシア軍戦車に爆弾投下・ロシア兵慌てて戦車で逃走

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

棄甲曳兵のロシア兵

2022年2月にロシア軍がウクライナに侵攻。ロシア軍によるウクライナへの攻撃やウクライナ軍によるロシア軍侵攻阻止のために、攻撃用の軍事ドローンが多く活用されている。また民生用ドローンも監視・偵察のために両軍によって多く使用されている。

ウクライナ軍ではここ数か月間くらい、小型の民生品ドローンやウクライナ軍が開発した攻撃ドローン「R18」などから爆弾を投下して地上のロシア軍の戦車などを攻撃して破壊している。ドローンで撮影した動画もよく公開している。

2022年11月にはウクライナ軍が最前線にいるロシア軍の兵士や部隊にR18や民生品ドローンで爆弾を投下したり、標的にミサイル攻撃を行っていたりする動画を英国メディアのザ・サンが報じている。

前半ではミサイルによる戦車への攻撃で大爆破している様子が伝わっている。また後半では上空から小型ドローンでロシア軍の戦車にめがけて爆弾を投下している。戦車には命中したが、爆弾量が小さいのか戦車を完全に爆破することはできなかった。そして戦車の上は周囲にいた無防備なロシア兵は爆弾が投下された戦車で慌てて逃走していく様子を上空からドローンで撮影されていた。まさに棄甲曳兵(きこうえいへい)である。

ウクライナ軍ではこのようなロシア兵に爆弾を投下している動画を多く撮影してSNSで拡散している。特にロシア人が多く使用しているテレグラムには大量にこのようなロシア兵に爆弾が投下される動画は多く掲載されており、ウクライナ軍によるロシア兵への攻撃をアピールをしている。

▼【刺激的な映像のため閲覧注意】ウクライナ軍によるロシア軍の戦車とロシア兵へのドローンによる爆弾投下(英国メディア、ザ・サン)【閲覧注意】

ゼレンスキー大統領「ロシア軍の戦車の大半は破壊されている」

ウクライナ軍がドローンから爆弾を投下するのは小型の民生品ドローンか「R18」であろう。今回のウクライナ軍によるロシア軍戦車への投下で完全に破壊をできなかったことから小型爆弾か手りゅう弾である。大型のドローンではないので、搭載できる爆弾や手榴弾の量には限りがあるが、上空から投下するので兵士に命中したら殺傷力はある。また戦車でもエンジン部分に落下したら爆破したり、操作不能になる。

ウクライナ軍は上空からのドローン投下によってロシア軍の戦車を多く破壊している。2022年2月24日から11月23日までにウクライナ軍ではロシア軍の戦車2897台、装甲戦闘車両5832台、輸送車4396台を破壊しているが多くが上空からのドローンによる攻撃である。

米国防総省のカール政策担当次官は2022年11月に「ロシア軍が保有していた主力戦車の半数を失った」と語っていた。そのことアメリカのメディアCNNがゼレンスキー大統領との会見で伝えると、ゼレンスキー大統領は「概ね現実的なところだ」と語っていた。またゼレンスキー大統領はロシア兵が多く殺傷されていることについて「ウクライナ兵は"使い捨て"のような使われ方はしていない」と語っていた。

▼【刺激的な映像のため閲覧注意】ドローンで上空からロシア軍の戦車に爆弾を投下して破壊するウクライナ軍

ウクライナ紛争ではドローンによる上空からの攻撃をウクライナ軍、ロシア軍ともに頻繁に行っている。そしてドローンの多くは迎撃されて破壊されてしまうか、機能停止させられてしまっている。ドローンが上空を飛んでいたらバリバリと大きな音がしてドローンの存在に気付くのでアンチドローンの迎撃システムがあれば機能を停止させたり、撃墜することもできる。

上空のドローンを迎撃するのは、電波を妨害(ジャミング)してドローンの機能を停止させるいわゆる"ソフトキル(soft kill)"と、対空機関砲のように上空のドローンを爆破させる、いわゆる"ハードキル(hard kill)"がある。それぞれに迎撃システムがある。

プロの軍人であれば上空のドローンを察知したらすぐに破壊したり機能停止したりしないと、敵陣をめがけてミサイルを大量に撃ち込んできたり、このように爆弾を投下されることを知っている。そのため敵軍のドローンを検知したら徹底的に迎撃して自らの防衛を行う。だが最近のロシア兵はそのような教訓が伝達されていないのか、ドローン迎撃のしっかりした訓練を受けていないのか、迎撃システムが不足しているのか、上空のドローンに対して無防備であり、ドローンでの爆弾投下の標的になりやすく殺傷されている。

だが、ロシア軍兵士はそのような迎撃システムも持っていなかったようで、爆弾が投下されるまで気が付かない無防備な兵士がほとんどである。小銃(ライフル)でドローンを狙い撃ちする様子も見られない。ゼレンスキー大統領は2022年10月末に「ロシア軍の動員兵は、戦闘態勢への準備が不足していて全く戦力になっていない」とコメントしていた。戦車を操縦できるのでプロの軍人がいたかもしれない。だがそれ以外はしっかりした軍事訓練を受けていないし、ちゃんとした装備もないまま最前線に送られた動員兵なのだろう。

戦場では空から飛んでくるものはほとんど全てが危険である。上空のドローンへの対策と準備は戦場では欠かせない。ロシア軍もウクライナ軍もプロの軍人であれば、上空の監視ドローンでも地対空ミサイルで徹底的に迎撃している。

▼ウクライナ軍によるロシア軍の破壊状況を伝える公式SNS

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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